親愛なる僕達。

有沢 木蓮

第1話

俺達は、いつの間にか隣に居た。

まるでそうあることを望まれたかのように、いつの間にか震える体を暖めるように、寄り添っていた。























俺達が初めて会ったのは、まだ暖かい陽射しの刺さらない、冷えた夜だったのだろう。裏路地の濡れた地面と肌の温度を掠めとる風は、まだ幼かった俺達の体温を吸い取り、奪い、死へと引きずり込まんとばかりに容赦なく脆い体を弱らせた。そこに神父様__今の父さんが通りかからなければ、きっと俺達は我慢出来ず糞でも垂れながら、ガリガリに細り、弱りきってのたれ死んでいたのだろう。




ヴァネルパ王国 ガルディア区


彼等の運命の分岐点であるあの冷たい路地裏から、はや十年の年月が経った頃、彼等はここにあるかなり立派な教会にいた。

教会の主たる神父はベルメイと呼ばれる心優しい男であり、現在の齢は48、目が覚めるような爽やかな青空を写したような真っ青の瞳を持ち、周りからも深い深い信頼を得ていた。

そんな彼の可愛い息子達は今日、旅立ちの日を迎える。



ここヴァネルパでは、齢16の成人の日を迎えると同時に、供達は装備を揃えて世界を見て回る義務がある。可愛い子には旅をさせよという文字通りの躾をするのだ。



旅立つ息子の名は

『藍髪のリェンヌ』

『朱髪のエイベル』


リェンヌは杖を背に携え、エイベルは大剣を腰に下げ神父に向かい直る。父も同然の神父との暫しの別れを惜しむように、別れたくないと言わんばかりに、2人は神父の大きな胸へ飛び込み、彼の同じ程の高さの肩を抱いた。



「いってらっしゃい、帰ってきたら野菜のスープをまた作ってあげようね。」



彼らが旅立ちの際に聞いた言葉は、彼等の旅の始まりに投げかけた言葉はそれだけだった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

親愛なる僕達。 有沢 木蓮 @Magnolia_flowers

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ