逃亡者
——こちら1号。逃亡者発見できません。
「引き続き、捜索お願いします」
——2号、同じく発見できず。
「了解」
——3号、逃亡者のものと思われる、食物片を発見。付近を操作します。
「了解。全号、3号付近に集合、綿密に調査せよ」
——了解。
——3号です。逃亡者発見。狙撃隊の出動を要請します。
「了解。担当の先生と相談の上、派遣します」
——了解。こちらも説得を試みます。
「先生、逃亡者を狙撃して良いものでしょうか?」
「ううん、難しい。発砲のショックで死んでしまう可能性もあります。殺してしまっては何にもなりません」
「貴重な生き証人ですからな。しかし、相手は素早い。我々が束になってかかっても逃げられる可能性がある」
——3号です。たいへんです。逃亡者がねこに、のらねこに連れ去られました!
「何やっている、ねこを捕まえろ。発砲しても構わん」
——了解。発砲します。
「大変なことになりましたな」
「全く、二十一世紀の人間をぶん殴ってやりたい」
もう、なんでスズメ一匹追いかけるのに刑事一課あげて捜索しないといけないんだ。それもこれも二十一世紀人が地球環境を顧みなかったせいだ。おかげでスズメは世界に二十二羽しかいないんだ。それもすべて、このレッドデータ博物館に。その一羽が逃げた。やっぱりたいへんなことだ。我々二十二世紀人がスズメを守り、繁殖させなければいかん。そのための刑事一課の出動だ。
そう、心で思う刑事一課長もレッドデータ種族のニホン人であった。アメリカ合衆国でのお話である。
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