第67話 白々しい
海は今、ヴァンパイアの王レオパルドと共に神アテナが死んだ証拠を探しに、聖剣エクスカリバーを引き抜いた洞窟に来ていた。
「なんだ、これは・・・」
レオパルドは、驚愕する。人が下半身をだけが出た状態で埋まっていたのだ。それは、丁度海が引っこ抜いた聖剣エクスカリバーがさっさていたところに。
「それは、触らない方がいいと思うよ」
海は、その正体を知っていたが平然とレオパルドに忠告する。
「な、なんでだ?」
「それには、ウイルスがついている可能性があるからだ!!」
海は適当なことを言った。
「う、ウイルス?」
「そうだ、こんな辺境の洞窟に埋まっている人間なんて怪しいじゃないか?」
「そうか、だがメアによると…この辺でアテナがいなくなったと聞いたんだが?」
「証拠なら他を探せばいいじゃないか」
「そうか?」
レオパルドは、不審に思いながらもその場を後にすることにした。
海たちが洞窟の奥に入っていくと、見るも無残に荒らされた洞窟内。レオパルドは、それを見て唖然とする。
「こ、これは…」
見ると、壁には翼の生えた人がめり込んでおり、周りの岩はところどころ人為的に、壊されている。
「ここにも証拠らしきものは、なさそうだね?」
海が白目をむきながら言った。
「いや、どちらかというと先ほどから証拠だらけなんだが?というよりお前の様子おかしくないか?」
「おかしくないよ?いつも通りだびょおおおん!!」
海は、白目のままレオパルドに向き直る。
「あぁ、お前のことはよく知らんがいつも通りっぽいな」
レオパルドは、海との勝負に敗れ海に少し信頼を寄せていたので、納得した表情を見せた。だが海は、内心焦っていた。どうやら神アテナというのは、海が埋めたイケメンの事らしいことを先ほど気づいたのだ。
イケメンは、聖剣エクスカリバーの位置に埋まっていたが、なんとか海は誤魔化すことが出来た。
海がそうこう考えているうちに、レオパルドがめり込んでいる羽の生えた男に近づく。
「うん…息はしていないな...」
実は、先ほどまで息をしていた羽の生えた男だったが、海が証拠隠滅のため、レーバテインを使い息の根を止めたのだ。
「ここには、何にもないみたいだね?さっさと帰ろうよ?」
「いや、しかし...まだ何も証拠が…」
レオパルドがそう言うと、突如洞窟の入り口付近が、激しい音を立てて爆発する。
「なんだ?」
海は、何事かと思い見てみると翼をはやした、イケメンアテナだった。
「貴様!!鈴木海!!よくも私を埋めてくれたな!!」
「あぁ・・・生きてたの」
海は、めんどくさいと思いながら、つぶやく
「死にそうだったが、お前の気配を感じてふっかうがああああああああ!!」
海は、うるさいアテナに近づき顔面を超スピードで、ぶん殴る。
「き、貴様また暴力をふるうつもりか、この神であるアうがやああああああああああああ」
「言わせないよ」
海は、再度アテナを殴りつける。レオパルドがさすがに不審に思ったのか、海に質問する。
「あの、もしかしてあの禿が、神アテナなのか?」
「違う!!」
「そ、そう、神の髪が、落ち武者みたいなわけないものね」
「そうだ」
海は、しっかりとうなづきながらいう。どうやら、先ほどの海の拳で、アテナは動かなくなったらしい。海は、ほっとした後レオパルドにこの洞窟を出ることを推奨する。
「ここから出よう」
「えっ、あぁ」
海たちが、洞窟から出ようと思った矢先入口の方から人影が見えた。海は、また証拠がのこのこと現れたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。そいつらは、禍々しい角と体の表面が鱗でおおわれた、奴らだった。
レオパルドは、奴らを見て目を見開く。
「お前らどうしてこんなところにいる?」
レオパルドの怒気のこもったような、威圧的な声がそいつらを射抜く。海は、現われた人物のことを全く知らなかったが、レオパルドはよく知っていた。
現われたのは、レオパルドに喧嘩を吹っかけてきた、竜人族のダン、ベレッタ、イーグルだった。
レオパルドの質問に対して、ダンが下卑た笑みを浮かべながら答える。
「どうしてかって?そりゃあ、お前さん...お前を殺すために決まってるだろ?」
「はぁ?」
レオパルドは、困惑の声を出す。レオパルドにとって全くわけの分からない状況だった。今まで、竜人族と吸血鬼族は、牽制こそすれども直接的な攻撃は行わなかった。そんなものは、お互いの領主は望んでいなかったし興味すらなかったからだ。
「お前たちの領主フランは、何を考えているんだ?」
「フラン?そんな奴知らないな?今の領主は、グラン・ドラコスだ。そのグラン様が、お前を殺せとの命令でな」
「では、フランはどうしたのだ?」
レオパルドは、質問する。
「そんなの簡単だ!殺したにきまってるだろう?」
ダンが、何が楽しいのか楽しそうな表情でレオパルドに言った。海が、レオパルドを見ると、青ざめた表情をしているのが分かった。そしてダンが話を続ける。
「今頃、お前たちの領土は火の海だろうよ?」
「貴様ら!!初めから分かってて私を領土から離れさせたな!?」
「そうだとも、グラン様は仮初の平和なんてものは望んでいない、強いもが強者が勝ち上がる世界を望んでいるのだ。そのためのだ一歩として、貴様らヴァンパイアを葬り去ってくれるわ!!」
海は、話を鼻くそをほじりながら聞いていたが、どうやら自分はめんどくさいことに巻き込まれたらしいと理解する。海はこういう時どうすればいいか知っていた。
「先手必勝!!アザードサイクロン!!」
海の手のひらから、酸の混じった竜巻が飛ばされる。酸の竜巻は、洞窟の入り口を覆いつくす大きさで、躱す余地は全くない。
「えっ、うぎゃああああああああ!!」
竜人族のダン、ベレッタ、イーグルたちは海の不意打ちを喰らい、跡形もなく溶けていった。ベレッタとイーグルに関しては、発言すらしていなかった。
「お前...容赦ないな...」
レオパルドが海を見て少し引いていたが、知ったことではない。
「強いものが勝ち、弱いものが死ぬ。そう言ったのは、あいつらじゃないか?」
「そうだな・・・」
レオパルドは、海を見て思ったその理論はあほくさい理論だと。
「これからどうする?」
海は、レオパルドに質問する。
「そんなの決まってるだろ?ヴァンパイアの領土に戻る、お前も手伝ってくれるか?」
「めんどくさいな~何か僕に見返りがないと嫌だな~」
「ぐぬぬ...ではこの私が何でも願いを叶えてやろう」
「えっ?今何でもって言ったよね?」
「あっ、あぁ...」
海は、あんなことやこんなことを考えた。だがレオパルドは、とんだ悪魔と契約してしまったとは、知らずに焦った様子でヴァンパイアの領土に向かうのであった。
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