身体測定
義男は背が低い。中学二年になっても背が伸びる気配がないので、自分でも半ば諦めている。しかし、毎年春の身体測定の時期が近づくと、心の中の澱が一気に感情に噴き出してくる。
「どうせ、俺はチビだよ。それはわかっているよ。だけどそれをわざわざ数値化することはないだろ。俺は155センチだよ。小五の時から変わらないんだから知ってるよ。だいたいセンチってなんだよ。ものの長さを比べるために、外国の野郎が便宜上作っただけの単位だろ。それを俺に強制的に当てはめやがって。だいたい身体測定ってなんだよ。あんなのやりたい奴だけやればいいじゃん。身長測定器なんて、買いたい家だけ買えばいい。だって体重計なんてそうだろ」
義男は言いたいことを言い放った。
「そんなこと言われてもなあ」
義男のお父さんは困った顔でお母さんを見た。お母さんも、
「義男、そんなにムキにならなくても」
と困った顔で言いました。お父さんもお母さんも身長二メートルを超える長身で、バレーボールの選手でした。
「お父さんやお母さんには僕の気持ち、わからないよ」
義男は怒って出て行きました。義男が出て行くとお父さんはお母さんに言った。
「なあ、母さん。そろそろ義男に本当のことを言った方がいいかな?」
「そうですね」
そうなのだ。義男は二人の実の子供ではない。十五年前、地球から誘拐してきた子供なのだ。
「義男には悪いことをしたな。この第二バリカン星の155センチは地球では180センチなのにな」
「そうですね。地球人としては背が高い方なのにね」
二人はそういうとお茶をすすった。
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