第66話 竜人族のたくらみ

海とレオパルドが、カレビ帝国王城客間で、話し合っていた時刻と同時刻、竜人族の里では、秘かなたくらみが繰り広げられていた。


竜人族の族長である、グラン・ドラコスは、ある一室の部屋で、仰々しい黒い椅子に座り、下卑た笑みを浮かべて、目の前でひれ伏していた配下である、イーグル、ダン、ベレッタに問いかける。


「レオパルドを動かすことに成功したか?」

「はい、グラン様、計画通りであります」


グランの下卑た笑みが、さらにおぞましいものに変化する。配下であるイーグルでさえ、そのことに恐怖を覚えながらも、次のグランの命令をただ膝をつきながら、待つだけだ。


「よい、次の段階に移行する」

「はっ!!」


グランがそう言うと、イーグルたちは安心した表情で、闇へと消えていく。

グランは、配下が消えたあと愉悦を感じながら、またその下卑た笑みを表したのだった。



・・・・・・・・・・・・・・



海はヴァンパイアの王レオパルドと共に、カレビ帝国王城の広間に来て、カレビ帝国王、マァ―カス・アイリーンと対談していた。


「鈴木海?何故そちら側にいる?」


王が、不思議に思ったのか、レオパルドのそばにいる海に質問する


「レオパルドの奴隷になった」

「な、なんだと!!お前に、この厄介なヴァンパイアを追い払ってもらおうと思っていたのに、何で奴隷になってるんだ!?」

「いや、流れで…ていうか、僕レオパルド、追い払う気ないし」


海は、悪びれもなくそう言った。


「だそうだ、人間の王、では血を用意する件は、頼んだぞ?見たところこの鈴木という人間が、お前の切り札だったらしいしな?」

「ぐぬぬ…」


王は、苦虫をかみつぶすような表情で海を睨みつける。


「王?そんなに血を用意するの難しいの?」


海は、疑問に思ったので聞いてみる。


「そうだ、大体どうやって血を集めるんだ?そんなこと、やったことないからわからん…本来なら奴隷商の人間を使って、血ぐらい分けてもいいが...何処かの誰かさんが、全部買いとって、奴隷商ごと潰したからな!!」

「誰だそんな悪いことした奴は!!」

「お前だ!!」


王の逆鱗に触れた海は、口笛を吹いて誤魔化すことにするが、残念ながら口笛を吹くことが出来ない。


「で?人間の王よ?血は用意できるのか?」


レオパルドはどこか王をからかう様に質問する。流石にそんな態度を取られた、王も黙っていない、ヤケクソ気味に言うことにした。


「いや…今すぐは無理だ、その代わりその鈴木海を存分に使うがよい!!」

「このバカ面にそれほどの価値があるのか?」


海は、なんだか、とっても悪いことを言われているような気がしたが、レオパルドが可愛いので気にしないことにした。


「あるとも、戦闘力だけなら、たぶん人間族最強だと思うぞ?」

「本当か?鈴木?」

「いや、知らん」

「少しは、話を合わせんか!!」


王が、ブチ切れしている中、海は鼻くそほじって、王に投げつける。


「汚い!!やめんか!!」

「嫌だ!!」


レオパルドは海に冷たい視線を送る。


「本当に、こいつが最強…ちょっと確かめたくなったな、人間の王、戦うスペースはないか?この鈴木を試してみたくなった」


レオパルドは、少し高揚しながら舌なめずりをしながら言う。


「あぁ、構わん、闘技場を使うがいい...」


海は、なんだか勝手に話を進められていることに釈然としなかったが、レオパルドが可愛いので良しとすることにした。



・・・



海は、今王城の闘技場に来ていた。どうしてこうなったかは、海自身にも分からないが、レオパルドと戦うことになるらしい。


「鈴木?手加減はいらんぞ!このヴァンパイアをお前の力でねじ伏せて、追い返すんじゃ!!」


この試合の審判である王が、海に八つ当たり気味に叫ぶ。


「ほう、人間の王…私をねじ伏せる?別にお前の血から、力づくでいただいてもいいんだぞ?」

「ひっ!!」


レオパルドが睨み付けると、王は血相を書いて尻もちをつく。海にとって、そんなことどうでもいいので、段々と早くお家に帰りたくなってきた。さっさと試合をすることにする。


「で、試合のルールは?」


海は、なんだかわからんが、レオパルドに聞いてみる。


「私が、いいというまでだ」


レオパルドは心底楽しそうに言うが、海は、ちょっとめんどくさいと思いながらも、了承することにした。


「了解だ、じゃあ始めさせてもらう」


海は、地面を蹴りレオパルドとの距離を詰める。しかし、海の拳の間合いに入った瞬間に、レオパルドが姿を消した。


「何!?がはっ!!」


突如海の腹部に痛みが走り、見てみると腹部に大きな穴が開いていた。


「あががあああああああ!!」


海は、急いで超回復水を飲むが、傷が回復しないうちに、首元に痛みが走り、吹き飛ばされる。


「うああああああああああ!!」


海は、ゴムボールの様に吹き飛ばされたが、何とか受け身を取り、体勢を立て直すために、魔力コントロールで相手の動きを予測しようとする。だが、何処にもレオパルドの姿が見えない。

海は、相手が早く動いているだけだと予想したが、どうやら、そうではなく姿そのものが消えているらしい。海は、そう考えていると、腕が突如吹き飛ぶ…


「うぎゃああああああああ!!」


海の腕に焼けるような痛みが走り、立っていられない。海は、まだ生えている手でレーヴァテインを抜刀し、アイテムボックスから超回復水を胃に流し込む。

海は、まずは相手に攻撃されない様に、一度高速で動く。動きながら海は、目を強化し、レオパルドを目視することを想像した。


「ちっ!!」


どうやら、失敗したようだ。海は、作戦を変更して、レオパルドをあぶりだすため、一度飛行して、上空に出る。


「サイクロン!!」


有りっ丈のの魔力を注ぎ込んで、魔法を下の闘技場に向けて放つ。しかし


「どうした?鈴木?そんなものなのか?」


姿を現したレオパルドが、海の魔法をものともせず、片手で吹き飛ばしたのだ。


「強い...」


珍しく弱気になる海だが、此処で諦める鈴木海ではない。海は、自分の魔法が通用しなかったので、レ―ヴァテインでの創造の魔法に頼ることにした。


「あまり、やりたくなかったが...」

「やらせるか!!」


レオパルドはまた姿を消す。だが、もうすでに海は、魔法を想像し終わっていた。


「バルブレイク!!」


海がそう言うと、海の周り20センチを覗いて、半径1キロの酸素がなくなったのだ。


「あ゛ぁ゛…」


突然酸素がなくなり、レオパルドが姿を現し、悶える様に倒れる。海は、ヴァンパイアにこの攻撃が通用するか不安だったが、無事成功したようだ。見ると、審判の王も苦しそうにしているが、海にとってそんなことはどうでもいい。

海は、レオパルドが気絶したのを見て、魔法を解除する。


「ふぅ…危なかった…」


と言い海は、地面に降りたつのであった…








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