第六十六話 奥多摩村の戦い④ 式神
「今です六花様! 我ら一同がこの悪鬼の動きを封じている間に!」
「うんっまっかせてよ!」
とはみんなには言ったものの。さっきの悪鬼との戦闘で、あたしの呪力も底が見えている。
けどっあそこまでみんなに啖呵を切ったんだ! あたしがやらずに誰がやる! 清にいっあたしに力を貸して!
六花は心の中で清にいと呼ぶ人物に祈りをささげると、今の自分が繰り出せる最強最大の攻撃を悪鬼である俺に仕掛けるために、一枚の特別な梵字の描かれた召喚符と呼ばれる別空間や異空間から契約した妖怪や悪鬼を呼び出せる符を、右手の人差し指と中指の間に挟みこみ、眉間近くに寄せると、ありったけの呪力を込めて呪を口ずさんだ。
「凍えるほどの寒さ、凍てつくほどの冷気から生まれし、雪の乙女よ。我との契約に従い。我の敵を凍てつかせよ! 出でよ、我が式。式神『雪女』(ゆきめ)!」
呪を唱え終えた六花は、手にしていた符を空中へと放り投げる。
放り投げられた符は、空中で五芒星を描き出すと共に、別空間又は異空間からまず冬の凍える雪山を噴き下ろすような冷風と共に、粉雪を出現させた。
六花の召喚符の作りだした五芒星から現れた粉雪は、徐々にその量を増やし始めると共に、人の造形を形作り始める。
そして、三十秒ほどの時間をかけて真っ白な着物を着た若い雪色の肌を持った可愛らしい十歳ほどの雪ん子を生み出した。
自分の召喚符の作りだした五芒星から、雪で形作られた雪ん子が現れたのを確認した六花は、雪ん子に対して、命令を下す。
「雪女(ゆきめ)っお願いっあいつを倒して!」
この場に現れて、六花の命令を聞いた雪女は、未だに六人の陰陽師たちの不可視の鎖によって拘束されている俺に向き直ると、口元に手を当てて、ふぅ~っ冷気を吹き付けてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます