第24話 ほんの小さな穴
少し肌寒くなってきたある日のこと。隊長さんたちが、お仕事で少し遠くに行くらしい。とは言っても、1週間くらいで戻るとも言っていたけど。
それで、その間寂しい思いをさせるかもしれないと謝ってきたので。わたしは、平気だと返した。
次の日にはもう出るらしく。祈が思いっきり抱きついてきたりして、みんなを見送った。
その日は、まだ平気だった。次の日には、時々呼んでからいないことに気がついた。その次になると、気が付いたら涙が
そんなわたしを見て、祈や薑がわたしをたくさんかまってくれたけど。2人に気を遣わせちゃって、すごくつらかった。元気ださなきゃと思っても、寂しく思う自分が嫌になった。
その日の夜、いつものように外に出て星を見る。ゆっくりと心を落ち着けると、ぼんやりした寂しさが形になり。わたしの心を抉っていく。
しばらく空を見上げ、吐きそうになるくらいの感情を持て余していると。足音がして、矛盾が歩いてきた。
慌てて、笑顔を作り。心配させないように明るく振舞おうとすると。矛盾は、ちっちゃな何かを渡してきた。曰く、離れた人とも会話したりできるまどーぐだって。それを受け取ると、そのまどーぐからいきなり音が鳴り出した。どうしたらいいか矛盾に助けを求めると、わたしの指を使ってスイッチを押して、まどーぐをわたしの耳に当てた。
そうしたら、そこから声が聞こえてきた。祈が会いたいといってきたり、七夜も珍しく一緒になってたり、隊長さんが2人を諌めてたり。
嬉しかった。けど、もしかしてみんなにも迷惑かけちゃったかと思うと、心苦しかった。
嬉しさと心苦しさを抱えて、そのやりとりを聞いていると。龍華の不機嫌そうな声が聞こえてきた。『変なこと考えてないだろうな』と。『こいつらは、キミのことが大切で元気付けようとしてるんだから、ありがたく受け取っとけばいいんだよ』と。
大切に思われている。その言葉で、気がついた。幸せになると決意したのに、いつのまにかまた自分を貶めようとしていたことに。みんなが想ってくれることを、受け入れていなかったことに。
ようやく想いを受け入れて、じんわりとあったかくなる心を胸に。ちょっとだけ聞いてみた。龍華は? って。そうしたら、ますます不機嫌そうになってたった一言。『恥ずかしいだろ、言わせんなバカ』。
もう大丈夫だと言ったら。じゃあまた帰ったら、と終わり。音声が途切れる。矛盾にそれを返すと、頭を撫でられる。ありがとうと言うと、ん。とだけいい、戻っていった。
わたしも部屋に戻ると、薑が起きていて。心配そうに声をかけられる。
寂しいから一緒に寝て。そうねだると、薑は一瞬目を見開き。そして、笑った。
了
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