第42話 ウザい海とカイム

海、視点に戻ります。




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ちょっと、時間はさかのぼる。


海は今、暑苦しい火山地帯にいた。火山地帯は、山々に覆われており、火山地帯自体も山だ。そして、海は飛行してカイムを探していた。海は、決して心配だから、助けに来たのではない、あんな呪いのような恐怖の手紙が来たので、仕方なく来たのだ。そう、仕方ない...そして、海はつぶやく


「暑い、よくこんなとこに住んでんな...」


そして、海は、案外カイムがいそうな場所を、簡単に見つけた、火山地帯の奥の方に突出して盛り上がっている場所がある。そこにポツンと一軒だけ、岩でできた家が建っているのを見つけたのだ。バカは高いところが好きだからな、と思い、海も、バカなので、その家の屋根に降り立つ。そして、家の裏を見てみると、腹から大量に血を流した、小麦色の肌が特徴的な美少女と、両腕がなくなった瀕死状態のカイムが地面に横たわっていた。


「うわっ、グッロ!」


海が、初めに抱いたのは、そんな感想だ。そして、そのグロイカイムを見てみると、まだ息がある、そして、必死に何かを叫んでいるようだ。海は、仕方ないので、助けてやるため、カイムを殺そうすため歩み寄っている。フードを被った男に向かって叫ぶ。


「ちょっと待ったああああああああああああああああ!」


海はフードと、カイムの間に降りたつ。そして、死にそうなカイムが言う。


「鈴木…助けてくれ…」

「黙れ!」


海は、ウザかったのでそれだけ告げると、カイムに超回復水を飲ませる。カイムは、回復していく。そして、海はフードを見て言う。


「殺すなら、もっとサクッと殺せよ、可哀想だろ?..」


そして、フードは答える。


「殺してもそいつは、死ななかったのでええええええええええええええす」

「うっさ・・・」


そして、海は右手を突き出し、魔法を放つ。


「サイクロン!」


海の手から放たれる、魔法は大きな竜巻だ、フードにそれはまともに直撃する。しかし...


「効かなあああああああああああああい!」


フードがそう言い、竜巻はフードの立っている場所を避けるようにして、飛んでいった。海は、魔法が効かないのは、森の精霊王やそこに倒れている、火の精霊王を見て、予想範囲内だったで、あまり驚かず、肉弾戦で戦うことにする。そして、消えるようなスピードで、海はフードに向かって、動き出す。海は、射程内に入ると、しなやかな体をぎゅっと捻り、それに連動させるように、腕を振るい瞬間的に拳を握り、フードの顔を思いっきり殴りつける、


「消え、がはっ!」


海の拳をまともに貰った、フードは、一直線に、家の反対側の、岩壁に飛んでいき、岩にめり込むように叩きつけられた。


「ぶっはっ!」


海は、めり込んだフードに、とどめを刺すため、高速で動き出す。しかし、めり込んでいた、フードが突如すぅーと消えていったのだ..


「何処を見ているのでええええええええええええええす」


海の真横に、突然フードが現れた。そして、フードは海の心臓目掛けて、剣を突き立ててくる。しかし、海の魔力コントロールを施した目には、それがスローモーションになって見える、海は、最小限の動きで剣を容易くかわして、そのまま流れるようにしてフードの太ももと、ふくらはぎの間の関節に風を切る音をさせながら、蹴りを落とし込む。


「ふん!」

「おべえええええええええええええええええええええ」


フードの足は、ありえない方向に捻じ曲がる。そして、片膝をついたフードに、海は、自分の膝辺りにフードの顔があったので、フードの顔を両手で抑えて、顎目掛けて、何度も膝蹴りを繰り返す。


「オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラアアアア!」

「あ゛ぁ゛…」


フードの口からは、粉々になった歯と、血と混じった唾液が飛び出す。そして、海は、手を放し、とどめにムチのような横蹴りを、首筋に叩きつけた。海の足の甲の上付近が、フードの首筋をえぐり取る。


「そい!」

「の゛ぁ゛」


フードは、声にならない声を出し、地面に引きづられるようにして、倒れる。そして、気絶したフードを見た、海はいつものように叫ぶ


「俺TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!」


カイムは、海の戦いを見て思った、次元が違い過ぎると、そして、同時に思う、なぜその力が、自分にはないのかと...


海は、戦いは終わった、とばかりに、ネネに超回復水を飲ませる。ネネの剣で突き刺された傷や折れた腕は、回復していく。そして、ネネは海の腕の中で目を覚ます。


「私はあの後…」

「おう、目が覚めたか、呪いの手紙の主」


海は、皮肉を込めて言う。ネネは、自分の状況を理解したのか、顔を赤くさて、飛び起きる


「あ、あなた鈴木海!どうしてここに?」

「え?お前のウザすぎる手紙のせいで、来たんだが...」

「でも、あの手紙には、カイムを守ってほしいとしか…」


ネネは、どこか恥ずかしそうに、もじもじしながら言う。海は、それに対して


「まぁ、転がってたしな...」

「あ、ありがと」


潤んだ瞳で、海を見上げるネネ、それを見たカイムが、


「おい、鈴木、ネネから離れろ!」

「あ゛ぁ゛!」


海は、せっかく助けてやったのに、乱暴な物言いに腹を立てる。そして、海は察したように言う。


「あぁ、ネネちゃん大好きカイム君は、嫉妬ですね!」

「黙れ!とにかくネネから離れろ!」


海は、ムカついたので


「ウインド!」


海の放った、かまいたちは、カイムの立っている横を、切り裂く、驚いたカイムは、地面を見た、両側に深い深い切り裂かれたような、穴ができていたのだ...そして、海は告げる。


「身の程を知れ...」


カイムは、恐怖と怒り、そして嫉妬を込めて叫ぶ。


「どうして、お前ばかりいい思いをするんだ!ネネを助けるのは、俺だったんだ!」

「知るか!」


海は、切り捨てるように答える、そして、カイムは泣きながら言う。


「ふざけんなああああああ!俺は、二年間も、来る日も、来る日も、来る日、来る日も、来る日も、来る日も、来る日も、来る日も、来る日、来る日も、来る日も、来る日も、魔法の修行をしてきたんだぞ!でも覚えたのは、低級魔法のフレイムだけ、しかも、そのフレイムすら、火力が増すどころか、美味さが増したんだ!なんでお前だけそんな力を手に入れて、簡単にネネを守るんだよ!」

「知るか!」


海は、切り捨てるようにまた言う、そして、ネネがフォローする。


「カイムの火、美味しいわよ...」

「黙れ!」


カイムは、ネネに八つ当たりした。そして、カイムは海を睨みながら、


「俺は、お前が許せない...」

「そうか、じゃあ一つだけ聞きたい、お前は戦いが好きか?」

「はぁ?戦いは自分を守る手段でしかない!好きも嫌いもあるものか!」


それを聞いた海が続ける。


「そうか、ならお前は、大したことにはならないな...まぁ修行すれば、少しは強くなれるかもしれんが...」

「どういうことだ!バカにしてるのか!」


カイムには、何のことだか分からなかったので、怒りを抑えて質問した。そして、海が告げる。


「好きじゃないなら、強くはなれんよ」

「なっ!お前なんかに何が分かる!それに、戦いが好きな奴なんていない!」

「ここにいるぞ、僕は戦いが大好きだ、自分で言うのもなんだが、戦闘狂だ、現に異世界に来る前だって、空手をしてたしな...」

「な、なぜだ..」


カイムが、困惑しながら言う。海がそれに答える。


「何故って?俺TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEしたいからだ」

「そ、そんな理由でか!戦いはたくさんの血が流れるんだぞ!下手したら死ぬんだぞ!」

「それでも、俺は、戦いが好きだ!カイム!お前は、何を思いながら、何を目標に、二年間修行をしてたんだ?」


カイムは、考える。そして、そこになぜかネネの無邪気な笑顔が浮かんできた、そして、海は言う。


「戦いではないだろ?そして、戦闘力の向上ではないはずだ」

「だ、黙れ!キサマに何が分かる!」


カイムは、顔を赤くさせて言った、海はその反応を見て


「どうせ、ネネちゃんクンカ、クンカする妄想しながら修行してたんだろ、僕は知ってるぞ...」

「ち、違う!ね、ネネの笑顔だ...」

「えっ?なんだって?」

「お前は、殺す!」


海は、無視して続ける。


「だから、お前の魔法は、火力が上がらず、旨くなったんだろうよ、きっと…」

「どういうことだ?」

「そうすれば、ネネの笑顔が見れるだろ?火力が上がってもネネは笑わんだろうよ...中華料理は別として…」

「なっ!」


カイムは、図星をつかれたような感覚になる、しかし、カイムのプライドが、それを許さない。


「黙れ!どうせ、お前は運がよかっただけだろ!?」

「そうだとも!」

「くたばれ鈴木!」

「でも、残念なことに人には、才能というものが必ずある、そして、これまた残念なことにその才能にも格差があるんだよ...」

「黙れ、キチ海!」


海は、無視して続ける。


「何かに成功する奴は、きっとその才能があったんだろう、もちろん努力をしてないとは言わない、しかし、それぞれの個体が、それぞれの分野に対しての才能という、ステータスは、一定でないのは確実だ…」

「俺は、そんなものは認めんぞ!キチ海!」


カイムは、叫ぶ。海は、無視して言う。


「まぁ聞け、例えば凡人が、その分野に対して、努力5、才能5の比率で成功できるとする。天才は努力4、才能6ぐらいの比率で成功できる、それが天才と凡人の格差だ。大した差ではないように感じるが、実はこの1は大きい、この1は、その分野に対して、初めから、面白いと思って、努力できる才能だ、人間も動物だ...個体差がある、そこは割り切って、考えるのをやめて動物になるしかない...」

「じゃあ、凡才はどうすれば、その1を埋められるんだよ!このキチ海!」


その1にも達してないカイムは、苛立ちながら叫ぶ、そして


「まず好きになることだ、まぁ、その好きを探すのが難しいのと、好きだからと言って、うまくいくとは、限らんのが問題だが...お前の好きなことは、何だ?」

「お前なんかに、教えるか!くそったれ、キチ海!」

「さっきから、キチ海、ってなんだよ…どうせ、お前の求めるものなんて、ネネの笑顔だろ?」

「ち、違う!」


カイムは、顔を赤くして、必死に否定するが、そこに、ネネがいたずらな笑みを浮かて、どこか恥ずかしそうに、カイムを見て言う。


「そうなの?」

「ち、違う!」


照れ隠しのように言うカイム、そして海が煽る。


「おーいカイム君、男のツンデレは需要が少ないぞ~」

「黙れ!鈴木!あぁ、そうだよ!俺はネネの笑顔が好きだ、大好きだ、そのためなら死んでもいい覚悟はある!それの何が悪い!」

「こいつ、開き直りやがった...じゃあ、今度からは自分で守れよ、その笑顔を…」

「うるせぇ、上からもの言いやがって何様だ!キチ海の分際で…」

「あぁ、悪かった」


運人間の海は、素直に謝った。そして、カイムは困惑するが、煽る様に言った。


「気持ち悪いな、キチ海、どうした急に…」

「いや、別に気にすんな」


海は、自分がペラペラと、稚拙な考えを人に言ってしまったのに対して、少し恥ずかしさを感じていたのだ。そしてカイムが言う。


「結局キチ海は、何が言いたかったんだ?」

「好きなことができる内は、才能がなくても好きなことに全力で取り組めてっことかな?」

「何で、疑問形なんだよ...」


カイムが呆れた風に言う。そこに、忍び寄る足音が聞こえたので海は、振り返る


「シャル、ちゃん…」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


何も言わないシャルロッタ。シャルロッタは凶器を持ったままたずんでいた。そして言う。


「浮気魔の海、見~つけた...」

「ど、どうやってここに…」

「お兄ちゃん、また頭の悪い長文しゃべってたでしょ?気持ち悪い~顔に出てるよ...浮気魔のくせに・・・」

「楓、お前の仕業か...」


どうやら、楓がシャルロッタを飛行で連れてきたらしい。そして、シャルロッタが尋常じゃない、雰囲気を醸し出して言ってくる。


「海の今日の内臓は、何色でしょう?????」


シャルロッタが、凶器を持って怪しい笑みを浮かべて、海に近づいてくる。


「く、来るなあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


海は、シャルロッタの変な才能を目覚めさせてしまったようだ…そして、何の努力もせず、ほとんど運だけでハーレムを作った海には、そのツケが回ってきたのだった…














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