【弥助問題】弥助の何が謎なのかといえば「ぜんぶ」。

 弥助の歴史的な事実として一番信憑性持たれてる説は、以下の通り。


「彼は信長に謁見した際に気に入られ、弥助という名を与えられ、短刀一振りを与えられ、扶持と住居を与えられた。荷物持ちをすることもあった。本能寺の変が起きた際には、信長の嫡男信忠の滞留した二条新御所にて奮戦するも、説得に応じて投降、キリスト教教会に送り返されたが後の消息は不明。」


 これだけなんだよね。中間衆だったのではないか、というのも説話の一つ。私もこれが有力かなとは思うけど、明言された史料が存在しない以上は「説」から出ない。


「説」から出ない、てことがものすごく重要で、今回の歴史改竄未遂事件っていうのは本当、文明人としてあるまじき行動なんだけども、関わった人々はまったく反省の色がなく、未開の地に住む野蛮人かのようですよ。


 ただ、この中間の仕事ってのは本来、下男とかと同じようなもので、そうすると当然なんだけども殿様クラスの要人の傍にはいないんだよ。信長の細々した生活のお世話をする役目は「小姓」という高位の武家しかなれない職があったから。高位の武家出身でないと通常はなれないと解ってるんで、当然、小姓ではないのね。弥助。


 ここで話が面倒になるのは、弥助の位というのを明言した史料は存在しないこと、仕事内容としては「信長の荷物持ちをしたりもした」という一文の存在で、謁見が許される身分相応と考えられること、ていう、ヘンテコリンな立場なんだわ。


 後々に豊臣秀吉がこの武家の身分制度の改革とも言えることを行っているところからみても、本当に当時に身分制は有って無いようなモノで、グッチャグチャだったことも読み取れるので、だから長らく専門家の間では、この弥助については「解らん」てしか答えられなかったらしいんだわ。


 上位の武家では絶対にないんだけどもさ。下位の、どこに位置してたのかも解らんっていうさ。表向きというか公的にはやっぱ「中間衆」に入れてたんじゃないのかなぁとは思うんだけどね。短刀を与えてるし。


 普通に考えても、他の階層には入れようがないもんねぇ。日本語も不自由だし、刀を扱えないのは当然だし、そうなると戦闘必須の兵役として組み入れることも出来んし、かと言って信長はしょっちゅう連れ回しては自慢したいわけだし?て言う。(笑


 信長の傍近くにまで近寄ることを許されるというところで、どこの身分になってたのかってのが矛盾含みになってきちゃうんだよね… 

「ほ、ほら、身分制と言ってもグチャグチャだったから…(汗」て感じになっちゃうんだよね。ほんと、状況分析進めるごとに不明瞭になる弥助の身分よ。


 水に濡れた黒人さんの肌というのは、やっぱ格別の趣があると思うんよ、これは個人的な感想だけどさ。で、弥助ってのは本当に真っ黒な方の黒人さんだったらしいから、何かにつけて水浴びさせられてたのかなぁ、なんて思ったりするわ。(笑


 上半身をはだけさせて連れ回していたとかの記録もあるんで、信長が特に彼の黒い肌色を気に入っていたのはまぁ、疑いようがないなと思うしねぇ。


 殿様である信長の荷物を持ってその後ろを付いて回る役目って、本来は小姓レベルの付き人がやる仕事と決まっていて、だけど当時は身分制ってのが割とグチャグチャになってたっぽいから、だから「解らん」てことなんよな。


 明言した史料は存在しないんだ!

 そんで、通常は小姓のやる仕事をしてた姿は記述されてるんだ!

 でも公式に与えられた品々は最下層の士族階級扱いなんだ!


 後世に混乱の種を残すなや、ノッブ!!(笑




 中間ってのは武家には数えないのよ。そのもの、書いて字の如しって奴。完全な領民平民の身分と、足軽以上の武家との、ちょうど中間の立場ね。だけど、帯刀を許されているんで、ここと平民の身分とはもっと明確に離れてんのよ。下々の者は武家屋敷に武器携帯して侵入とか出来ねーもん、て。時代によってこの境も変わるしぃ。


 ここが重要なんよ、武器を携帯して武家屋敷に入れる身分ってことよ。



 安土城建てた時もお城見学ツアーやって拝観料取ってたくらいの殿様だから、そりゃ珍しい黒人家来の弥助のこと、連れ回して自慢したかったに違いないんだわ。(笑


 でも、傍に近寄っていい身分って、限られていて、それがこの当時にどこまでが該当したのかってトコも、当時の文化風習とか前例とかぜんぶ照合した上でないと解らんのよね。型破りの殿様だったノッブだとそれもアテにならんし…て。


 お手上げッスよ、ほんと。




 で、現代においての問題点ってのは、このややこしい状況説明ってのを、日本人でさえ一回聞いただけじゃ解んねーに決まってるよーなこの複雑な「弥助の身分」についての解説ってのを、海外の人らが理解出来んのか!出来るわけねーだろ!てことなんだよね。


 もうね、「日本人より我々の方が日本の歴史に詳しい」なんて言うコメが大量に涌いてんのを見て、脱力しちゃったよ。英語だらけのコメ欄があったら、それらをグーグル翻訳でポチして読んでみたらいいよ。根拠のない自信に満ちあふれた人々だらけだから。(笑


 この騒動が起きる前の「弥助はSAMURAIだったか?」の回答は「解らん」なの。それが正解なの。誰もかれもがよー。「解らん」が正解だってのにねじ曲げんな。



 SAMURAIが、侍も武士も武家も士族も、ぜんぶごちゃ混ぜにしてるのに英語圏でしか話に入ってこれない人間にこの弥助の難解な立ち位置は理解出来るわけがないんだよ。日本語の古文をマスターしてから出直してこい、てトコだよ。

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