第18話 天然です
「稽古は任せろ。バリバリ」と二重が言っていたので、2人のことは任せて他の隊員と訓練をしていた時。そちらの方から爆発音が聞こえてきて、慌てて振り返ると。ーー2人が、氷漬けになっていた。
「あ。やりすぎた……まあ、大丈夫?」
二重は、そんなことを言っているし。どう見ても大丈夫ではない。
「隊長。あれ……」
「悪い。ちょっと抜ける」
「ですよねー」
慌ててそちらの方に向かう。と、千夜一夜も正気を取り戻したのか「天蓋を写せし色彩の火よ。友に恵みを与えよ! ブルーフレイム・リカバー!」と回復呪文を唱えて、2人の氷を溶かし始めた。
「あ、隊長」
「『あ、隊長』じゃない。どうしてこうなったんだ?」
「……思ったよりずっと強かった、から。ごめん」
普段は見せない殊勝な顔を見せてくる。……はぁ。
「わかった。2人が起きたらちゃんと謝れよ」
「わかってる」
そこまで言うと、二重は普段の表情に戻り。
「感想。2人とも訓練すればかなり強くなる。薑、挑発乗りやすいけど、冷静に攻撃してくる。腕力高くて、速くて重い一撃。合歓、甘さがあるけど一度言えば分かる。それに」
そこまで述べたところで、急に口ごもる。少し待ったところ、決心したような顔をし。落ちていたハンマーをこちらに投げ渡してくる。
「……これ、あの子、武器」
「ハンマー? それがどうし」
「ばーん」
言葉の途中で、ゴム弾を撃たれる。その衝撃でハンマーは2つに折れてしまった。……折れた?
「それ、普通ハンマー。訓練用武器じゃない」
ゴム弾で折れる強度なんだし、それはそうなんだろう。だが、そうだとしても言いづらくなる理由がわからない。
「……その武器使って、『移動しながら』魔術使ってた」
「!? 移動、しながら?」
「……わかってると思うけど。移動しながら魔術を使うの、難易度高い。だから、武器で能力増強してその領域行く。だけど、あの子。それせず、使えてた」
沈んだ声で、二重は言葉を続ける。
「……自分、こんな重い武器でようやく
そうだ。見慣れていたし、武器をうまく使えていたから忘れていたけど。二重は、大剣だけでなく大砲をも使い、防具まで魔力親和性の高い金属で固めてようやく実用レベルの魔術を使っているんだ。
顔に影を落とし、沈み込んでいる二重の頭に手を乗せてやる。
「……俺は、お前が才能を埋めようと努力してきたことを知っている。その武器を自由に操ったり、夜遅くに魔術の練習をしてたり。お前に豊富な才能がなくとも、積み上げた努力を知っている。だから……その、なんだ」
こういうとき、とりあえずで口を開いちまうのも悪い癖なんだよな。……どうすっか。
「……嫉妬しても、いいさ。ただ、当たるのだけはしなけりゃ」
俺の言葉に、二重は嘆息し。
「途中まで、格好良かったのに」
「う」
「それに、そういうこと言い回ってると。刺されるよ?」
気がつくと、俺の腹には大砲の銃口が向けられていて。
「こんな風に」
超近距離からの連続接射を受け、俺の口から「ごぇぷっ」という声と謎の体液が漏れ出した。
「で。そのハンマー、なんなんだろ?」
「言われてみれば。練習用はどれも
ガトリングを食らわせた直後に、普通に話しかけてくる。もう、これが日常になっていて。なわけはないが、何か理由があるんだろうし。普通に会話に戻ることにする。
2人で首を傾げていると、釘打が近寄ってきて。
「隊長、そろそろ次のメニューに……あれ? そのハンマー、庭師さんが探してたやつじゃない? 『杭を打つハンマーが1つたりない』ってお岩さんみたいに数えてたから」
「……マジ?」
「まじ、だけど」
この瞬間、謝りに行くことが確定した。
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