第34話 あっ、久しぶりです...

「よう、森の精霊王...」


そう、壁に貼り付けにされていたのは、森の妖精王であった。海は、久しぶりに見るそいつに、どうしたのか聞いてみる…


「お前が、なぜここにいる?」


しかし、森の精霊王からは、返事がない...

森の妖精王は、だいぶ弱っているようだ、長い金髪にきれいな顔立ち、森の精霊王で間違えないのだが、あれだけ美しかった、純白の羽根は、半分に引きちぎられていた...


海は、その無残な姿を見て、超回復水をの飲ませることにする。


超回復水を無理やり飲ませるすると、森の精霊王はみるみる回復していき、目を覚ます。残念だが半分になった、純白の翼はなぜか治らなかった...


「ここは...」


目を覚ました、森の精霊王に海は顔を近づけ、安否を聞く


「大丈夫か?」

「きゃっ!」


突然、目の前にあった海の顔に、顔を真っ赤にさせ動揺する森の精霊王...


「何よアンタ...てっ盗人じゃない!!」

「おう、そうだ」

「何開き直ってるのよ!」


海は、拘束されている暴れる森の精霊王を落ち着かせる...


「まぁ、落ち着け、何があった?」

「なんで、アンタなんかに言わなきゃいけないのよ!」

「はっ!ならこのまま吊るされているがいい!」


海は、森の精霊王に背を向け歩き出す、しかし


「ちょっと、待ちなさいよ...」


森の精霊王は、頬を染め潤んだ目で海を引き留める。


「どうした?」


海は、意地悪く振り向く


「別に、助けてほしいなんて思ってないんだからね...」


そう小さくつぶやいた、森の精霊王の拘束を解いてやることにする海であった...


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




拘束を解いた海は、森の精霊王が拘束されていた手錠を、注意深く観察したところ、どうやら魔力を塞ぐものらしいことが分かった。そのせいで、拘束されている間は、森の精霊王得意の魔法が使えなかったらしい。なぜ、檻が曲がったか聞くと、拘束されたまま、体当たりを試みたという。


「でっ、森の精霊王どうして捕まっていたんだ?」

「私を、森の精霊王とか、ダサい名前で呼ばないで、私の名前はレナよ、そう呼びなさい、許可するわ!」

「でっ?はどうして捕まったんだ?」

「バ、バカッ――――――――!!」


顔を真っ赤にさせ、ぷんすか怒るレナに対し、海は新しいおもちゃを見つけたような顔になる。

そして、海は優しい顔で質問すした。


「レナはどうして捕まったの?」

「ふ、ふん!最初からそう言えばいいのよ...」


レナは、顔を真っ赤にさせて、少し嬉しそうに答えた。そして、レナは何故捕まったか、話始める。


「私がなぜ捕まったか知りたいって言ったわよね?」

「あぁ」

「半分は、アンタのせいよ!」

「えっ?」

「アンタにやられた後、たまたまテントにいた奴隷商人が通りかかったの、そして、その奴隷商人の仲間が、私をとらえようとしてきたわ、私はあんたとの戦いで、ボロボロだった、でもねそんなくらいじゃ負ける気はしなかったの」

「でも負けたんでしょ?」

「そうよ!余計な口を挟まないで頂戴!」

「はい」


そして、レナは話を続ける。


「私を捕まえた奴隷商人の仲間はものすごく強かったわ、私の魔法が一切通じなかったもの」

「ほう」

「そして、私を倒した後、そいつは言ったの、精霊何ってこんなもんかって...その後奴隷商人たちに魔力を封じる腕輪をつけられて、今に至るってわけ...」

「へぇ~」

「なんで、興味なさそうなのよ!」

「わざとだ!」


海は、殴られる...そして質問することにする。


「そのお前を倒したっていう、奴隷商の仲間は何処にいるんだ?さっき倒した中には、そんなに強いやつはいなかったけど?」

「それが問題なのよ!私を倒した後、そいつは各地の精霊を倒す、って私に嫌味たらしく言って出ていったわ!あいつらは、組織だって動いてるみたい」

「へえ~」


海は、なぜか殴られる...そして、一通りの話を聞いた海は、立ち上がり家に帰ることにする。


「さてと、親を子供に返さなきゃならんし、そろそろ帰るかな」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

「なんだ」


なぜか、困った表情で引き留めるレナに対して、実は知っているがわざと恍ける海。


「この、首輪外しなさいよ...」

「なんで?」

「なんでって、捕まったのは半分アンタのせいなんだから!」

「そうかな?でも、さっきいっぱい殴られたし...」

「それは、アンタがムカつくことするから...」

「痛かったな~首輪外したら、もっと僕に暴力振るうんだろうな~」


海は、奴隷商から奪った首輪の鍵を振り回しながら、わざとらしく言う、そしてレナは、恥辱にまみれた表情で


「お願いします...外して下さい…」

「嫌だお」


海は、レナの首輪についている鎖を持ち、立ち上がりその場を後にした...



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


海は、家に帰る途中の道を歩いていると、102人の人妻+首輪付き精霊を引きつれていたので、大変目立っていた。そしてレナが顔を真っ赤にさせ俯きながら言う...


「恥ずかしい...こんな屈辱初めてよ!」

「そうか、レナの初めてを貰えてうれしいよ...」

「なに、うれしがってるのよ!この変態!」


海は、レナの罵声を聞き流し、歩みを進める、そこにどこかで見たようなイケメンが、海の前に立ちふさがった。


「待てキサマ!その御方をどこに連れていく気だ!」


海の目の前に現れたのは、いつぞやギルドであったイケメンカイム。

叫ぶカムイに、海は冷静に答える


「何処って、お家だけど?」

「ふざけるな!解放しろ!」


海は、レナに聞く


「こいつのこと、知ってるか?」

「知らないわ...でもあなたよりは、イケメンで紳士そうね!」


レナは素敵な笑顔で言った


「よし、殺す!」


海は、そう言うとカムイに魔法を放つ


「ウインド!」

「なっ!」


驚いたカムイは、剣を引き抜き、海の魔法を切り裂く


「ほう」

「いきなり何をする貴様!」

「いや、なんとなく」

「何んとなくで、魔法を放つな!」

「そうか、「メガウインド」!」


海は、魔法を放つ


「がはっ!」


海の魔法は、カイムに直撃する。そしてカイムは泡を吹いて気絶したようだ。


「弱っw」


海の発言を聞いたレナが


「アンタ、最低ね...」


そして、海は真面目な顔で言う


「僕は、欲望の赴くままに生きるって決めてるんだ!」


海は、爽やかな笑顔で言い放った。


「ホント、最低ね...」


海は、気絶したカイムを放置して、屋敷に向かうのであった...



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



家に帰った海は、相変わるずの惨状に呆れるが、帰ってきた海に対して、真っ先に気付いた子どもたちが駆け寄ってくる。


「パパ、お帰り!」

「パパじゃないが、ただいま」


そして、海は後ろにいる奥さんたちを、子どもたちに紹介する。すると子どもたちは...


「ママ!」


自分たちの親に駆け寄っていった...

海はそれを見て安堵の表情を浮かべたのであった。


海は、その後、親子たちに、自分の土地の家を一軒ずつ寄付して、「後は勝手にしろ、困ったことがあれば言え」と言って、屋敷に帰ったのであった。



屋敷に帰った海は、夕食を食べながら、シャルロッタたちに奴隷を解放した経緯を説明した...因みにグスリは、お子様なのでもう寝ている。

そして、シャルロッタが質問する。


「じゃあ、その奴隷商人たちは、組織で動いて家族たちを陥れているってこと?」

「みたいだな」


そして、サカナが怒りを露にして言う


「そいつら、騎士として許せん!今すぐ叩き潰すべきだ!」

「そうだな、でもめんどくさい」

「鈴木!また貴様の悪い癖だ!ならばどうして子供たちや、その親を助けた!?」


海は、サカナを諭すように言う


「単純だ、俺がそいつらより強いと思ったからだ、人間は所詮、知能を持った動物、どれだけ賢いふりをしようと、弱い者は虐げられ、強い者が弱い者を食い潰す。それは、どの世界でも一緒だ、故に弱肉強食。俺は、自分より強いかもしれない相手に、わざわざ戦いを挑みたくない、ましてや組織だ」

「なんだと貴様!この腰抜けめ!」


サカナはいつものように冗談で怒っているのではなさそうだ、そこに、ドロップがなだめるように言う


「待って下さいサカナさん、私は海さんの気持ちはなんとなくわかります...村長に村を襲われたとき私もそう感じました...」


そして、海の顔を見た楓が言った。


「お兄ちゃん、意味不明な、気持ち悪い、変な言い訳してたけど、実際は別にその組織を潰してもいいって考えてるんじゃない?」

「最初の気持ち悪いは、置いとくとして、まぁな」

「じゃあ、何故動こうとしない!」


サカナが机をたたいて抗議する、楓が続ける


「ちょっと待ってサカナさん、まだ話は終わってないよ、お兄ちゃん私たちのこと心配して、行かないって言ってるんでしょ?」

「そうだ、弱肉強食だからな」

「だから、何を言ってる貴様!」


再度机をたたくサカナ、そしてシャルロッタが海の足りない言葉に付け足す...


「きっと、海は組織を潰すことになれば、人死にが出ると思っているの、そしてそれが出れば、復讐に来る人がいるわ、その人たちは、私たちに被害が与えてくるかもしれない、そう思っているのよね、海?」

「まぁ、大体あってる、今ならまだ組織も僕に目をつけてないからね」


それを聞いたサカナ


「そうだったのか...すまない、シャルロッタ様のことを思ってのことだったのか...」

「まぁ、9割はめんどくさいからだけどね」


海が本音?を言った途端、シャルロッタたちは、海をボコボコにしたのであった...


そして、シャルロッタは、海を懲らしめた後、最後の質問をする。


「で、さっきから気になってたけど、その隣に立っている鎖の子は誰?」

「レナだ」

「聞いてるのは、名前じゃないのよ!」

「そうか」


そして、サカナ


「また、新しい女か...鈴木氏ね」


海は、サカナを無視して、レナを紹介する


「こちら、森の精霊王のレナだ」

「初めましてレナです、この様に頭の悪い変態に捕まっています...助けてください...」


レナの挨拶を聞いたシャルロッタは、海を殴る。


「痛って、何すんの?シャルちゃん?」


シャルロッタは鬼の形相で答える


「解放しなさい!」

「嫌だ、さっき弱肉強食って言っただろ?」


海は、したり顔でそう言うと、シャルロッタに殴られ、ドロップに押さえつけられ、楓に鍵を取られ、サカナに剣でとどめを刺されそうになったが殴った。


「ありがとう、皆!弱肉強食とはこのことね!」


解放されてお礼を言う、レナ

そして、男は女に勝てないと思う、海であった...









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