第9話 平原

海とシャルロッタは、カレビ帝国に行くため王都ピカナを出発して平原を移動していた。


カレビ帝国までの道のりは、平原→砂漠→カレビ帝国の順番である。


平原は、草が可愛く生えている緩やかな平坦な道だ。

凶暴なモンスターが少ないので、海とシャルロッタは、のんびりとキモいククララの荷台に乗って移動していた。


「海、こうやってのんびりと旅するのもいいわね」


シャルロッタは、珍しく落ち着いた口調で言った。そして、海が言う。


「そうだね、モンスターも襲ってこないし、空気はきれいだし最高だね...隠れる場所がないから、うんこ出来ないけど…」


海の適当な意見に、実は聞いてなかったシャルロッタが頷いて言う。


「海、ありがとね...」

「どうした、このタイミングで...」

「えっとね、海が私を盗賊から助けてくれて、それからこんな楽しい思い出までくれて、私今とても幸せなの、今まではね、王位を継承しなきゃならない指名があって、できることは限られてたけど、海と出会ってからたくさんの自由を知って、毎日が発見だらけで楽しいもの、だからね、ありがとっ」

「お、おう、うんこについてのコメントは、無しか...」


シャルロッタのまっすぐな思いに、海は気恥ずかしさで、うんこの話題を持ち上げながら答えた。




そして、平原を移動して少し経った...

海は、何かが走るような音に気付き後ろを振り返る。


「何だ?」


海が目にしたものは、馬に乗った野蛮そうな人たちだった。


それを見た海は、何事かと思い、相手が近づくのを待つことにした。だんだんと近づいてきたそいつらが何なのか、海はようやくわかった。ファンタジーには、ゴキブリ並に登場する盗賊だ。


盗賊は、海の数メートル近くに近づいてきて、臭い息を吹き掛けながら言う。


「おう、あんちゃんわざわざ待ってくれるなんて親切じゃねぇか!、身ぐるみ全部と、そこの女を置いてきな」

「息、臭っさ!たわしにするために、水に浸けておいたへちま並に臭い...」


海が微妙な感想を言うと、盗賊の罵声が飛んできた。


「おい、ぶっ殺されてぇのか、俺の息は爽やかラベンダーだぞ!」

「それそれで、気持ち悪いが...とりあえず死んどく?」


海は、そう言ってものすごい勢いで上空に上がり、盗賊めがけて自由落下する岩フリーフォールロックを放った。そして盗賊たちは、悲鳴を上げる暇もなく、岩の下敷きになる。

しかし、討ち漏らしがあったようで、シャルロッタの方に何人かの盗賊が行くのが見えた。海は、最大スピードで降下したが、間に合わず、盗賊はシャルロッタの首筋にナイフを当てて叫んだ。


「おい、お前!こいつを殺されたくなかったら両手を地面に置き体を伏せろ!」

「分かった、テンプレ盗賊男、でも本当にそれでいいんだな?」

「な、なんだよ、早くしろ!」


海は、盗賊の指示に従い地面に手を置いた。


「よし、そのままにしてろよ、お前らこいつをやっちまえ!」


シャルロッタを、人質にしている盗賊が叫んが、ほかの盗賊の返事が返ってこない。疑問に思い、盗賊が周りを見渡すと、他の、盗賊abc...がいた場所に、無数の穴が開いていたのだ。


「これは、一体...」


盗賊が動揺している隙を見逃さず、海は間合いを詰め、盗賊の持っているナイフを収納し、盗賊の顔面めがけて正拳を放つ


「ぐぅえぇ!」


盗賊はクルクル回りながら派手に吹っ飛んだ。


「なあ、盗賊さんよ、身ぐるみ全部置いてくことと、誰の差し金か教えてもらおうか?」

「ひいぃ!」


もはや、どちらが盗賊か分からない状況になってしまったが、海は、盗賊たちの身ぐるみを全部矧ぎ取り、誰の差し金か聞いたところ、盗賊はすぐに白状した。


「カ、カレビ帝国の、人間に命令された、後は知らない、い、命だけは助けてくれ!」

「本当にそれだけか?」

「し、知らない!ホントだ信じてくれ!」

「分かった、情報提供ありがとう、そしてさようなら」

「ぎゃああああああああああああああ」


盗賊の、足元に穴ができ、落ちていった。

海は、穴をどうやってあけたかというと、地面に触れ、盗賊の足元を部分指定し、地面を収納したのである。


「よし、シャルちゃん、行きますか!」

「え、あ、うん...」


海は何事もなかったように、キモいククララの荷台に乗り移動を続けた。


「また、守られちゃったね...」

「いや、今回は僕がわざと招いたことだからね、盗賊倒して身ぐるみを矧いでやるのが、今回の目的だったからね」

「ウ、ウソ!」

「ホントだよ、これ以上シャルちゃんに刺客が来ないように、牽制の意味も込めて盗賊さんには痛い目に合ってもらったんだよ」

「そうなんだ、てっ、やっぱり守られてるじゃない!」

「シャルちゃんを見てると、守ってあげたくなるからしょうがないよ」

「なに言ってんのよバカ...」


シャルロッタは、顔を赤くしながら照れ臭そうに言った。


そしてそこから少し移動して、海とシャルロッタはククララから降りて、昼食をとることにする。


「シャルちゃん、前にご飯作れるって言ったよね、お願いしてもいい?」

「いいわよ、任せなさい!最高の料理を提供するわ!」


海は、超回復水があるので食事をとる必要がないが、シャルロッタの料理を食べてみたい気持ちになったので、お願いすることにした。


海は、アイテムボックスから食材と調理器具を取り出し、それをシャルロッタに渡す。


「じゃあ作るわね!」

「よろしく」


シャルロッタは海から食材をもらうと、手際よく作業し始めた。海はその間、暇だったのでできるだけ、シャルロッタが料理であたふたする姿を横目でみながら、周囲を警戒しておくことにした。


そして15分後...

シャルロッタの料理ができたらしいので、海はアイテムボックスから木を取り出し、

円状になるように部分収納して、テーブルと机を作った。

そしてそのテーブルに、シャルロッタが作った料理が運ばれてきた。


「さぁ、召し上がれ!」

「美味そうだな~」


海の、目の前に用意されたのは、日本で言うところのシチューだった。シチューは、皿に盛られており、熱々の証湯気が出ていた。そして、色とりどりの野菜が散りばめられていて、とくにじゃがいもポイっやつは、トロトロで美味しそうだ。海は、そのシチューを、口に運んだ。


「ど、どう、お口に合えばいいのだけれども...」

「うん、すげぇ~おいしいよ、今まで食べたシチューの中で一番!(嘘)」

「そ、そう、それはよかったわ、これはシチューてっ名前の食べ物ではないけれども、美味しいてっ言ってもらえて安心したわ」

「シャルちゃんは、いいお嫁さんになりそうだね(嘘)」

「お、お嫁さん!」


シャルロッタは、顔を真っ赤にして俯いた。


「また、作ってくれる?」

「も、もちろんよ!」


海とシャルロッタは、食事を終え、移動を再開した。

そして、遂に問題の砂漠地帯が見えてきた...

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