カジノで手に入る武器はその世界の勇者の武器より高性能なことが多い。 06

 つか、この聖剣の忘れ形見ってどれくらい強いんだろうな?

《さあ、魔物とか現れないし、使えないしな》

(というか、キャロの風格に恐れをなして逃げ出してるしな、スライムとか)

 レベル上げの作業が面倒くさそうだな。

《でも、快速だぜ》

(サラマンダーよりずっとはやーい)

 まあ、でも、体育会系のお陰でレベルとかあんまり考えなくていいもんな。

《ステータスペーパー持ってないからレベルわからんしな》

(レベルの概念が染み付いた世界はダメだ)

 そうさ、オイラ達は特攻と特防お化けだからな。

《今更のポ●モンネタかよ》

(いいだろ、ポ●モンネタはわかりやすいし)

 万人受けするだろ。

《でも、今までの物語的には万人受けしないだろ》

(ミャー以外のツッコミ要員が欲しいな)

 つか、ミャーはツッコミ要員に見えて、突っ込まないからな。

《ただ、睨みつけるだけ》

(我々の業界ではご褒美です)


「さて、ワールドマップを見る限りノーランド山脈はどのくらいだろうか?」


《この距離だと、一ヶ月もあれば大丈夫だろ》

(そんなもんなの?)

 流石は理系、計算が早いな。

《だが、一ヶ月も休まないで走るわけにもいかんし、若干の誤差は出るだろうな》

(旅はそんなもんだろ)

 障害は付き物ってな。

《俺が独自で計算したルートだが、大小様々な村や町を経由してノーランド山脈へ到着するルートだ。これだとのんびりと宿で休憩を挟みながら二ヶ月で到着するだろう》

(まあ、私達の目的は異世界の観光で熾烈な大冒険じゃないもんな)

 じゃあ、理系の案に賛成でいいな。


「どのくらいで着きそう?」

「二ヶ月、結構遠いし、色々な村や街を経由するからそれくらいかかる」

「そう、なんだ......」

「心配するな、絶対に連れて行ってやるから」

「ありがとう、兄者......」


 なんか、邪悪な感情が抱けない笑顔だ。

《それでもいい、俺達は女の子の笑顔を見るためにこの世界にやってきたんだからな》

(設定が無理矢理だが、まあ、女の子の笑顔はとてもいい)


「じゃあ、ノーランド山脈へ向けて――なんだありゃ?」


 一匹のドラゴンが賊を殺しては喰らっている。

《あれは見なかったことにしよう。そうさ、見なかったことにするべきだ》

(そうさな、冒険はじまりと同時にドラゴンとの遭遇とか設定崩壊だよな)

 でも、賊の檻の中に大量の幼女達が詰め込まれてるぜ?

《(なに!? 本当だ!!)》


「助ける必要があるようだな......」

「兄者? 勝てる......」

「大丈夫、カジノで手に入る武器はその世界の勇者の武器より高性能なことが多い。勝率100%だ」

「なんか、凄い説得力......」


 にしても、デカイな、ドラゴンって。

《逆鱗を壊せば一撃だろ》

(まあ、カジノ装備だから大丈夫だろう)

『《(本当、物凄い説得力だな、カジノ装備......)》』


「おい、羽の生えた爬虫類、賊を殺すのはいいが、幼女を殺すのはいただけないなぁ~」


 うわ、いきなり噛み付いてきましたよ。

《さらりと避ける体育会系が凄いな》

(私達のヒーロー体育会系だもんな)


「まあ、話し合おうぜ? 話せばわかりあえる」


 噛みつき、尻尾で振り払う、飛んで掴みかかる、火の玉を吐く。

《これ、絶対に説得出来ないパターンじゃね?》

(まあ、爬虫類に説得なんて優しい言葉が通用するわけ無いだろ)


「跪け! 我が聖剣の忘れ形見の破壊力に!!」


 ドラゴンの足を攻撃した。

 筋を切ったらしく、ドラゴンは倒れた。

 腹を刺した。

 ドラゴンは絶命した。

《おい、流石にこのスペックは可笑しいだろ》

(能力カンストしててもこの破壊力は無いわー)

『《(無いわー)》』


「兄者......これは流石に......」

「......聞いてくれるな妹よ」

「うん......」


 流石に賊を蹂躙していたドラゴンを二回の攻撃で絶命させた兄貴を見たらこういう反応だよな。

《頼りになるというよりは、身の危険を感じるレベルだな》

(こんな男と旅したくないよ)


「た、助けてください!」

「もちろんさ!」


 ようじょ、ようじょ、ようじょ~ようじょを助けると~

《やめろ、これが創作物だったら痛い主人公だと思われるから》

(第四の壁を越えてはならない。早くPCの電源を落とすんだ)

 いいだろ別に、これはオイラの物語なわけだし。

 南京錠を聖剣の忘れ形見で切り裂く。

《金属すら切り裂くとかすげぇな聖剣の忘れ形見》

(軽く斬鉄剣状態だな)


「君達、どこから攫われてきたの? 送り届けるけど」

「えっと、クルスト王国です......」

「ちょっとまって、ワールドマップを確認っと」


 思いっきり最初の街だな。

《厳密には最初の国だったんだな》

(どうする? 戻るか)

 でも、ミャーの故郷に一日でも早く到着したいんだが......。

《でも、流石にこの数を見捨てる訳にもいかんだろ》

(そうだ。大は小を兼ねる。ミャーへ対する罪悪感も、大多数を助けた正義感で掻き消すことが出来るさ)

 うわ、物凄く悪いこと言ってるぜ文系......。


「ミャー、少し到着が遅れるけどいいか?」

「大丈夫、この子達の気持ちわかるから......」

「そうか、おまえもこの立場だったもんな......すまない」


 了承は手に入れたから引き返すか。

《じゃあ、檻の馬車は俺達が操作して》

(キャロはミャーに頼むか)


「疲れたらすぐに言ってくれ、止めて休むから」

「わ、わかりました」


 なんか、この絵は犯罪者のようだ。

《だが、やっていることは正義の味方》

(頭の中は性犯罪者)

『《やめろ!》』

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