第25話 魔力エネルギーの性質と利用法について
朝。眩しい光で目をさますと、水の音が聞こえてきた。そこに足を運ぶと、薑が歯を磨いてた。
「おふぁよぉーぎょざいましゅ、にぇむ」
歯ブラシを入れたままだからか、微妙に聞き取りづらい挨拶がきた。
「おはよう、薑」
苦笑しながら、わたしも身支度を整えに入る。歯を磨き、顔を洗い、なんとか
それが終わると、この前隊長さんにもらったお土産を手に取る。木でできた髪留めーバレッタ、と言うらしいーを後頭部につける。
「もう。曲がってますよ」
自分ではうまくできたと思ってたけど、薑が直してくれる。しょーじき、あんまり変わんないように見えるけど、よく見えない位置だしよくわかんない。
薑に目を向けると、薑も髪型を整えていた。
「薑は、その髪型大変じゃないの?」
薑は、両側頭部と後頭部の左右での4箇所で髪を止めている。髪留めはお土産のトランプマークのだけど、その前からも紐で同じ髪型にしてた。
「慣れると、そうでもないですよ? もう感覚で分かるようになってますし」
「そういうものなの?」
「そういうものです」
うう。1個で苦労してるわたしにはよく分からない感覚だ……。
そういえば。お土産の他に、もう1個もらったものがある。携帯用連絡道具(通称:ピッチ)がわたしと薑にそれぞれ渡された。けど。
「……どうしよう」
扱い方がいまいちよく分からなくて、ちょっと困ってる。
頭を悩ませながら、手のひら大くらいの金属の箱を手で弄ぶ。その横では、薑がそれを悠々と操作していた。
「……合歓。教えましょうか?」
「だ、大丈夫だって」
つい強がってしまった。
実は、これをもらってから何回か薑に使い方を教えて貰った、んだけど。正直、使い方よりもこれがどう動いてるのかが分からなくて怖い。壊したりするんじゃないかって。知らないからこそ、怖い。
そっと、壊れ物を扱うようにピッチを仕舞う。その時のわたしの手は、すこし震えていた。
そのあと。龍華に勉強を教えてもらう時に、急に薑が発言をした。
「龍華さん。このピッチーー魔道具について教えてほしいのですが」
その唐突な発言に、龍華はキョトンとし。
「使い方くらい、説明書を読めばいいだろ?」
「いえ、これがどう動いているのか気になっちゃいまして」
喋りながら両手を合わせている姿に、龍華も一つため息をついて。
「わかったよ。教える」
「まず、ピッチに限らず魔道具は3つの場所に分かれている。1つ目は『電気エネルギー』を溜め込むバッテリー部分。2つ目は必要量を『電気エネルギー』から『魔力エネルギー』に変換するエネルギー変換部分。最後が実際に操作して動く本体部分だ。これはいいか?」
「電気エネルギー、ですか? 魔力エネルギーじゃなくて」
「ああ。それは単純に魔力エネルギーは不安定だからな。人体の外だと1分ほど、どう頑張っても5分ほどで
で、これがどう動いてるかだが。……わかりません」
「わ、分からないんですか!?」
「魔術回路は専門外なんだよ。まあ、魔力万能すごい、でいいだろ」
「そうですか……」
薑は苦笑いを浮かべながら、ほおを掻く。ひと段落したらしいし、わたしも聞きたかったことを聞いてみよう。
「龍華。魔道具ってやっぱり壊れやすかったりするの?」
「いや? まあ、中にはそういうのもあるけど、少なくともピッチはそんなことない」
そうなんだ。すこし安心「壊れたら火吹くけど」……え?
「危ないじゃん!」
思わず声を上げてしまう。
「言い方が悪かったな。普通に壊れても火は吹かない。さっきの説明にあったバッテリーが真っ二つになると火を吹くんだ。それに、作った側もちゃんと対策してるからな。思いっきり床に叩きつけても動く。問題ない」
「叩きつけるのは問題だと思うんですけど」
薑が半目で睨んでいるけど、意に介さない風に涼しい顔をしている。
「問題ないなら普段のお勉強に戻るぞ。……電池の話だし、せっかくだからピッチに使われてるリチウムイオン電池の話からしてやろうか」
それからは、いつも通りのお勉強が始まった。
夜、勇気を出してピッチをいじってみた。目の前の薑にメールを出して、それを返してもらう。それだけだったけど。口の方が早いけど。それでも、文章が返ってきたとき、わたしは達成感に包まれた。
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