第二十九話 獄炎鬼② 階層の支配者
俺の睨み付けた先にいる全長十メートル、どう見積もっても体重一トン近くある巨大な岩山のような鬼の髪の毛は、まるで針山のように鋭く逆立ち、一切の不浄を焼き尽くすとされる怒り狂った不動明王のように燃え盛っていて、鬼の口元からは、獰猛な喰人鬼を思わせる幾本もの野太い牙が見え隠れし、鬼が呼吸をするたびに、俺の目には鬼の口元から炎が漏れているのが見て取れた。
さらに鬼の面(おもて、顔のこと)は、怒り狂った人と牛を強引に混ぜ合わせたような強面(こわもて)で、鬼の筋肉達磨のような体つきや真っ赤な赤道色の肌の色と相まって、この場においての圧倒的な鬼の存在感を際立たせていた。
だが、問題なのは燃え盛っている鬼の髪の毛や筋肉達磨のような体つきではなかった。
本当に問題なのは、鬼の真っ赤な赤銅色の肌と同じ色の灼熱の炎が、鬼の全身を包みこんでいたことだった。
俺の炎を焼き尽くし、俺を殺せる灼熱の炎を纏った巨大な赤鬼。それが今まさに俺の睨み付けた視線の先にいたのだった。
俺がジッと鬼を凝視していると、鬼の鑑定に成功しました。という声が頭の中に響いてくる。
どうやら自分でもわからないうちに鬼の鑑定をしていたようだった。
とりあえず、鬼の情報はあって困るものでもないので、鬼の鑑定結果にほんの少しだけ意識を向ける。
名前 なし
種族 獄炎鬼(ごくえんき)
レベル 1
状態 怒り (精神的肉体的な興奮状態に陥り、知能が著しく低下する代わりに、すべての能力値に30パーセントの補正がかかる)
HP1150/1150
MP150/150
攻撃力85→110
防御力45→58
素早さ2→2
呪力35→45
炎耐性35→45
スキル
炎熱拳 レベル1 灼熱の炎を纏った拳で、他者の炎を殴りつけられる。
超威圧 睨みや咆哮によって、敵の行動をかなりの確率で阻害できる。
獄炎放射 レベル1 他者の炎を焼くことのできる高密度の炎
獄炎火球 レベル1 他者の炎を焼くことのできる高密度の炎
常時発動スキル
無機物破壊 無機物を有機物のように、物理的に触れて攻撃できる。
階層支配者スキル
階層の加護 支配階層にいる限り、階層の恩恵を受ける。
↓↓↓↓↓
常時発動階層支配者スキル
HP自動回復レベル1 1分に1%づつ回復し続ける。
MP自動回復レベル1 1分に1%づつ回復し続ける。
スキル威力増加微
?????
称号
同族食い。
階層の支配者
備考
体がでかいために動きも遅く知能も低いが、一度狙ったら、その相手以外視界に入らず、狙った相手を地獄の果てまでも追っていく性質を持っている。
狙われると非常に厄介な相手。
補足説明
絶対なる強者である餓鬼の最終進化形である餓鬼王が、逃れられぬ死の危機に瀕し、稀に、本当にごく稀に、数千、数百の餓鬼王の中からほんの一握りの才能と才覚を持ち合わせたもののみが、それを乗り越えようと特殊進化を果たした個体。
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