1-2.始末書

「なっとくいかないわっ!」


声を荒げ通路を行く華澄に声がかかる。


「騒がしくして、どうしたんだ」


橋谷竜兵(きりたに りゅうへい)だ。部署こそちがうが彼も同僚だ。で元上司。


「別に、ちょっとした理不尽に腹が立っただけ」


「学生に発砲して始末書書いてることなら理不尽じゃないと思うけどな」


「はぁ?理不尽以外の何だっていうのかしらね。しかも知ってて聞いてくるとか、意地が悪い」


そのまま壁にもたれ掛かる。話を続ける竜兵

「お前ら直接執行部に武器の携行が許可されてるのは、魂魄能力に対抗するには武力が必要な非常時もあるからだ。覗き魔程度に使うべきじゃない」


「か弱い女子が襲われかけたのは十分に非常時だと思うんだけど?」


「か弱いってまさかお前か?空手黒帯剣道段持ち、テコンドーにジークンドーやってる奴がか弱いなら、この世からか弱い人間は居なくなるぞ」


「ジークンドーはやったことない。それに力じゃ勝てないから技に頼ってるの。武器があれば使うに決まってる」


「……確かに。そりゃ持ってりゃ使うわ、はははっ」


ひとしきり笑うと静かになる。


「笑うところじゃないと思うけど?」


「何かツボに入るんだよ。それだけ鬱憤溜まってるならどうだ?飲みに行かないか?他に何人か誘ってるんだが」


「お酒は嫌いじゃないけど、店で飲むのがね。一々年齢確認させられて面倒くさい」


「お前良くて中学生にしか見えないしな。ランドセル背負ったら小学生でも通るぞ」


すると頭に手を乗せ撫でてくる。昔からよくやってくる。それを手で払う。


「触んな、セクハラで訴えるぞ」


「おお怖い。昔は撫でられてくれたのになぁ」


「前は上司だったから断り辛かっただけ。ついでにお誘いも断るわ、始末書あるし」


「そうか、残念だな」


全然残念そうじゃないが。


「あ、それと長官見てないか?呼ばれたから長官室行ったのに居なかったんだけど」


「長官?だったらさっき武装管理室に居たぞ。確か……」


そう言って竜兵は自分の頭の上に手を掲げて


「このくらいの背の観たことないやつと一緒にだったな。随分若かったが」


竜兵でも180はあったはずだしかなり高い。


「そっか、ありがと。それじゃあね」


「おう。始末書がんばれよ」


「うっさい」

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