第12話 特3隊の人たち

 わたしたちは、みんなに連れられて食堂に行った。食堂の中は広かったけど、その割に人はほとんどいなかった。

「広い、けど。あんまり人居ないね」

「説明しよう! 通常、騎士達の食事時間は約4時間の幅を持って決められているんだ。簡単に言えば、昼食は10時〜14時。夕食は17時〜21時。朝食は5時〜9時。ってな具合。つまりそれ以外の時間に来ればがらっがらなんだよ」

 千夜一夜が説明をする。指し示した時計を見ると、今は14時半くらい。それでこんなにガラガラだったのか。

 納得していると、奥から男の人の一団がこっちに歩いてきた。耳とかは隠してると言っても、つい影に隠れてしまう。

「合歓ちゃんが頼ってくれた。嬉しいなぁ」

 神無がなんか言ってるけど、気にしない。むしろ目立たないで。

「あの人たちは誰なんです?」

「んー? あ、同じ隊の人だよ。2人のことも知ってるから、安心していいよ」

「わかったです」

「うん、わかった……」

 お仲間さんなら……、と。そろそろと神無の影から出る。その時、一団もこちらに気がついたのか声をかけられた。

「隊長達。と、あの時の子達っすね。話は聞いたっすよ。ウチで引き取ることになったんすよね?」

「ああ。知ってるなら話は早い。こっちの子が」

「蔓茱萸合歓です。お世話になります」

「木蓮薑です。よろしくなのです」

 その言葉に応えて、向こうの人たちもにこやかに挨拶を返してくれる。その時一緒に名前も教えてくれたけど……。

「すみません、憶えきれませんでした……」

「薑もです……」

「ははっ、いいっすよ。ゆっくり憶えていけば」

 憶えられないなんて失礼をしても、怒らず笑いかけてくれる。特3隊の人っていい人ばっかりなのかも?


 その後、他の人たちは仕事があると言って去っていった。

「あの、私たちに付き合ってて、みんなは仕事大丈夫なの?」

「大丈夫。自分たち、今日非番」

「あいつらは街の見回りもあるけど、私たちは秘密兵器扱いだから。むしろ鍛錬がメインなんだよ」

「というより、七夜はケンカしてたら両方ぶん殴って仲裁してたから、外されたんだよね」

「ま、ボクたちはへーきだよ。もーまんたい!」

 なんとなく、千夜一夜だけじゃなくみんな何かしらまずいことしてそう。なんか全員で隠そうとしてるし。

「…………」

「…………」

 薑と2人でみんなを見つめてると、隊長さんが答えをくれた。

「釘打は千夜一夜と一緒になって暴れてたな。二重は意思疎通ができなくて仲裁どころか見回りすらできなかった。神無は」

 そこで、ニヤリと黒い笑いをして。

「ちみっこすぎて、子供扱いされたんだったか?」

 子供扱い、の言葉につい周りと見比べてしまう。二重と千夜一夜が結構高いけど、釘打が小さめで、神無に至ってはわたしたちと頭一つ分くらいしか違わない。

「ちょっと、隊長!? おねーちゃん的威厳が!」

 気にしてたのか、神無が吠える。胸ぐらを掴もうとしてすかされ、落ち込んでる姿があまりにも哀れで。つい、慰めたくなった。

「えっと。神無さんは大人っぽい、よ?」

 いい言葉が見つからなくて、月並みな表現になったけど。神無は十分喜んでくれたらしく。思いっきり抱きつかれた。

 ……よっぽど嬉しかったのか、その後も『あーん』とかされそうになったのには少し困ったけど。でも、それで元気になるならって。

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