第4話 王都に向かおう!(2)
リリナの居る場所へ少女と連れて戻ると亡くなっていた御者の方を丁寧に弔い終えて、遺品の整理を行っていた。
「ただいま」
「おかえり、大丈夫だった?」
俺を見て、駆け寄るリリナの頭を撫でながら「大丈夫だよ」と声かけると少し恥ずかしそうに笑う。
「すまないが、後ろの少女は何者かな?」
少女の存在に気付いた、商人のお兄さんが俺に尋ねて来るが、俺も自己紹介をした訳では無いので、少女の名前も知らない。
俺たちの視線を受けて、少女は一歩前に出て、自己紹介を始める。
「危ないところを助けて頂き、ありがとうございます。私はディーネ・アクアローズと申します。」
「アクアローズだって!」
ディーネの名前を聞き、商人のお兄さんはビックリするが俺にはさっぱり分からん。
横のリリナも「?」を浮かべながら首を傾げている。
「君たちは村に居たから、貴族たちの話は知らないだろうが、アクアローズ家はこの国の公爵家で水の筆頭貴族様だ。この辺の領地を管理している家でもあるので、お前たちの村もアクアローズ家の庇護下にある。ただ、俺が驚いた理由は、その公爵家の令嬢が襲われた事実が驚きだ。当主様が事故で亡くなったのも理由にあるのか?」
商人のお兄さんが独り言を呟いている。
俺たちはお兄さんを無視して今後の話をした。
「これからどうするんだ?」
「私は、王都の学園へ入学するために向かって居ましたが、移動手段が亡くなったので歩いていくしか…」
「だったら私たちと行かない?目的地一緒だし」
「よろしいのですか?」
リリナの提案に少し驚きながら確認するディーネに笑顔で「良いよ」と答えるリリナ。
良いも悪いも商人のお兄さん次第だと思うのだが、まぁ貴族様との繋がりが出来るので、王都まで乗せるとは思うが思考の彼方へ行っていたお兄さんが現実に戻ってきたタイミングで、リリナが聞くと即決で了承した。
その時の顔は、儲け話のあった時に見られる、欲まみれの下種な笑顔だったがまぁ気にしない。
旅の仲間を増やして、村々を寄りながら王都を目指したが、賊や魔物に襲われる気配もなく、俺たちと同じく王都へ向かう子供を乗せて、最終的には俺たちを含めて、7名まで増えた。
ディーネの後に乗ったキサラと言う少女は寡黙で口数が少なく、身長もやや低いが、紙が青がメインで緑のメッシュが入った、2属性持ちで、村の中では神童として扱われたため、人と(同年代の)話すのが苦手らしい。リリナには関係ないが無く、問答無用で話をして関わっていたがキサラも満更ではなく、「…うん」「…そう?」など受け答えはしていた。
マークと言う赤髪の少年で、元気で明るくムードメーカー的なタイプであり、頭が少し足りない典型的なタイプ。
差別なども無く、俺にも話しかけてくる処を見ると、人懐っこい性格のような気もする。リリナとキサラを見て「すげー、お前たちの髪の色見た事無いぜ。カッコいいな」とか言ってのでリリナに対する悪意が無いので俺の中では放置する事にした。
ロウと青髪の少年は、実力こそ全てと思うタイプなのか、俺を無視してリリナとキサラとディーネに話しかけていた。眼鏡の奥の目が相手を見定めるような物をしているので、こいつは危険と判断。出世欲が強く、弱い物は自分の踏み台として、強いもの権力のある者には巻かれるタイプに見られるので信用度はマーク以下というかマイナスだ。
フウと言う緑髪の少年?はおどおどして、少し緊張していた。俺の目では少年だと思うのだが、姿が、長髪でフリフリのドレスを着た姿は少女その物で、この世界では珍しい男の娘という奴だろう。
キサラより低い身長と華奢な体つきは同じ男としてどうかと思うが、リリナは女の子と思って声を掛けており、戸惑っている姿は哀れに見えた。
馬車の外で陰ながら追いかけている二人の護衛ヒカリとライトはディーネとキサラに対しては「友達が出来て良かったですね」と親のような感想をしており、ロウには「近づくな屑が!殺すぞ」と殺気を放ち、マークには「問題ないが馴れ馴れし過ぎるぞ」と憤慨して、フウには「かわいい!」と興奮するなど、俺にしか気づかれていないが感情が現れ過ぎて護衛としてどうかな?と考えさせられた。
ちなみに、4人のうちディーネに気付いたのはキサラとロウとフウの3人で、キサラとフウはあまり、その素性に売れなかったがロウは取り巻きと言うか権力志向も強く結構アピールして居たので、ディーネは少し疲れた表情をしていた。
「おう、グレン。お前は将来、何になりたいんだ?俺はやはり騎士を目指したいから学園で頑張る予定だ」
マークは俺に将来どうするか?と聞いてきた。
同年代で将来を語り切磋琢磨するのは青春だと思うが、俺は騎士になる気が無い。
「俺は生まれ育った村で、農民か村を守る門番で良いよ。権力とか興味ないし、俺は属性無しだからそこまでの出世も出来ないからね」
俺は嘘と真実を入れて答える。
生まれ育った村で働くのは真実。態々、国の為に働く気が無く、ほのぼのと平和に日々を過ごせればそれで充分だからだ。
嘘は属性無しの件だ。魔人族的に見れば属性無しだが、俺は前世の性能がそのまま引き継がれて居るので、魔力量も扱える魔法の数も桁違いにと言うか、この世界では無い魔法も扱えるので、そんな恐ろしい情報は露見させる訳には行かない。
守りたい者を守るためなら問答無用で使うが基本はあまり使用しない方向で考えている。
「野望が無いな。男なら騎士になって姫様を守りたいとか思わないのか?」
「思わないな。興味がないし」
「興味がないというか君には無理だよ」
俺とマークの会話にロウが混ざり、軽く嫌味を入れてくる。
「属性無しの君は学園でも落ちこぼれの劣等生だ。まず、同じ種族なのかと疑問を持つよ。そんな君が、騎士だって。笑い話過ぎて呆れるね」
俺は別に構わないが、ロウの言葉を聞き、マークが少しイラついていた。
「そんな言い方は無いんじゃないか?努力すれば騎士にもなれるし、魔術師と違って騎士は技量だけで出世する人もいる。現騎士団長も魔力が乏しかったが剣術と肉体強化の魔術のみで今の役職に付いている」
マークが俺を庇うようにロウに噛みつく。
「君もそこまで魔力が高い訳じゃないから、その騎士団長と同じ処で終わるさ。僕は生まれ持った膨大な魔力があるから、王宮魔術師を目指すと言うかなれるのさ」
ロウはマークに自分は生まれ持った才能があるとアピールするが、魔力が多くてもコントロールが下手だったら意味がないが、そんなことをロウに言う必要もないので俺は流す。
ロウとマークの口論で馬車内は少し重い空気に包まれた状態で王都へ着いた。
こいつ等と同じクラスにだけはなりたくないなっと思いつつ、馬車は王都の門を潜った。
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