【セクシー田中さん】出版・TV業界の構造に問題がある。

 商売は、「文化を創造して育んでいき、大きく花開かせることで利益を生む」というものと、「その時隆盛な文化に相乗り、利便性を追求することで利益を生む」というものと、「その時隆盛な文化に便乗、多売を仕掛けて売り抜くことで利益を生む」がある。ケースバイケースでこれを使い分ける。


 オリジナル作品というものはすべて一番目のケースに分類して、二次派生の作品はだいたい二番目か三番目のケースになる。二番、三番は、一番無くして成立しないのだから、経営理念で一番大事にするべきが一番で、ここを蔑ろに、特に三番に特化しだしたらジリ貧に陥るのは火を見るより明らかだったりする。弾丸が尽きる状態。


 アメコミが衰退してる理由も割とここが強くて、弾丸切れだよね、あそこ。


 バットマンとか既存の作品に頼りすぎて「まったく新しい作品」に力を注いでこなかったから、オールドヒーローたちが第一線から引退できなくなってる。


 新規の看板作品を育てるには、「当たるまでの無駄玉大量消費」と「育てる為の大量投資」と「広い層への大量広報」が必要で、昭和頃までの「ネット以前の時代」だとこれを成し遂げる手法に『読者の囲い込み』が組まれていて、それで経費を抑えてたんだよね。映画とかの末端になると経費は億単位だからコケられないんだもん。


 だから今、新しいビジネスモデルを探して四苦八苦してて、例えばカクヨムとかなろうとかのSNSは「当たるまでの無駄玉大量消費」を出来る限り安上がりにやろうという試みだと思うし、最近は「育てる為の大量投資」もSNSに丸投げてる感じ。


 これがさ、かつては週刊雑誌の連載とかだったんだよね。投資で、身銭切りながら大人気作品に牽引してもらって部数売りつつ新人の育成と宣伝もしてた。


 でも、自分らのコントロールを離れる結果になっちゃったんで、「多売で売り抜ける」が厳しくなったんだよね。多様性で皆の嗜好がバラけちゃったし。これに対応するために場所を取らないデジタル移行とかもやってるんじゃないかなという読み。


 つまり出版社は三番目の「多売で売り抜ける」も実現できてんのよな。



 一作品作る時のコストの違いがね、小説・漫画はほら、シロウトを発掘するとかも合わせてかなりコストを抑えられるようになったけど、映画とドラマはね、単価がデカいから、もう失敗が許されないってことになってきてて。


 そんでさ、脚本家協会が勘違いしてんなぁと思う一番のことは、一番目なんだよ。


 誰でも育てりゃ大輪の花を咲かせるってわけじゃねぇ、てトコ。


 出版社はさ、大輪の花だけじゃなく、小粒の花でも、それなりに売れば利益に出来るっていうビジネスモデルを構築してるけど、TV業界は違うんだよね。大輪の花を咲かせる種しか扱えないのよ。余力がないし、そんな構造もしてないってトコよ。


 だから原作を扱って作る時に、大きくヒット飛ばしてる作品がターゲットになるんだけど、それを練習代わりに新人とかの脚本家に当てるわけにいかないんだよね。そうだよね? 力量から言っても失敗の可能性のが高い賭けには乗れない。単価が高すぎる。


 で、実績ある脚本家に任せようとするんだけど、先に書いたように出版業と違ってこっちは一番目がクリアされてないんだよ。大量の土砂を篩に掛けて一粒二粒選り出してくるみたいなことは出来ないから、そもそもで実績がある脚本家ってのが少ないってことになってると思う。


 するとどうなるかと言うと、「ジャンルが違うけど他に居ないから仕方ない」てことが起きるんじゃないかなと。


 で、『セクシー田中さん』のケースだと、一見でさ、恋愛ジャンルに出来そうだなとプロデューサーは思ったんだろう。恋愛ジャンルの脚本家なら何人か候補がいる、とかでしょう。局の上層部には「実績ある原作に実績ある脚本と監督をつけろ、」とか言われてるでしょう、そりゃそうしないと失礼でもあるし。


 でも脚本家の候補者は少ないんだろう、たぶんね。


 行き違いもあったと思うんだよね、価値観が正反対だろうと思う。原作者の狙いは「恋愛モノの恋愛テンプレ外し」だったのに、脚本家は「恋愛テンプレ中心にワンポイントで差別化」って感じのスタンスだったとかじゃないかな、て。


 テンプレってさ、読者が好む要素の煮こごりなんだから、入れとくのはファンサで成立すんのよね。ただ、原作者はそれを「あえて外す」ことで狙ってることがあったんだろうよ。


 そんでさ、たぶんだけどこれ、ドラマでそこをテンプレにされてもさ、キャラをテンプレにされてもさ、本来だったら死ぬほどのことじゃなかったと思う。あんなに自分で苦労を背負い込んでオーバーワークで脚本の書き直しなんかしなかったろうと。自分の作品とはいえ「ドラマはベツモノで観てもらえれば、」で笑って済ませた方が楽じゃない、普通言わなくても視聴者は弁えてるもんだし。


 テンプレってそれが好きな層ってすごく大きいんだよ。ボリュームゾーンのひとつだから。だから、それを敢えて外すとさ、売り上げ的には「ど真ん中」の作品に及ばないのも知ってたと思うんだよ。諺でも言うじゃん、凡人は凡作を好むみたいな?なんかそういうのあるのよな、一番売れるのは凡作、とかいう言葉。


 だから、単価が高いドラマ市場でテンプレのど真ん中狙いって、かなり正解なんだよね。その路線で成功してきた自負もあるし、ファンも付いてたと思うし。ボリュームゾーンど真ん中が私の嗜好ってユーザーのが実のところ多いわけでな。


 だけどさ、ボリュームゾーンってのはボリュームって言うくらいだから、作品が溢れてんのよ。そんだけ好む人が多いんだから山ほど作られるわけで、そうすると希少性とかを軸にした新規性とか? あくまで質で測る印象度とか? テーマ性とか? そういう辺りとは相容れないことになってくんのよ、ボリュームゾーンは「陳腐」さが目立つから。その陳腐さが安心感とかでボリュームゾーンを底支えしてるし。


 ファンサで言えばチープでもいいだろが高尚とか煩ぇよ問題で対立する二人だよ。


 また、原作者が狙っていたのはこの「陳腐さ」の角度変えることで「気付き」を読者にもたらすとか、そういうのが軸になってただろうな、てのも経緯説明の長文に滲んでたし。ほんと真逆なんだよね、運命の悪戯かってくらい。


 でもさ、それだって連載で継続していけないわけじゃないじゃない?


 死ぬほどの絶望に行くにはちょっとな、と思うんだよ。いくら批評家周りでバッシングが起きていたとしても。まだちょっと理由として弱いと思う。木村花さんの時はトレンドに載るくらいで、今の脚本家さんレベルのバッシングだったじゃん。


 だったら、何が絶望に追い込んだんだろう、てなると…


「経緯を説明したnoteを割とすぐに削除した」のはなんで?


 あれ、出版社の上層部だろ? 



 圧力に屈した? 脚本家協会の座談会もさ、あのタイミングで出したのって原作者先生の死を知らなかったんだろうと思える。出版社がnote削除させたし、ダメ押ししとくか、的なことでネットに載せたんだろうと思ってる。


 てことは、出版社はぜんぶ原作者に被せるってことを決めて連絡してたってことだよ。腑に落ちないんだけど、小学館からしたら脚本家一人、プロデューサー一人燃えたくらいでどってことないだろうに、なんで庇ったんだろう?てこと。


 あれかなぁ。ジャンプとか競合相手のトコに比べると立場が弱い、とか。


 そもそもでさ、原作クラッシャーとか言われてる脚本家さんなんか、ジャンプだったら企画の時に通らないよなぁ。力関係かぁ。…世知辛いねぇ。

 (となるとやっぱ悪いのは局と脚本家協会か)




 一作当たればすごい儲けが出て、それでまた売れない他の作品を出す体力にする、ていうその構造もやっぱ問題抱えてるってことなんだろうかねぇ。


 に、しても出版社はさ、それでなくても稀少な大輪種の花をみすみす枯らすなんてさ、今ほんとにお通夜状態なんだろうなと思ってる。


 改善策ってのひとつ考えたんだけどさ。


 企業理念に「メディアミックスの各媒体をすべて別モノと心得る」を徹底することかなと思う。原作者の意向がどうこうより、ドラマや映画を観た新規ファンが大量に増えたとしても、そのファンの意向は無視します、くらいの宣言を各先生たちにした方がいいよ。そのファンはメディアミックスした他の媒体のファンで、原作のファンじゃないからカウントしません、くらいのスタンスで行った方がいいと思うよ。


 読者のご意見とか大事にするのはいいけど、読者かどうかの見極めが必要になってきた時代だし。(宇崎ちゃん事件以降のオタvsツイフェミの時で露見したでしょ)


 意見は積極的に言ってくるけど売り上げには一切結びつかない「疑読者」を認識してください、とお願いしときます。


 ここを見極めて真の読者と疑読者とを切り分けて、作者さんたちに宣誓しておくくらいでないと、もう信頼回復とか出来なくなってるかもだよね。


 それと、構造的な改善で、ドラマに頼らなくてもいいようにアニメ制作会社に力を入れていけば局の圧力に屈さなくてもよくなる未来が来ると思うの。




 読者でもないのに読者みたいな顔して意見言ってくる輩…あ、私だ。(笑


 こういうヤツの言う言葉は星占いにも劣るので、気にしないことが大事ですな。



追記:

「しろくまカフェ」の作者先生の情報も入ってきた。…なんなんだろうか、なんか既視感ある…


 この、「生み出す者」と仕事で組んだ時の「生み出せない者」の拗らせというか、変なプライドの昂ぶらせ方というか…


 なに? 打ちのめされて劣等感が刺激されるとか、そんなんでもあるの?(汗

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る