第7話 (風呂が好きなんて)なんか犬っぽくねぇよなあ?
「え、っと? 要するに。その『下着』の上に服を着る……ってことでいいの?」
皮脂とか保温とか色々言われたけど、いまいちぴんとこない。
「……はい。そうです」
「下着って、いざ教えるとなると教えづらいものなんだねぇ」
神無と薑は見てて一生懸命なくらい熱心に教えてくれたせいで、疲れ切ってるし。……あんまりよくわからなくて、ごめん。
でも、下着かぁ。いまいちよくわかんないけど、ここまで頑張って教えてくれたってことは、やっぱり着たほうがいいんだよね?
下着について悩んでいると、ピンクの人たちの足音がした。
「お帰り……えと、ピンク、灰色、赤の人」
「ピンク? ……ああ。自己紹介してなかったっけ?」
「してない」
「そうだ。まだだった!」
名前が呼べず、仕方なく色で呼ぶ。と、彼女たちは名前を教えてくれた。
「私は
「わかった。千夜一夜!」
「わかった、とは」
ピンク色の髪の人が千夜一夜。
「ボクは
「釘打。よろしく!」
赤い髪で、うるさくはないけど騒がしいのが釘打。
「自分、
「二重。よろしく」
灰色の髪の人が二重。
「あと、自分の髪。先水色」
「水色? ホントだ」
二重が、自分の髪を近づけて見せてくれる。確かに、先端の5〜6センチほどが青みがかっていた。それを見ていると、急に後ろから抱きつかれる。
「私は
知ってる。
「ちなみに髪の毛は根元から先端まで真っ黒なんだ」
「知ってる」
「ちょっと扱いぞんざい過ぎやしないかい?」
神無がオーバーに肩を落とす。でも、次の瞬間には立ち直ってて千夜一夜に話しかけている。むう。
「で、服の方はどう?」
「一応2人とも140くらいってことで、何着かはあった。で、速攻で1組は届けてもらうってことにした。1時間くらいで届くってさ」
「1時間か……どうしよっか?」
服が届くまで1時間。少し空いてしまった時間をどうするかと、みんなが考えてる。
少しみんなが考え込んだあと、釘打がある提案をした。
「じゃあ、お風呂はいってさっぱりしよう!」
タイル張りの大きな洗い場。透き通ったお湯からくる独特の匂い。
「はえー。おっきなお風呂!」
施設のお風呂もおっきかったけど、ここはもっとおっきい!
「あっちには露天風呂もあるんだよ!」
「全部、温泉。源泉掛け流し。最高」
? 温泉って?
「地面からお湯がわいてでてくるやつ、ですかね?」
「そうなんだ。薑は物知り!」
まず体を洗うために、体にお湯をかける。わしゃわしゃと頭を洗って、あ。
「体洗うタオルがない」
「うーん。荷物ほぼ置きっぱなしでしたから。しょうがないですね」
髪が長いからか、まだ髪をわしゃわしゃしている薑も、諦めたようにため息をつく。
「じゃあ、私が洗ってあげようか!」
神無がやけに興奮している。どうしよう?
「じゃあ、お願いしてもいい?」
「え?」
「ダメなの?」
「だめじゃないよ!」
荒い息で、こちらに近づいてくる。
「祈。興奮しすぎ」
そして、二重に
「合歓。新品のボディータオル、あるけど。使う?」
いつの間に取りに行ってたのか、タオルを差し出してくれた。せっかくだし、それを受け取って体を洗う。
「そんなご無体なぁ」
神無が裸のままで崩れ落ちている。
「……神無。背中、洗ってくれない?」
「……うん!」
横で千夜一夜に「祈が甘やかされてる」って言われてるけど、これはちょっとかわいそうに見えただけだし!
「尻尾もお願い。優しく」
「触ってもいいのかい?」
「いきなりはあれだけど、予告されてなら」
「……わかった! 優しくするよ!」
後ろから、激しい鼓動が聞こえる。でも、触る指はぎこちないながらも気遣いが感じられて。少しだけ、思うことがあったり。
体を流し終わり、みんなで湯船に入った。お湯のあったかさが体全体を包み込んできて、思わず声が出る。
「気持ちよさそうだね。お風呂好きなん?」
千夜一夜が、声をかけてくる。
「うん。大好き」
肩まで浸かって、じんわりとお湯の温もりが体に染み込んでいくのがたまらなく気持ちいい。
そのまま、ゆっくりと無言でお湯を楽しんだ。
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