【小説談義】ダンダダン、7話が作劇の参考になる!
泣ける!と話題のダンダダン7話ですが、昨日ようやく視聴しました。そんでべろべろ泣きました! 泣きつつもその作劇とかは、しっかりと観察させてもらいました。
もう前評判で、アクサラ編は最初の峠であるという話は聞いていたんで、めっちゃ期待しながら観てましたよ。そんでやっぱ凄かった。作劇がね、なんか原作とちょっと変えてある部分とかもあったそうで、そこら辺も視聴後に解説動画なんかでしっかりチェックさせてもらってね、漫画を動画に変換するにあたり、より効果的にする為に順序を入れ替えたり、セリフを省いたり、ということをしてあったそうです。
漫画におけるメタ表現のちょこっとしたセリフを省いたというのは、漫画だったら割と読者の空間認識の範疇だから大丈夫だったりするところが、動画になると自律したひとつのセリフとして、他のセリフと同格にならざるをえない、ていう厄介な特性があるから、テンポを崩すことを恐れてあえてそのセリフを削除した、といったところかな、と理解しました。
真面目で重要なシーンに、オカルンがちょっと茶々を入れるようなセリフが一つ挟まってたらしいんですね、原作漫画では。それがアニメだと削られていた。それは、紙面だとそのセリフがメタ表現であることは空間認識的な理解ですぐ解るんだけど、アニメではそういう手法が使えないから、あえてそのセリフを消すことで、雰囲気を優先した、ということが窺えるってことです。
こういう良質の原作を良質のアニメスタジオが手掛けてくれると、その変換の様相を解析するだけで創作者としては勉強になりますなぁ。特に今はYouTubeとかでも他の解析好きの有志が動画を出してくれてるんで、それを観ながらだと、他人の感覚とか解釈とかまで知れて、何重にもオイシイわけですよ。(笑
んで、私はもう一つ、気付いたコトがあるんだけど、愛羅ちゃんとモモちゃんの二人とオカルンと視聴者の二者では、理解度が違うんだというところの表現ですね、これが突出して素晴らしいと感じましたね。
アクサラの過去は、映像的にも断片的な見せ方をしていて、詳細は解らないわけですよ。視聴者的にはぜんぜん解らない。あの男達が何者で、あの母子がどういう素性で、とかさっぱり解んない。だから実際のところは雰囲気だけで泣かされてるわけですよ、勝手な推測で視聴者は泣いてる。
だけども、ほら、あの場面、終始オカルンは戸惑った感じではいても、泣いてはいないんですよ。だけど愛羅ちゃんとモモちゃんは号泣状態。でもそれは、二人はオーラを通じて直接で本人と繋がったから、本当にアクサラの過去に何があったかの詳細までを知っているのは、あの二人だけなんですよね。だから二人は号泣しちゃう。
オカルンはそれどころじゃないから泣くまではいかないし、視聴者はどっちかと言うと貰い泣き状態。なんとなくの推論で泣いてしまう、という仕掛けになってる。想像が掻き立てられて、その悲惨さを余すことなく推測出来てしまう、その材料はぜんぶ揃っているから、だから視聴者は想像だけで泣けてしまう、と。
ものすごい計算の上に成り立っているシーンだなぁ、と感心しつつ、やっぱアクサラの過去が悲しすぎて、べろべろに泣いてましたねぇ。(笑
モモちゃんのことを「つっぱり娘」と呼ぶあたりで、彼女が昭和の70年80年代あたりに生きていたことを明白にしてるし、その時代なら清掃員とか、職業によっては履歴書とか要らなかったことも示唆してます。あとコンビニバイトとかが出たことでも、それがポピュラーだったのは80年後期~90年あたりとわかる。あの一瞬で昭和の頃の女性だと解るんですわ。平成あたりになると身元がしっかりしてないと雇われなくなっていくから。
これがなんで昭和が重要かと言えば、その当時なら家庭内暴力とかで、酷い夫から逃げているという理由が考えられることですわ。作劇上で大事になるのは子供が奪われることなので。あの時代なら当然ありうるんですわ。
あの二人の男を借金取りと解釈してる人が多いようですが、日本で他人が子供攫うのはどの時代でもアウトなんですが、実父だったらありえるんすわ。そんで嫁さんを働かせてカネをむしり取る寄生虫みたいなロクデナシ男も、創作上でのアルアルなネタというだけでなく、現実にあるポピュラーな現象と認識されてました。
今、令和になって若い人たちの間ではあんまり想像が付かないのかなぁ?
シーンに説得力を持たせるため、アクサラの娘が愛羅ちゃんとかと同年代である必要もないので、ずっと彼女が連れ去られた娘を想ってフラフラしていたことが解るのが、アニメオリジナルなあのボロボロの姿での愛羅ちゃんとの出会いですかね。
原作漫画ではその時はすでにあのドレスの状態だったそうですが、その場合でも解釈はどうとでも付くんで。
いや、凄い作劇でした。あれだけ感情移入させられた上で、実はアクサラの過去について詳細は何も描かれていない、ていうね。想像して泣いてたわけです、視聴者は。だからこそ、ものすごく心に残った。
いやいや、ほんと、ダンダダン、凄いなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます