4-終 前夜
ソラゾクの万能宇宙戦艦——『スター・ロマンサー』は、既に『神代』に到達していた。その船は情報素材(インフォ・マテリア)でコーティングされていたので、その状況を外から観察した者は誰もいなかった。もしいるとすれば、その仄かな空気の歪みを温度の変化か何かによるモノでないと認識し、観察した者だけだろう。
その大陸……否、周辺の小さな島々も含めた「地域」は、緑に満ちてはいたが、道路の整備もまた進んでいた。それ以外で目を引くのは、黄金色の田園風景——食料問題の解決を図るべく、品種改良の為された加工食品の原料……その殆どが、この地域で育てられているのだ。その生産体制は機械化されたモノだが、育てられているのは平坦な地帯だけでは無い。農業機器の発展は特に目覚ましいモノであり、傾斜地にありながらも、水平に保たれた田が規則的に集積したモノ、つまり、『棚田』ですらもその美しさを残しながら、機械化の対応の許される所となった!それもまた切ない話ではあるのだが……
『スター・ロマンサー』が目指す森林の奥地とは、未だキラビトにとって探究の歩みの届いていない場所であった。神々、人類の業が同時に眠る土地と、その場所は言われていた。——情報は非常に抽象的で、曖昧だ。地球人の間でも、その場所に関する情報は曖昧さに満ちていて、その情報交換は履歴にし難いモノであった。目撃されたモノの報告。矛盾点の相互指摘。指摘の網をすり抜けるためのこじつけ。良しとされるモノが選び取られながらも、次の議論の際にはそれが無いモノとされていく。そんな事が繰り返されながらも、そこに眠る、ある「モノ」の実態は益々訳が分からないモノとされてきた。しかし……
【艦長】にはそれが何であるか、という事は既に分かっていた。「全てを見通す目があった」と冗談交じりに論じればそれまでではあるのだが、それこそ如何様染みたモノである。【艦長】は地球人すら棄ててきたモノに目を届かせた。つまり、「過去の遺産」たるモノであった。紙にアナログのインクで印字されたような文献、アナログな伝聞、言い伝え、伝説……あらゆる曖昧な情報を受け取り続けつつもシェイプ・アップを続け、【艦長】の中では既に一つの確信めいたモノが出来上がりつつあった。
その場所に眠っているモノは2つだ。「隠された秘宝を守り続ける、眠れる神、言い伝えられてきた生身の怪獣」。そして……「キラビトが有する、最も畏怖すべき大きなモノ、その断片」。後者こそが、今回の作戦で手に入れるべきトレジャー。そして、禁断の果実。それだけが、分かっておくべきモノだ。
第三ブリッジに一人でいる【艦長】は、大自然の連続の中にある廃村、廃墟などを目にした所で、体巡る血液がチリチリと泡立つような興奮を静かに爆発させた。
「よし、一暴れするぞ」
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