第4話 森の精霊王
朝の眩い陽ざしの中、今日も海は一日を始めるため目を覚ました。
木の隙間から、まぶしい太陽が海に向かって降り注いでくる。
目覚めた場所はいつもと同じ木の上。そんなことにも、もうなれてしまってた海は、背中に木の硬さを感じながら、股に木を挟み込み起き上がる。
そして、今日も元気に朝の挨拶を行うのである。
「おはよう、今日もいい天気☆」
海の挨拶が虚しく響き渡った。
昨日、海はアイテムボックスという強みを手に入れたが、今だに一人寂しく森の中という現実に辛いものを感じていた。
因みに夜の森はチョー怖い...
「早く町に行きたい…」
そう海はつぶやき、町を目指して歩くことにした。
歩きながら朝食を済まそうとアイテムボックスから「超回復水」を手に取り出し、飲むことにする。
「ゴク、ゴク、ゴク、ぷはぁーうまい!」
「超回復水」でおなかを満たすと、超回復水の効果なのか、朝の眠気が飛んで行った。
「よし、これで一日大丈夫!」
食料と体力の心配をしなくてよくなったので、海は、大胆な行動をすることにした。
自分の一日の消費カロリーも考えず、走り出したのだ。
海は一刻も早く町に行きたかったのだ。正直、今の海にはあまり怖いものはなっかった。一度オオカミとの戦闘を経験しているので、この辺のモンスターはあまり強くないと高を括っていたし、それに海には「超回復水」がある。多少の攻撃なら、くらっても死にはしないだろうという打算的な考えもあったのだ。
しかし、次の瞬間、海の体に衝撃が走った。
「がはぁ!」
海は、謎の攻撃に合い地面に叩きつけらた。
海は焼けるような痛みに襲われる。
痛みを感じる場所を見てみると、腹部に何かで斬り割かれたような大きな切り傷があり、そこから赤黒い血が大量に流れ出していたのだ。
「ぎゃぁぁぁああああああああああああああああああ」
朦朧とする頭で考え、急いでアイテムボックスから「超回復水」を取り出し、勢いよく呑み込む。
「ゴクゴクゴク…」
すると、海の傷は見る見るうちに回復していった。
超回復水という名前の通り、しっかりと傷をいやしてくれるようだ。
どうやら血も戻っているようだ。
「ふう、危なかった死ぬところだった...」
しかし、危機は去っていなかった。海はまだ敵を発見することができていないのだ。
海は、敵を見つけるため周りを見渡したが、それらしきそれらしき影はなかった。
「何処だ...」
突然、海の真上に影が差す。
見上げてみるとそこには、金色の長い髪に、大きな瞳、整った顔立ちの緑色のドレスを着た、人形のような美少女が空を飛んでいたのだ。
しかし、よく見てみると、彼女は普通ではなかった。彼女の背中には白い純白の翼が生えていたのだ。
「・・・・・・・・」
海は、その少女のあまりの美しさに言葉を失った。
「あんたね!泉の水を根絶やしにして、その周りの木を伐採していった犯人は!」
謎の美少女は、プンすか怒りながら言葉を発した。
「あ、そうです...」
久しぶりの、人との会話で言葉が短くなってしまったため、海は言い訳する時間を与えてもらえなった。
「許さない!」
謎の美少女は、右手を突き出し...
「サイクロン!!!!!!!!!!!!!!」
魔法を放った。
美少女が呪文を唱えると、手から竜巻が放たれたのだ。
「ちょっ、話を聞いてェえええ」
会話可能な相手をやっと見つけたが、どうやら会話をできる状態ではなさそうだ。
海は、ものすごい勢いで迫ってくる竜巻を避けるため大きく横に飛んだ。
しかし、海の反射神経を持ってしても避けることができず、竜巻は海の右足に直撃し、その場で倒れこんでしまう。
「!?」
右足に焼けるような痛みを感じる。
海は恐る恐る右足に視線をやると、今まであったはずの右足が...
なくなっていたのだ…
「ぎゃああああああああああああああああああああ」
海は、反射的にアイテムボックスを開き「超回復水」を飲んだ。すると右足はめきめきと生え、元の足へと戻っていく。
「本当に死ぬ...会話どころではない...」
海は、立ち上がり右手にベルトを持ち直し、何か打開策はないか考えようとした。
しかし、敵は待ってくれるはずもなく、次の攻撃が飛んでくる。
「メガウインド!!!!!!!!!!」
先ほどの竜巻とは違い、緑色の光線が海めがけて放たれた。
海は何としてでも避けるため、軽傷を我慢し、思い切り横に飛んだ。
飛んだ影響で肘を擦りむいたものの、光線を躱すことに成功する。
「よし!」
魔法を躱したことに喜んでいたのも束の間、突然空に雲が差しかかった。
「次はなんだ!?・・・」
海は、嫌な予感がした。
「あんた、しぶといから一撃で決めたあげる!」
美少女は、物騒なことを言いながら、空に手を向け呪文詠唱を行った。
「森の精霊王が命ずる、雷の守護者よ、我との契約に答え!!その力を与えたまえ!!ライトニングノヴァァアアアア!!!!」
美少女が手を振り下ろした次の瞬間。海に向かってに絶対に、躱しきれない量の雷が降り注いだ。
「がはあああああああああああああああああ」
圧倒的な量の雷を受け、海の体は丸焦げになった。
「やったか!」
美少女は妙なところでフラグを立て、海の生死を確認するため、地面に降りたった。
海の丸焦げの体に近き、美少女が生死を確認しようとしたその時...
海の体が一瞬にして回復したのだ。
海は高速で立ち上がり、美少女の首めがけて手を伸ばす。
「ふんっ!!」
「!?」
海は、最大パワーで美少女の首を締めあげた。
「よう!クソアマ?」
「うぐぅぅ」
海は、首を締め付けたまま美少女を軽々と上に持ち上げる。
海自身の掟の中には、女を殴らないというものはない。自分が気に食わなければ、容赦なくそいつを殴るのが、鈴木海という人物の本当の姿なのだ。
「おい、てめぇ!!さっきから俺の届かない範囲で攻撃してきやがって...やっと捕まえたぞ、絶対にぶっ殺してやる!」
海はかなり怒っているようだ。普段の僕という一人称から俺に代わったのがその証拠だ。
「く、苦しい…」
美少女の悲痛の叫びで海は我に返ったが、危険なので美少女の首を放すつもりはない。
海は美少女の首にさらに力を込める。
「う、ぁぁ…」
そうしている内に美少女は泡を吹いて気絶した。
海は気絶した美少女を物のように適当に放り投げ、一息つくためその場に座り込みアイテムボックスから「超回復水」を取り出して一気に飲んだ。
「ゴクゴクゴク...ぷはぁー、これがなかったら死んでたな...まぁ、なかったら追われることもなかっただろうけど...」
なぜ海が、あの雷の中奇跡的な生還をしたかというと、まさしくこの「超回復水」のおかげだった。
海はあの時、雲が差しかかった時点でかなり嫌な予感がしていた。だから海は躱すことを諦め、美少女が呪文詠唱中「超回復水」を口に含んでいたのだ。そして呪文直撃後、途切れそうな意識の中「超回復水」を飲み込んだのだった。
「ふう」
海は精神的疲労から、地面に転がろうとしたその瞬間。
オオカミを倒した時と同じく、レベルアップのシステム音が鳴り響いた。
「レベルが上がりました。森の精霊王を倒した追加ボーナスがありますが、習得しますか?」
海は、倒した相手が森の精霊王だということと、追加ボーナスに驚きつつも、承諾をした。そして海はステータス一覧を見た。
鈴木 海
レベル2→17レベル
種族「人間」
ステータス
MP 0→10
筋力 113→120
知力 201→217
防御力 51→60
器用さ 106→121
俊敏 151→170
魅力 100→100
スキル
「飛行」
魔法
「ウインド」「メガウインド」「サイクロン」「ライトニングノヴァ」
称号
「森の精霊王を倒したもの」
ステータスは、レベル相応にしか上がらなかったが、呪文やスキルを覚えたことに感動した。
「よっしゃああああああああああああああ!」
海は、喜びのあまり雄たけびを上げさっそく、呪文を発動できるか試してみた。
目標を木に設定し、右手を突き出し呪文を放つ。
「まずは弱そうな呪文から、ウインド!!!!」
海の手から、鋭いかまいたちが放たれた。
しかし、呪文を発動した瞬間、謎の激痛が海を襲った。
体の中からこみあげてくるものを感じる。
「がはぁああ!」
海は、どす黒い血を口から吐き出した。海はやばいと思い、とっさにアイテムボックスから「超回復水」を取り出し飲みこむ。
「はぁ、はぁ、はぁ、なんなんだ...」
海は、吐血の理由を考えることにする。
10分後...
「分かった...」
海は考えた上で、ある可能性を考えた。海はステータス一覧を開き、左手に「超回復水」を用意して、もう一度呪文詠唱を行った。
「ウインド!!!!!」
勢いよく放たれたかまいたちは、木に直撃し木を木っ端微塵にした。そしてまた吐血を繰り返した。
「がはぁぁ!」
海は、素早く左手に準備してあった「超回復水」を飲んだ。
「ゴクゴクゴク...やっぱりか...」
海の予想は的中した。ステータス一覧を開きながら、呪文を唱えたのには理由があった。海は、MPに注目したのだ。海が「ウインドウ」を放った瞬間、MPの表示が、
-220となったのだ。なので海はこう予想した。MPが足りない分を、生命力から取っているのではないかと...
「くっそぉーこれじゃあ魔法使えないじゃないか、一番弱そうなウインドウでこの様なら、ライトニングノヴァとか使ったら、一瞬で死にそうだな...」
海が魔法を使えるのはまだまだ先になりそうだ。
◆
森の精霊王との戦いから、一日が経過した...
海は、あのあと、倒れている森の精霊王を放置して危険な森の精霊王から遠く離れた場所で睡眠をとり朝を迎えた。
「う~ん、今日もいい天気!!」
海は、朝の光を浴び目を覚まして木の上で背伸びをしていた。海は、今日の予定を決めるてあった。
「よし今日は、飛行実験だ!」
街に行きたいという気持ちは強いが、せっかくの森である為昨日、森の精霊王を倒したボーナスで得たスキル「飛行」の実験を行うことにした。
それに「飛行」を使いこなせば、一気に町に行けると思ったからだ。海は魔法の時のような、MP消費も考えたが覚悟を決め「飛行」と念じた、すると海の足が宙に浮き段々上昇していった。
「うぁあ!」
海は突然の浮遊感に驚いたものの、何とかバランスをとることができた。そして海は、ステータス一覧を開きMPの確認を行った。
「よっし、減ってない」
海は、MPが減ってないことに喜びつつ、さらに上昇して空中遊泳を楽しむことにした。
「うあぁ~」
海は壮大な景色に驚いく。
上空から見た木はまた違うものに見えた。あんなに物々しかった木が、神秘的な一つの生命体のように見えたのだ。
海は、とりあえず周囲を見渡し町らしきものを探した。
「…ない」
目視では、町らしきものは確認できなかった。海は実験を再開した。
海は飛行はどれぐらいの速度で、動けどれくらい機動力があるか確かめることにした。
速く走るイメージと同じ要領で風を切り動き出す。
「うああああああああ」
海はいきなりの加速に驚いた、どうやらかなり速いスピードを出すことができるようだ。
「これはすごいな」
予想以上のスピードに感動する。
そして、海はスキル「飛行」を使いこなすためとりあえず一時間ほど練習することにしたのだった。
◆
一時間後...
海は、ほとんど使いこなしたと言っていいほど「飛行」をマスターした。
スキル「飛行」をマスターしたことで新たなる必殺技を海は考えた。空を飛んだ状態で、右手を下につきだしアイテムボックスから「ヤングル岩」を取り出し、自由落下させた。「ヤングル岩」ものすごい勢いで落下し、地面に壮大な音を響かせた。
どおおおおおおおおおおおおん
海は、これはいけそうだと思い、次は上空から見える地面のモンスターめがけて、放つことにした。目視でオオカミを発見して、オオカミの真上まで行き「ヤングル岩」を解き放った。
「くらえ!!」
どおおおおおおおおおおおおおおおおん
「ヤングル岩」は大きな音を立てオオカミを押しつぶした。
「よし!」
海の行動は、かなり鬼畜ではあったが確実にオオカミをしとめることができた。海はこの必殺技を
「発見!」
そこには、大きな金色のゴリラがあぐらで座っていた。海は、迷わず
「くらえ!」
海の攻撃は、ゴリラに命中しゴリラは黄色のエフェクトになった。そして、システム音が鳴り響いた。
「レベルが上がりました」
鈴木 海
レベル17→レベル22
種族「人間」
ステータス
MP 10→15
筋力 120→125
知力 217→222
防御力 60→65
器用さ 121→126
俊敏 170→200
魅力 100→100
スキル
「飛行」
魔法
「ウインド」「メガウインド」「サイクロン」「ライトニングノヴァ」
称号
「森の精霊王を倒したもの」
海は、ゴリラは経験値がいいと判断し、ゴリラを探し狩り続けることにした。
そして海は、日が暮れるまでゴリラを狩り続けたのだった...
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