第15話 スコップを手に全機出撃
カテリナさんが言っていた穴掘りの意味がやっと分かった。
砂嵐が去った時、ヴィオレの船体は半分ほど砂礫に埋もれていたのだ。
そんな訳だから、
ちゃんと、アリス用のスコップまで用意されていたのには驚いたけどね。
そんなアリス用スコップの倍の大きさもあるスコップを使って、アレクが黙々と
ベラスコは「巨獣が来ないかな」なんて物騒なことを言いながらも黙々とスコップを使っている。
まぁ、分らなくはない。でも、今来襲されたらとんでもないことになりそうだ。
上空を円盤機が周回してるから、少しは安心できる。
それでも、こんなところを急襲されら酷いことになるのは目に見えている。
俺達を襲うのが、巨獣だけとは限らないのだ。盗賊団はかなり厄介な存在だとアレクが常々教えてくれてる。
誰も、文句を言わずにひたすら船体の砂礫をスコップで掘り起こしているのは、俺と同じ思いに違いない。
『まだまだ掛かりますよ。それほど反重力装置の出力が無いんでしょうか?』
「たぶんね。上空の円盤機にしても浮かべるだけの出力だ。移動は円盤の円周部についてるローター駆動だからな。アリスみたいに重力勾配を操るまでの技術はないんだと思うな」
『でしょうね。それでも、外宇宙探査をしようと言うんですから驚きです』
この太陽系には、この惑星以外に居住可能な惑星が2つある。かなり前から進出したらしく政府まで出来ているようだ。
更に外宇宙へと足を伸ばそうとしているのだが、それほど急がなくても良さそうな気がするな。
3つの惑星全ての人間を合計しても50億に満たないんだから……。
そんな事をアリスと話しながらもせっせと船体を掘っている。合計24体の
ドミニクの穴掘り指令が俺達に降りてから数時間……、どうにかヴィオレは砂嵐で埋もれた船体を浮かす事が出来た。
「いや~酷い目にあったな」
休憩室に備え付けられたシャワールームから出て来たアレクが俺に告げたけど……。
連れの2人が微笑んでるところを見ると、その原因が穴掘りか、それともシャワーブースの中かは定かでない。
「これで、また新しい鉱脈が見付かると良いんですけどね」
アイスコーヒーをアレクに渡すと、喉を鳴らして一気に飲み干した。
「そうは上手くいかんだろう。だが、しばらくは出番がないと良いがな」
「でも、砂嵐には巨獣が住むと聞きましたよ」
ベラスコがアレクの言葉に続ける。
「それは、言い伝えだ。強度5程の砂嵐を巨獣の襲来に例えたものだ」
寡黙なカリオンがベラスコに教えている。
カリオンなりに指導しているつもりなんだろうな。
「ところで、どこに向かってるの?」
サンドラの言葉にシレインがスクリーンを展開して船の航跡を確認している。
ベラスコはアレクの言い付けで、俺達に炭酸飲料を渡してくれた。
「どうやら、北西ね。戦鬼を発掘した場所は当に過ぎてるわ。このまま進めば北緯50度を5日も経たずに越えるわ」
「やはりドミニクは向かう気だな」
俺達は無言でスクリーンを眺めながら、冷たい炭酸飲料を飲んだ。
部屋に戻ると装甲シャッターを開けて外の風景をぼんやりと眺める。
何も無い荒地が続いているが、たまに潅木の林が姿を現す。
もう少し西に向かうと大河があるようだから、地下水が少しはあるのだろう。
だが、水があれば森がある。そこは獣の住処だ。それを狙う巨獣が徘徊することも十分に考えられる。
円盤機の導入は先見の明があったな。
その性能を信じて北緯50度を超えるのだろう。
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待機所で前方に広がる緑を皆で眺めている。
どうやら、大河に遭遇したらしい。レイベル河と言う名前は、たぶん発見者からとったものに違いない。
その河の両岸に南北に森が広がっている。
フレイヤ達はブリッジの最上階で、さぞかし緊張してるだろう。
円盤機が南北と進行方向100km付近を監視してるのだが、燃料の関係でそろそろ帰還してくるころだ。
円盤機や
これからのことを考えれば、安全な川岸で水を汲み上げることになるだろうな。
森が近付くにつれて、ヴィオラの進行方向が川下に向いていく。
河原でも見つけたのかもしれない。
一時停止するなら、周囲が開けている場所が理想的だ。
やがて、大河を目の前にしてヴィオラは停止した。南北2kmを越える広大な河原だ。
ここなら周囲が良く見通せる。
『艦内通報。現状よりイエローⅡに以降する。繰り返す……』
「どうやら、巨獣襲来を想定してるようだ。さっさとコンバットスーツに着替えるぞ!」
アレクの指示で俺達は男女別の更衣室に入り、素早く着替えを済ませたところで、再びタバコを楽しみながら前方に広がる大河の流れに見入った。
ヴィオラの下の方では、獣機が《コング》が太いホースを川岸に運んでいる。
あれで水を吸い上げるんだろうけど、魚が入ってるなんて事はないのかな?
1時間程で作業が終了し、再び
それが済むと、不意に船体が浮き上がったのを感じたと思ったら、次の瞬間には川の中にヴィオラがゆっくりと進みはじめた。
多脚を使って水上を走れるみたいだな。
30分程掛けて対岸に着くと、再び荒地を進み始める。
「大河にも油断は禁物だ。河の水深を調査したんだろうが、20mもあると、水棲の巨獣にも注意が必要なんだ。鳥のような首をしていて嘴には鋭い歯が付いている。動く物は何でも食いつくぞ。そして水の中に引きづり込む。獣機を咥えて行ったのを見たことがある。もちろん獣機の騎士はあの世行きだ」
「獣機の機体は厚さ20mmのクロマリン合金ですよ!」
「それ位は簡単に歯で穴があく。あいつ等の牙は重ゲルナマル鋼で形成されているんだ」
巨獣は単に大きいだけではない。
其の生態系において鉱石を体内に取り入れ体の皮膚や骨そして牙や爪を強化している。本当なら重金属中毒になりそうだけど、奴等はそれを吸収して自らの体に同化させることが出来るのだ
「覚えて置けよ。戦機の超レズナン合金でさえ、巨獣の爪は切り裂くし、角は刺さるんだ」
「覚えておきます!」
そう答えたベラスコの顔は若干青ざめていたぞ。
1時間程して、艦内放送がイエローⅡを解除したところで皆で夕食を取り、俺は自室へと引き上げることにした。
ビール缶を持ってソファーに寝転びながらスクリーンを展開する。
スクリーンでは今日、渡河した下流で円盤機が移した水棲巨獣の姿を、ネコ族の少女とカテリナさんが解説している。
河の大きさと比べると数十mはあるだろう。下流80kmで確認されたらしい。これが俺達をイエローⅡで待機させた原因なのかも知れない。
タバコを1本吸い終わる頃に、フレイヤが帰ってきた。
砂嵐と渡河ではだいぶ気を揉んだろう。
冷蔵庫からビールを取り出してドサリと俺の頭の直ぐ横に腰を下ろす。
俺の頭を持ち上げて俺の傍ににじり寄ると、自分の膝の上に俺の頭を置いた。
「今日は疲れたろ?」
「疲れたなんてものじゃなかったわ。でも、おかげで火器管制の連携が出来るようになったのは嬉しいところね。円盤機の情報も、ドミニクと同じタイミングで確認出来るようになったからだいぶ楽になったわ。それでも緊張の連続よ」
そう言って、ビールで喉を鳴らす。
たぶん夕食は終えたんだろうな。すると、次の当直は16時間後になる。
ゆっくりと休むのだろう。精神的な疲れは睡眠が一番だからな。
「あっ、これこれ。ヴィオレまで50km位に近付いたのよ。円盤機の銃撃で退散したけど、30mmって少しは役に立つみたいね。25mmだと全く気にしなかったもの」
「30mmの徹鋼弾はそれなりに威力はあるだろう? 25mmより重量はあるし、弾速も2割増しだ」
「弾速の方かもね。獣機の持つ30mmは、ヴィオレの30mm連装砲の6割程度の弾速だから威力がないのかも知れないわ。もう少し何とかなれば良いんだけど……」
かなり、無理な要求だな。
発射速度を上げれば、その反動が持ち手に跳ね返る。レールガンならかなり反動を抑えられるのだが、その弾速を得るエナジーはかなり大きい。
獣機の背中にある小型タービンエンジンではその負荷に耐えられない。
それに、レールガンの制御技術は軍が機密扱いにしているらしい。ヴィオレのリアクターなら何とかなると思うんだけどね。
だが、このレールガンをアリスは標準装備として持っていたのだ。
直径40mm、長さ100mmの徹鋼弾を最大秒速6kmで射出する事が出来る。
初めて、その威力を目にしたドミニクが、慌ててダミーに40mmライフル砲をベレッドじいさんに作らせたのを覚えてる。
使うのは、皆が見てない場所で……。
そう言われたけど、可能な限り使わずに済ませたいものだ。
「やはり、このまま北緯50度を越えるのかな?」
「それは、ドミニクに聞いた方が良いわ。さぁ、シャワーを浴びて、もう休みましょう」
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次の日、目を覚ますとヴィオレが停まっていた。
慌てて、スクリーンを開くと、どうやら鉱石採取の最中らしい。
船内通報は特に無いから、今のところ問題なく採取が進んでいるのだろう。
「次の当直まで4時間あるわ。ヴィオレの出発は当直時間になりそうね」
「問題は、何がどれだけって事だな。これでパージが2つは満杯になるんじゃないかな。後3つだから帰港するのもそれほど先ではないと思うけど」
朝食には早いから、コーヒーを飲みながら採掘作業を見守ることにした。
1時間程で作業が終了し、掘削機械を収容しながら
そろそろ出発だな。
俺達も部屋を出て、食堂に向かった。
長い通路を歩いていると、ヴィオラが浮上してゆっくりと動き出したのが分る。
まだ、北西に向かって動き出したのだろうか?
何時頃から採取を始めたのか分らないが、これでカーゴの4割に鉱石が積載された。残り6割、……何が採取できるかは分らないが、価値の高い鉱石であることを祈るばかりだ。
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