閑話1 ぱっと見不審者の上司
近衛部隊長(騎士で一番偉い)直々に極秘命令を通達され、自分たち特3隊はある施設へと向かった。
探知でわかった事だけど、その施設自体は衛兵すら置いてなかった。おかげですぐに鎮圧する事が出来た。だけど。その後、七夜と自分が隊長に呼ばれた。これはその時の出来事。
「賀茂川、さん?」
七夜がその男の人へと声をかける。聞けば、その人ーー賀茂川官九郎は隊長の親友らしい。七夜は学生時代の写真を見せてもらって知っていたとか。でも、ここにいるということはおそらく。
「千夜一夜。こいつの連行を頼む」
やっぱり、そういうことなんだろう。
「了解……」
七夜も察していたのか、何も聞くことなく連れて行く。そして、2人の姿が見えなくなった頃。
「……やっぱり俺はダメだな」
「本当」
「うぐ。やっぱりか」
「本当だからしょうがない。……後、向き合う」
指令にあった『身寄りのない子供を引き取り、人体実験をして人間兵器を製作している』という情報からして、この施設の人間は全員が極刑になるだろう。隊長はそこに親友を送るという行為にまだ迷いがある。だからこそ、彼が一番信用し、しっかりと送り届けられるだろう七夜に任せた。
だけど。
「このままじゃ、後悔する」
「……わかってる」
隊長が逃げていようがお構いなしに世界は回る。だからこそ、悔いのないように。
「でも、手錠も掛けない、いただけない」
看過できない点を注意すると、隊長は慌てて。
「それは、まあ掛けづらかったのもあるんだが……なんだ。あの子たちに見せたくなかったんだよ」
そう言って指差したのは部屋の隅。そこには、2人の少女が静かに眠っていた。
1人は、亜麻色の髪の少女。ミディアムとロングの中間くらいの長さの髪に、何故か同じ色の犬耳がついている。また下の方には尻尾がついていて、垂直にパタパタと揺れている。
もう1人は、黒髪の少女。身長と同じくらいのロングヘアを後ろ側のラビットと横のレギュラーの位置でフォーサイドアップ? に留めてある。時折、ちらりと舌を覗かせている。
これだけを見れば、ちょっと変わっているが普通の少女たちだろう。だけど、触った瞬間。血管に流れる魔力が通常と大きく異なるのに気づく。むしろこれは。
「この子たち、そういうこと?」
「ああ……」
急速に理解する。なぜこの依頼がこの特3隊に、様々な理由で家族にすら忌み嫌われてきた者の集まりである特3隊にきたのかを。
「二重。この子たちが怪我などをしていないか調べた後、そっと運んでやってくれ」
「ん。了解」
自分の水の魔術なら未知の人体だろうと、魔力の流れでなんとなくはわかる。それに、特に自分は怪力だから子供2人だろうと運べる。だから呼ばれたのだろう。
万全を期すため、もう一度彼女たちに触り魔力の流れを調べ始める。……すやすやと眠っているその体躯には、これからの重い運命がのしかかっているのだろう。
子供特有の高い体温を感じつつ。自分たちがこれからのために何かできないか、考えを巡らせた。
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