第六十七話 奥多摩村の戦い⑤ 雪ん子

 雪女、つーか雪ん子か。確か雪ん子ってのは、吹雪や氷結などのスキルを得意とする氷雪系の上位妖怪である雪女になる前の個体だったはずだ。


 まぁ火を主体としている俺を相手にするには、属性的にも相性がいいんだろうが、残念ながら雪女をこの場に呼び出した術者のレベルも呪力も低すぎる。


 そのせいで本来なら、俺に対してもそれなりに有効な雪女による冷気の吹き付けも、俺に有効なダメージを与えられないし、そもそもこの場に呼び出した雪女自体の体の成長が十歳ほどで止まってることから見ても、術者の力不足は否めない。


 そもそも契約式神は、本来どんなに力が強くても、契約し自分を使役している術者の力量を上回る力を発揮することができない。


 逆に言えば、術者の力量が一定以上あった場合。


 例え実力的には大したことがない妖怪や悪鬼を式神として使っていても、呼び出した術者の力である呪力補正が加わって、雑魚式神と言えど侮れない存在となる。


 今回の場合明らかに雪女を使役している術者の力不足で、雪女が本来の力を全く発揮できないでいる。


 術者の力量不足の理由の裏付けとしては、呼び出した雪女の成長が十歳前後で止まっていることと。


 雪女の吹き出した冷気の吹き付けが、本来なら吹雪。もしくは術者の実力次第では、猛吹雪になるはずなのに、単なる冷気の吹き付けになってしまっているからだ。


 これでは、如何に雪女が俺に対して本来有効な存在であったとしても、無意味だ。


 その証拠に、拘束されている俺に対して雪女がいくら冷気の吹き付けを行っても、俺の常時発動スキル『炎の壁』を超えて俺に冷気が届く気配が微塵もないからだ。


 つまるところ六花の持っている式神雪女は、本来高位の妖怪なのだが、術者として未熟な六花のせいで、雪女は雪ん子となり、下手したら下位の妖怪にも劣る実力となってしまっていたのだった。

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