鬼神1

 その臭いの元へと向かって、本堂は走っていた。

 そして同時に、その臭いに関しての記憶が、本堂の予感を悪い方へと誘導もしていた。


 サイボーグとなった本堂の体の五感というものは、意識を集中する事により常人のソレには到底及ばない能力を発揮する。

 本堂自身にとってみても、その五感から得られる情報を取捨選択を無意識下に於いて行っているのだが、いまはあえてその五感の一つを研ぎ澄ましていた。



 "焦げ"た臭い。



 単純にいうならば、そう表現するしかないのだろう。だが、その"焦げた臭い"の中に、血液が蒸発する際に発する些細な特徴的な臭いという物を、本堂の臭覚が嗅ぎ付けてしまっていた。


 もちろん、その臭いだけでは、人ではない可能性がありえる。

 だが、最悪の場合を想定する。本堂自身は色々な可能性を考えていたのだが、先ほどの襲撃された二人という存在、そして、その二人が向かおうとしていた大まかな方向、それと複数いた怪人たち、



「まさか、戦闘員ではなく、怪人を量産している施設があるとでもいうのか?」



 本堂の脳裏には、先ほどの戦闘において、戦闘員とよべる斥侯や支援などを行う人材がいなかった事、そして同等ともいえる背格好の怪人が複数いた事を思い出し、そう推測を立てていた。


 戦闘員ならばまだしも、怪人となればその脅威度は違う。

 怪人の戦闘能力は、その存在自体が兵器ともいえる代物である。

 モノによっては、超能力を増幅した念動力なる物を操ってみせる怪人も存在していた。

 そういった怪人に対して、一般市民が抗う術は無いに等しい。


 そんな怪人が複数存在する事になれば・・・そんな最悪な未来の想像を本堂の脳裏に浮かべていた。

 そして、その原因の元となる場を見下ろせる場所に到達したとき、



「なっ・・・!」


 本堂が想定した、その最悪な未来というものが、現実味を帯びていた事を表していた。


 見下ろした場所では、火災を伴いながら動かない人と思われるモノが地面に倒れており、その上を無数ともいえる緑の肌の怪人たちと、肌の色こそ違うが大人ぐらいの大きさの怪人、そしてその倍の体格をもつ怪人が、今まさに集落ともいえる山村を襲撃していたのであった。



 ザ・リークがこれほどまでに大胆な行動に出てきた事は今までなかったことである。が、その怪人の数を見れば推測がつく。

 これは、今迄の様な小規模な相手ではなく、例えるなら・・・軍隊

 本堂は、それぞれの怪人たちの数が、まるで一つの軍隊として機能しているという印象を受けていた事も、その推測の一因にもなっていた。


 そして、現状の状況を目のあたりにしたことで、本堂は、ザ・リークの計画の一つ、怪人たちを一つの兵団として運用するという計画があったのを思い出し、そう推測を立てたのである。



 現地の状況を確認するため、五感の一つである、視覚を意図的に強化する。



 前線に集まっている緑の肌の怪人の戦闘力は、先の戦いによって従来の戦闘員よりも高いが、防御能力においては戦闘員と同等か、またはそれ以下ではなかろうかという印象を受けていたが、いま見えている視界においては、その中にパイロキネシスを使う怪人によって被害を周囲へ広げてもいた。



 対する山村ともいえる集落の方といえば、木枠を利用した壁ともいえる物が構築されており、その外においても戦闘を行っている者たちも、何かしらの火器ではない得物を使って抗っている風にも見受けられた。


 が、その戦力差は絶望的であり、またその火災被害も相まって、このままでは山村ともいえる集落に被害が及ぶのは目に見えていた。



「ザ・リークめ・・・いつの間に、これ程の規模の物を・・・!」



 本堂はそう呟きながら「変身イグニッション!」と叫び、その見下ろしていた高台の上から大きく跳躍する。



 跳躍する先は、戦場といえる場、敵陣ともいえる場所。

 そこに、紅い色の流星が降りたつ。


 その流星が降り立った場所には、先ほどまでパイロキネシスを使用して火炎による被害を出していた怪人の遺体が数体、まるでつぶされたかの様な恰好で物言わぬモノと化していた。

 その中において、本堂は怒りともいえる感情の昂りがおきたまま叫ぶ



「出し惜しみはしない!全力でいく!最大出力マキシマムドライヴ!」



 そう叫びながら素早く空手の型ともいえる構を行うトライヴ

 その構えの状態のまま、トライヴの表面に形成されていた色合いが、紅色から琥珀色へと、それに伴い、重装的な甲冑姿ともいえる内容は、より軽量化するかの様に変貌する。



「ザ・リークの野望!ここで食い止めて見せる!」



 今迄、多対一という恰好を経験したわけではない本堂だが、相手の数が数であるため、起きてしまっている被害を、これ以上ひろげる訳にいかないと判断し、最大出力マキシマムドライヴを躊躇することなく発動させた。



 トライヴとの戦いの先端を切ったのは、緑の肌の怪人であった。


 その怪人は、得物を大きく振りかぶりながらこちらへと襲い掛かってきたが、その振り下ろされた得物を左手で無理やり反らしたのち、構えていた右手をたたきつける様に放つ。


 その一撃により、緑の肌の怪人はその身を吹き飛ばされた。

 否、吹き飛ばされたというより、粉砕されたという表現の方が正しいのかもしれない。


 ただ、その行動が、トライヴと怪人たちの戦闘を開始する合図となった。



 全快とまで回復していないトライヴにとって、この第二形態ともいえる変身は、本堂自身といえる本体への負荷が厳しいものとなる。だが、得られる膨大な力ともいえる代物は、緑の肌の怪人をいともたやすく葬りさるには十分なエネルギーを生み出していることが実証される形となった。


 その状況を確認した本堂は、とにかく数を減らすことが先である、そして自身への注目を集めるのが先であろうと考えた。



 その数に物を言わせて襲い掛かってくる緑の肌の怪人たちを、圧倒的な暴力ともいえる力により、一撃で粉砕していく。


 パイロキネシスを使って火炎を作り出す怪人の火炎すら、その身を焦がすことができず、逆にトライヴによる一撃で粉砕されていった。


 肌の色が違う大柄な怪人たちも、この戦場においてどこが一番の脅威なのかを理解したのか、次々とトライヴへとその矛先を向ける。だが、その矛先がトライヴに当たることはなく、逆にその胴体には洞窟に空いた風穴ともいえる大きな穴が開け放たれ、その身を大地へと沈めていった。



 そう、それは一方的な殺戮の始まりであり、まさに虐殺という蹂躙が行われている光景が繰り広げられていた。




 その戦場を、第三者が見たらこう言うだろう。





"鬼神"が現れた。と。







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○説明しよう!

 トライヴの変身形態には段階が存在する

 一般的な生命活動は20%前後となり、

 通常の戦闘モードは安全装置による安全率を考慮され80%前後となる。

 だが、この安全装置を強制的に止める事により、100%に近い出力を得られるのである。

 そして、さらにソレを超えた形態も・・・

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