第9話 ファッションショー

 お風呂からあがって、神無にドライヤーもかけてもらった。その間に、釘打と二重が服を持ってきてくれたみたい。2人はそのまま薑を着替えさせるらしく、神無と千夜一夜が残った。

 渡された箱から、服を1つ出してみる。黒い、2本の紐の間にガムテープくらいの黒い布がくっついている服。

「神無。これ、どうやって着るの?」

 なんか動揺したような鼓動が聞こえた。

「ちょっと、七夜!?」

「言い訳をさせて欲しい」

「聞こうじゃないか」

 あ、袋に着方……履き方? が書いてあった。

「尻尾の扱いに難儀したんだよ! 普通の下着に丸い穴はトイレとかに難ありでボツ。上まで楕円状に開けると耐久性に難ありでボツ。じゃあ元からそこに記事がないのにするしかないって事で紐パンにするしかないじゃない!」

「長々と喋ってそれかい変態」

「蔑まないで! 気持ちよくなる!」

「ちっ」

 両側を軽く結んで足に固定し、リボン結びにする。いままで素肌だったところに布がついて違和感があるけど、これが『下着』らしいし。慣れた方が良さそう。

「神無。千夜一夜。これでいいの?」

「……ギャップ萌え」

 ? 意味がわからない。

「大丈夫やで。じゃあ次はこれも履こうか」

 取り出されたのは、ちっちゃめの黒いズボンに裂いたような穴が開いてるもの。

「七夜。それはなんだい?」

「尻尾穴付きスパッツ」

 なんか神無が拳を振りかぶった。

「じゃあそれでパンツ作れや!」

「ごもっともで!」

 殴られた千夜一夜が床にぶつかって、ずん。と鈍い音を出した。

「大丈夫?」

「痛い。これは全部服を着てもらわないと治らないかも」

「何言ってるの?」

「真顔の質問でますます痛い……」

 なんか大丈夫そうなので、ほっといて服を着る。『スカート』にも尻尾用に裂け目が入ってただけで、あとは問題無く着れた。音がひどい時は、この『パーカー』の『フード』を被ればいいんだって。神無はこのパーカーを見た時に「あのパーカーバカ三人衆……」って言ってたけど、わたしはこれ好き。


「薑。そっちはどう?」

 無事に服を着終わって、薑の方に声を掛ける。

「合歓。その服、似合ってます」

 そう声をかけてくれた薑も、よくわかんないけど。なんか、こう。

「薑も……なんだろ。その服がしっくりくる? うん、しっくりくる!」

「ふふ。嬉しいです」

「えへへ」

 薑が笑い。わたしも笑う。みんなも笑う。

 ああ。今、きっとわたしは楽しいんだ。幸せなんだ。そう思うと、胸の奥に不思議な感情が生まれてきた。

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