逃亡者、妹を買う。 03
やっぱり異世界でも制服って高額で取引されてるんだよな、材質が最高級で馬力が違うらしい。
《そりゃあ、この世界は麻と絹くらいしかないだろうから、ポリエステルは珍しいだろ》
(石油の力は甚大ですね~)
まあ、服装を変えたらある程度は目くらましになるし、残った金でカジノで一発を期待するか!
《いいぜ、理系脳を駆使したらポーカーの次のダブルupで何百枚でもメダルを稼いでやるよ》
(やっぱり賭け事には理系が必要だよなぁ~)
流石はみんなの先生理系くん、じゃあ、早速カジノで荒稼ぎしましょうか!
2
なんだろうか、カジノって凄いな、これ、やばいんじゃないの?
《コブラみたいに勝ち過ぎたんだよって流れになって、記憶取り戻して、サイコガンを使えるようになるみたい、な?》
(その展開は無いだろ、私達は記憶あるし、サイコガン標準装備されてないし)
まあ、野球選手程度の肉体は持ってるけどな!
「コブラと比べてはいけないな......」
にしても、このカジノの景品の聖剣の忘れ形見とかいう短剣は凄いな、ステンレス製の百均ナイフより切れるぜ。
《折れた聖剣を叩き直して作った短剣で、この世界に八本限定だってさ》
(末広がりで縁起がいいな)
でも、こいつの力はどないなもんなのかね?
《カジノで手に入る装備はその世界で最も強い武器だ。多分、人知を超えた何かを持ち合わせているんだろう》
(RPGの基本だよな、まあ、最初の街のカジノだからわからんが)
じゃあ、逃亡資金も手に入れたわけだし、逃げる準備をしますかね。
《てか、鞄の中が札束だらけで重たいな......奴隷でも買うか?》
(美少女奴隷とか今時のライトノベルかよ......もう少し硬い小説を読めよ)
まあ、男の一人旅より幼女との二人旅がいいだろ。
《じゃあ、奴隷商人を探そうか》
いや、その前に売春婦を探そうぜ、一発抜いてすっきりしようぜ。
(金を持つと本当に余裕が出るよな~)
『《(金の力は偉大だね~)》』
じゃあ、全員一致で奴隷はロリロリな美少女で決まりだよな?
《禁断の果実の味を確かめに行くか》
(見せてもらおうか! 禁断の果実の味とやらを!!)
YESロリータ、NOタッチ、OK?
《(サーイエッサー)》
本当に、これが小説だったら確実にブラックジョークが多過ぎて教育委員会のおばはん連中に叩かれるから。
(それなら奴隷も道徳的にどうよ?)
《つまり、アメリカ人が悪い。いいな?》
まあ、最大の奴隷文化を持っていた国だからな。
(今更、自由の国とかほざくのは見当違いもバカバカしい)
《言うな、米軍が動くぞ》
この程度の誹謗中傷で米軍が動くかよ、笑って睨まれるだけだ。
「にしても、サーカスみたいな建物だな」
何か、奴隷を売っているというよりは獣達のショーを見れそうな場所だよな。
《だが、この中に禁断の果実がいるのだろう。さあ、重い鞄の中身を軽くして救済の道を歩みましょうか》
(まあ、どう使うかは......ぐへへ)
おまえ達は本当にゲスいな、まあ、俺もちょっちその考えがあるけど。
「いらっしゃいませ! 今宵はどのような奴隷をお望みですか?」
「そんな奴隷で大丈夫か?」
「へっ?」
「一番良いのを頼む」
一度でいいから言ってみたかったんだよな~
《まあ、言いたいよな、このセリフ》
(まあ、金は潤沢なわけだし値切らず購入しましょうか)
いや、ケチッたら鞄が重いからふっかけられたいくらいだ。
「あ、あの? 一番良いのとは?」
「この店で一番高くて可愛くて、育てがいのあるポ●モンショックを起こせそうな奴隷を所望する」
《(ポ●ゴンかよ!?)》
なんか、奴隷商人の表情が引きつってるけど金払えばいいだけだよな?
(まあ、金さえ有ればお客様は神様だろ、無理難題も超えて見せろってやつだ)
《でも、奴隷商がポ●ゴン持ってるかなね?》
十才のガキが入れるパチンコ屋の換金所で交換出来るんだから奴隷商も持ってるだろ。ポ●モンマスターじゃなければ奴隷商なんてやってないだろ。
《(一理あるな。そら、ポ●モンマスターじゃなければ奴隷商なんてやってないだろうな)》
でも、ポ●ゴンよりジ●ザグマの方が好きなんだよな、秘伝要因として。
《御三家に岩砕きを覚えさせていた時代もあったな~》
(今、それをしたら確実に廃人に刺殺されるだろ)
「え、えっと......この奴隷なんてどうでしょうか?」
猫耳を生やした生気のない表情をした少女がそこにいた。
《オイ、この生気のない瞳は性欲を半減させるぞ》
(もうこれ、犯罪の香りしかしないよ)
いや、奴隷という存在がオイラ達の世界では犯罪なわけだし。
《でも、これ買わないとロリ好きの変態に買われてアンアン言わされるだろ? 買うっきゃないだろ!!》
じゃあ、この子をお買い上げでいいの? もう少し物色しない?
《いや、奴隷商に案内される時に殆ど見ただろ、殆どリザードマンとか、マーマンとか、そっち系の戦闘特化型の奴らばっかだろ》
(可愛くない奴は買う価値ないよね)
確かに。可愛いは正義、むさ苦しいは悪。ハッキリとわかるんだね。
「いくらだ。俺の鞄の中の札束で足りるか? 足りんなら俺の穴の穴――」
「余裕で足ります」
「じゃあ、あと札束二束でおまえの尻の穴を――」
「掘らせません!」
札束五束を奪われた。
おい、こんな上質な幼女が五百万とか安くね? カローラ二台とか安くね? 人命を軽視しすぎてるだろ......。
《カローラはもう少し安いだろ》
(じゃあ、新車のカローラ二台と中古のAE86が一台だ)
AE86あの秋名の走り屋のせいで新車の軽自動車が買える価格だもんな、ボッタクリだろ、標準価格三十万くらいだぜ?
「さて、君は俺の妹だ。俺の着せ替え人形になってもらうぜ!!」
「......そう」
えらくドライだな、ドライは朝日さんのスーパーなドライで十分だ。
《十六歳の未成年が酒の話するなよ》
(まあ、私達ネタが無いと死ぬ程度の能力を手に入れてしまったからな、許してやれよ)
「じゃあ、そのボロ雑巾みたいな服装をゴージャスに......その前に風呂に入ろうか」
「お風呂は嫌い......」
「まあ、見た目は猫だもんな、うん、猫だもん」
猫だもんな、
《猫だもんな、》
(猫だもんな)
でも、薄汚いとこの美少女具合が三割減するから強制的に風呂に入れるぞ!
「奴隷商、風呂を貸せ、さもないとケツを――」
「すぐに用意します」
「おまえ、見た目より真面目だな。ホモ臭いのに」
「そ、そうですか......」
あれ、なんかショック受けてるぜ?
《ホモ電光石火は命中率100%の先制攻撃確定だからな》
(先生の爪は必要ないな)
ネタが豊富だよなオイラ達。
「さて、君の名前を教えてくれ」
ポケモン的な、
《なら、名前はハルカだろ》
(私は断然、ヒカリだ!)
おい、セレナが好きなオイラに謝れ。
「ミャー」
「よし、今日からおまえは綿瀬ミャーだ。俺の妹、可愛い妹、着せ替え人形を兼ねた妹だ。さあ、オシャレ魔女になろうぜ!」
「オシャレ魔女?」
「ああ、ラブ&ベリー&ミャーの時代が来るぜ」
あれが流行ったのってオイラが小学生の頃だよな。
《甲虫王者の時代だな》
(幼女達が狂喜乱舞してたな)
あの時代は幼女じゃなくてオイラ達と同世代の女の子たちだ。
《でも、ア●カツおじさんは廃れんな》
(やめろ、本当にやめろ、夜八時に近所のゲーセンで見てトラウマになったんだからな)
あれは酷かった。裕福そうなおっさんが必死こいて画面に齧りついてたもんな。
「不思議な人......何で奴隷を妹なんて言うの?」
「さあ、でも、妹って言葉が色々と響きがいいんだよ」
読者は絶対に妹属性好きだろ?
《ツン妹サイコー!!》
(クー妹サイコー!!)
幼い妹サイコー!!
つまり、妹は――
『《(サイコー!!)》』
「お、お風呂準備出来ました」
「さあ、兄貴からの最初のお願いだ。風呂に入ってこい」
「......わかった」
案外素直だな、驚いた。
《猫は小生意気な存在だと思ってたんだけどさ、違うのな》
(すべての個体が百万回生きた猫みたいに飼い主大嫌いなわけないだろ)
「素直な子は大好きだ。好きな飲み物を言ってくれ、奴隷商人に買いに行かせるから」
「え、私がですか?」
何、こいつ、私は関係ありませんよって顔しやがって。
《掘ろうぜ、口もケツも》
(そして顔を大量のケフィアだらけに)
「お客様は神様だろ? こいつは俺の妹、妹=お客様、つまり、サービス提供しろやボケ!!」
「牛乳」
「わ、わかりました!!」
うわ、流石にお客様でも年下のガキのパシリになるとか頭がイカれているとしか思わねぇな。大人のプライドないの?
《無いだろ、ポ●モンマスターだから》
(それ、レートがなんだとか言ってる奴らだろ、サトシくんじゃないだろ)
あいつら、糞めんどくさい卵を孵す作業を毎日してるんだろ、気が狂うだろ。
《本物は気狂いだ。ライトはショタかロリだ》
「じゃあ、一人でお風呂入れるか?」
「うん、大丈夫。嫌いだけど」
糞、金で買える妹の未熟な肉体を視線で舐め回してやろうと思ったのに......。
《最低だな、俺》
(最低だな、私)
でも、心は、
『《(一つ、一緒に風呂入りたいよなぁ~)》』
だが、ここは兄者として我慢を見せつけてやろう。
(いや、それ痩せ我慢)
《痩せ我慢なんだよなぁ......》
「牛乳買ってきました......」
「流石は商売人、物を買う時は一ダースってわかってんだね」
「は、はい......」
「じゃあ、冷蔵庫でキンキンに冷やそ......ねぇか、異世界に冷蔵庫」
ミャーが鼻を伸ばしてキンキンに冷えてやがる!? とか言うのを期待してたんだけど......。
《は、班長!?》
(あ、ありがてぇ......!)
キンキンに、キンキンに冷えてやがる!?
「なあ、氷とかある?」
「魔法である程度は作れますが......」
「うし、なら作れ、そして、塩を用意しろ」
《氷に塩をふりかけると温度が更に下がる。小学生でもわかるよな》
ああ、流石にこの程度の知識は小学生でもわかる。
(文系の私でもわかる)
つまり、常識だから覚えておけよ。
《でも、忘れがちな一般常識って多いよな》
(ミドリガメの正式名称をミシシッピアカミミガメだってことを忘れるくらいだからな)
まあ、日本ではミドリガメで定着してるからいいんでねぇの?
《あれ、地味に食えるんだよな》
(いや、あれを食べる程の飢餓状態じゃないからいいだろ)
うん、あれは本当の飢餓状態じゃなければ食えないな。
「氷の精霊の元に命ずる空間に存在する水よ、凝固せよ!」
「うぁ~小太りなおっさんが中二臭いセリフ吐いてるよ、きっしょ......」
「無詠唱で魔法を使えるほど慣れていませんので......」
氷塊が出てきたと思ったら地面に落ちた瞬間にバラバラに雹程度の大きさに砕けた。
「どういうことだ? 何でこんなにバラバラに......」
「そりゃあ、魔法で作られた氷ですし、着弾部を着けてませんからそれ以外の氷はこうなりますよ」
《ああ、わかった》
おお、流石は理系、理解が早いな!
(じゃあ、説明を頼む)
《空気中に存在する湿気を吸収してそれを氷にする。だが、それを一個に固めるのはとても難しい。だが、核のような存在を大量に縫い合わせて、豆粒程度の氷を生成して、それを繋ぎ合わせる。すると見てくれは氷塊になるが、少しの衝撃や核に不純物が入った瞬間に結合が崩れてバラバラと崩れ落ちる。だと思う》
よくこの少ない情報量で理解できたな、語学系のオイラにはわからんかった。
(文系の私も原理がわからんかった)
《まあ、氷が出来てるしいいんでねぇの?》
氷に塩をふりかけて牛乳をその上に置く。
「何で塩を?」
「科学だよ」
「はぁ、科学ですか......」
さて、いい感じに冷えてきたし、妹も風呂からあがる頃合いだろ。
《てか、服を買いに行かないとな》
(まだ鞄の中身が重いからもう少し高い衣服を買うか?)
購入して三時間でこの服ともお別れか、そうだな、スーツでも着るか。
《なんか、英国紳士みたいな格好になりそうだな》
(イエローモンキーが英国紳士になれるわけないだろ)
オイラ以外の全日本人に喧嘩売ったぞ文系。
「上がった......」
「札束を五束も消費したかいがあったぜ」
「牛乳」
「キンキンに冷やしておいたぜ」
にしても、この罪人の服みたいなのは絶対に奴隷商の趣味だよな、もう少しいい服きさせろよ、変態に見えるぞ?
《まあ、見た目はどう考えても変態野郎だから目を瞑ってやろうぜ》
(でもさぁ、良い買い物したよな)
どうしたんだ文系? なんか、開き直って......。
(だって、私達一人っ子じゃん)
《いや、妹と兄貴がいるだろ、今現在、妹がもう一人追加されたが》
うん、うちの妹は美人で評判だからな。まあ、レズだが。
(兄貴も美男子として評判だよな。まあ、車と単車狂いだが)
《俺は普通にイチメン......ちゃう、イケメンなお兄さんだ》
「どうしたの兄者? 悲しい表情になって......」
「兄者? ああ、いや、家族のことを思い出しただけだ」
「死んだの?」
「《(いや、生きてる。今すぐにでも、殺したい)》」
糞野郎が! 劣性遺伝子を全部俺に押し付けやがって!!
《大丈夫だ、今は俺と文系がいるから頭脳では確実に勝ってる!》
(そうさ、人間の価値は容姿だけじゃない! 頭脳と行動、そして筋肉だ!)
『《(完璧な存在なんだ! オイラ(俺)(私)は!!)》』
「まあ、殺せないけど」
「殺せないんだ」
「牛乳一本くれ、喉乾いた」
「いいよ、兄者」
なんか、こそばゆいな。
《でも、兄者はそそるな》
(理系はガッツリスケベだよな)
なら、誰がムッツリなんだ?
『《(誰だろうな......)》』
「うん、普通に牛乳だ。この世界にも牛いるわけ?」
「はい、普通にいますよ。てか、牛くらいいますよ。貴方はどこの田舎から来たんですか......」
「少なからず、ホルスタインが大量に乳を放出してくれている世界から来たよ」
さて、ミャーに風呂入らせたし、後は金を出来る限り消費して街を出よう。
そして、異世界を観光して帰る方法を探しますか!
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