⑷ 学ばざればすなわち老いて衰う


 翌日、午前中に輝美さんに昨日のことを報告し私たちは静かな午後を過ごしていた。

 零思さんは報告の後、昨日手に入れたUSBを事務所のPC『紅桜べにざくら』に差し込み、解析をしつつ弾の補充をしていた。

 

 紅桜とは、我が哲翁探偵事務所独自開発のスーパーコンピュータとそのソフトウェアの名前であり、膨大な資料の検索から情報の解析、運転中の補助など様々な場面で活躍しているパソコンなのです。さらにすごいのが、どこにいても紅桜と通信ができ、どんなところでも指示を出し情報を見ることができる通信網があるのです! 本体は、事務所の一階下、二階にあります。

 まあ、詳しいことはわかりません。誰が作ったのかも、零思さんはしゃべってくれません。

 

 私がお茶を飲みながら本を読んでいると、突然部屋の奥からカーンッという大きな金属音が聞こえた。

 急いで部屋の扉を開ける。

 「ど、どうしました!?」

 「いや~、ちょっと間違えちゃってね、爆発しちゃった」

 「大丈夫ですか!?」

 「大丈夫だいじょ・・・だめかもしれない」

 私は零思さんの足に目を落とした。すると、見事に足に弾丸が突き刺さっていた。

 「いっっっっっってーーーーーーーーーーーー!」

 「ちょ! ちょっと! お、落ち着いてください! す、すぐ救急車呼びますから!」

 私が救急車を呼ぼうと事務所のほうに向かったとき、突然、通気口の口がガタガタと震えだし、そのまま外れて中から何か人のようなものが落ちてきた。

 「う・・・うんにゃ・・・」

 「だ・・・大丈夫ですか? 希孔納きくのさん?」

 煙の中でうっすら見えた姿で私はわかった。

 

 彼女は哲翁希孔納てつおうきくの。この探偵事務所の情報収集の要であり、零思さんの家族の一人。もともと猫のため、頭には猫の耳、語尾も「にゃ」が付くのです。

 

 「うにゃ~、あ、智恵理さん、すいません驚かせちゃって」

 「い、いえ」

 「で、どうかしたのかにゃ?」

 「へ?・・・あ! そ、そうだ! れ、れれ零思さんのあ、足に銃弾が!」

 「なら早く病院に行かないと」

 「そ、そうだったー!」

 私は急いで電話を取り、心を落ち着かせながら救急車を呼んだ。

 「もしもし、唐竜からたつ総合病院ですか? あの、救急車をお願いします。はい、そうです。哲翁探偵事務所の哲翁霊思です、はい。ええ、いつもどおり学之先生でお願いします」

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