第68話 ヴァンパイアVS竜人族

<メア視点>

レオパルドが、人間の国カレビ帝国に出張に行った次の日。レオパルドのメイドである。メアは、レオパルド邸の裏庭、メアが丁寧に管理している芝生が覆い茂っている場所で、物干し竿に洗濯物を干しながらのんきに鼻歌を歌っていた。


「フン♪フン♪フン♪」


メアの歌声は、お世辞にもうまいとは言えず、かなり音痴であったが当の本人はそんなことはまったく気にしていない。

メアの心情には、私は私、他人は他人という心情があるからだ。他人がどう自分のやることを評価しようと、メアにとってはどうでもいいことで、領主のレオパルドの下で毎日楽しく過ごせればそれでいいことなのだ。


メアは、最後の洗濯物、レオパルドの黒のレースのパンツを干し終えると、屋敷の中に戻って行く。


メアは屋敷の中に戻ると、屋敷の中にある簡素な丸い木の机が中心に置かれたメイド室で、ティータイムしてサボることにした。レオパルドがいない今少しぐらい仕事をサボってもバレやしない。メアはそう思いながら、いつもレオパルドが飲んでいる高級茶葉をキッチンから拝借して、白を基調とした赤い花柄のティーポットに茶葉を入れて、お湯を入れメイド室に入る。

そして、丸机の隣の丸椅子に座ると、丁度茶葉がいい感じに出し切ってきたであろう頃合いを見て,白色のカップに紅茶を注ぐ。ちょぽちょぽという、水音を立てながら紅茶が美しい褐色の液体が線を描きながら、カップに収まる。


「デリーシャス」


メアは、素敵な香りのする紅茶を早速飲もうと、カップに手を伸ばす。すると...


「うあ...!!」


屋敷の外から、ドおおんという爆発音が聞こえる...メアは自分がサボっていたのがばれて、レオパルドが怒っているのかと思い焦ったが考えを改めた。レオパルドは、メアにくそ甘いのでレオパルドのお気に入りの紅茶を勝手にしかも業務中に楽しく飲んでいたごときでは、怒らないはずだ。それにレオパルドは、カレビ帝国に言ったので当分は帰ってこない。ではなぜ?メアは急いで屋敷の外を見てみることにした。


屋敷の外に出たメアは、村の中心に煙が上がっているのを見た。あそこは、領民がたくさん住んでいる住宅街だったはず。メアはレオパルドから留守を預かっている身として放ってはおけなかった。

メアは、背中から黒いコウモリの様な翼をはやして現場に向かうことにした。


現場につき、舗装されてない茶色の地面に降りたつ。

最初に現場について、メアが目にしたものは街の見るも悲惨な姿だった。もともと木でできた村だったが、誰かが意図的にはなったであろう炎で見る見る家が燃えているではないか。辺り一帯は、火の海といった感じだが幸いなことに、人死にが出ている様子はない。それもそのはず、ヴァンパイアが火を喰らったごときで死ぬわけがない。ヴァンパイアには再生能力があるのだ。

様子から見るに、少し痛手は負っただろうが争いを好まないヴァンパイアたちは、異変に気付いてさっさと逃げてしまったのだろう。

メアが、正面の火の海に目を向けると奥に人影が見えた。一瞬仲間が逃げ遅れているのかと思ったが、そうではないらしい。現われたのは、角と鱗が特徴的な竜人族だった。十人以上のメアにとって全く興味がない竜人族、しかし相手はメアに興味津々のようで、メアを見つけた途端に、嬉しそうな下卑た表情を浮かべる。


「おっ!まだ腰抜けヴァンパイアが残っているじゃないか、しかも結構な上玉...頂くしかないな...」


先頭に立っていた赤い鱗の竜人族が、テンプレ噛ませ犬的なセリフを言った。メアは、そのことに寒気を覚えたので領民と同じくさっさとこの場を切り抜けて、レオパルドに報告に行こうと思ったが、後ろからも足音が聞こえる。

どうやら、メアはいつの間にか取り囲まれていしまったらしい。さすがに20人近くに、取り囲まれてしまったので状況的にはまずい風に見えたが...


「バイバイ~」


そう言うとメアは、竜人族たちに手を振りながらするりと影に潜る。ヴァンパイア固有の必殺技、影潜り。影に潜っている間は、何者の攻撃も受け付けない。


「ちっ!!また逃げやがった!!」


と、赤い鱗の竜人族が言っているが、メアはそんな甘っちょろい奴ではない。しっかりと、報復するつもりだ。

メアは、一番後ろの竜人族の陰に移動してぬるりと姿を現す。


「おい!!お前後ろ!!」


正面にいた竜人族が気づいたがもう遅い。メアは腰に差してあったアイスピックのような武器を逆手に持ち、竜人族の首に突き刺す。メアはそのまま自然な動作でアイスピックを引っこ抜き、影に戻る。それは、もう手慣れたもので全くもの音が聞こえない洗礼された動作だった。頚動脈を掻っ切られ、脳髄までブッ刺された竜人族の一人がぱたりと倒れて周囲に混乱が走る。


「お前ら気を付けガっ!!」


先ほどまで、メアにテンプレ三流噛ませ犬の様なセリフを吐いていた赤い竜人族もまたぱたりと地面に倒れる。

一度目は、脅しのため姿を現して殺して見せたメアだがレオパルドから教えて貰ったスキル透明化と影潜りの合わせ技を使い。次々と竜人族を葬っていく。



「ガっ・・・」


最後の一人を倒したメアは無表情のまま栗色の髪をかき上げて、武器を布で拭きそのまま美しい軌道を描いて腰にしまう。


「早く、レオパルド様に報告しなければ...」


メアは、そう思ったが屋敷には、自分がティータイムをしてサボっていた証拠を残したままだったので急いで屋敷に戻り、証拠を隠滅するのであった。






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