1-4.スクランブル

アナウンスを聞いて、大和を連れて隣の班室へ。


「班長、出動の準備できてま……す?」


「……?、誰だよそいつ」


陽鞠と綾乃が大和に気づく。


「説明は後で、たんぽぽっ」


名前を呼ぶと奥の部屋から出てくる、白衣の少女。


吠崎たんぽぽ。うちの班のメカニックだ。手には二つのアタッシュケース。


「華澄と綾乃の分は終わってる。そっちの草薙某に関しては知らない」


アタッシュケースの中身を確認。中には二丁のハンドガン。装填されているのは麻酔弾だ。


「分かった、大和は今日が初日だからしょうがない。もしもの時はトレーラーの予備を使おう。よし、総員出動するよ!」


トレーラーに私、陽鞠、大和、綾乃と乗り込む。


「遠藤さん、お願いします!」

遠藤さんとはトレーラーの運転手だ。


直接執行部には各班ごとにトレーラーが配備されている。羽月班のトレーラーはFD号だ。


サイレンを鳴らしてトレーラーが車庫を出発。


「町工場で従業員の一人が立て籠っているようです。

止めに入った他の従業員が二人負傷していますが命に別状はないとか。

現在警官隊が包囲していますが、人質も居て突入に踏み切れないとのこと」


陽鞠が手に持った端末から情報を読み上げる。


「犯人が魂魄能力を使っているのか?」


「工場で使っている金属加工用の加熱能力みたいです。負傷した二人も局部に重度の火傷を負っています。登録されているコードはI-0062、検索してみます」


検索結果は直ぐに出た。皆で画面を覗き込む。


「遠隔加熱か、少し厄介かも」


「アーマー、使うか?」


少し考えて、


「いや、精神エネルギーを空間座標を指定して送り込むタイプだから、アーマーじゃ防げない。

正面から行くなら出来るだけ身軽にして足を止めないようにする方がいいと思う」


「そうだな、じゃあサブマシかボウガンか、投げナイフもあるし……」


「あのー」


唐突に隣から声が。


「そろそろ俺を紹介してほしいっす……疎外感が、激しいっす」


「あっごめん」


完全に忘れてた。


「こちら今日から羽月班に配属の草薙大和くん、新人だそうで優しくしてあげた方が良いのかな?」


「七峠陽鞠、オペレーターやってます!陽鞠ってよんでくださいね。優しく教えてあげますから何でも聞いてくださいねっ」


「笠宮綾乃、私も綾乃で良いぞ。戦闘要員だ。聞けば何でも教えてやるがたぶん厳しいぞ?」


随分と真逆な自己紹介だな。


「ひまり先輩とあやの先輩っすね、よろしくっす」


「先輩、いい響き……」


「それとさっき班室に居た吠崎たんぽぽ、メカニックだな。それと班長の私。以上が羽月班のメンバーだ」


大和が首をかしげる。


「遠藤さんって人は?」


「トレーラーの運転手は日によって変わるから。うちだと遠藤さんか南が多いかな?また紹介するよ」


言い終わると同時に体に重みが。

トレーラーが止まったようだ。

サイレンが鳴り止んで扉が開く。


トレーラーから降りると目に入ったのは古ぼけた町工場とそれを囲む警官達だった。

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