「ヘラストラトスの名声」問題

 重大な犯罪やテロルを起こすことで名声を得ようとする者に対して、メディアを通じて市民たちが「知る権利」を行使してしまうことに対する、司法理念の矛盾を指す問題。


 知る権利を優先すると、犯人の目的を達成してしまうというジレンマがある。


 ニュージーランドの首相は、その犯人の固有名称というか氏名を一切出さないと表明したが、根本的には何の解決にもなっていないと思う。犯人は、この事件が人の口に上るだけでそれを自身と重ねてしまえるからだ。


 これは、どうするべきなのか。


 私だったら、この犯人にはこう言ってしまいそうだ。


「人の噂も七十五日、半年も経たずにお前のことも事件のことも人々は忘れ果てて、今まで通りに笑って暮らす。犠牲者の遺族でさえ、いずれは前を向いてお前など忘れる。大事な人との楽しかった思い出だけを抱え直して生きていくのだ。刑務所に入ったお前を覚えておかねばならない人など一人もいない。データバンクの数字の一つになるだけだ。お前はそうして世界から忘れ去られて、この先も刑務所で生き続ける。もし出所できたらその時は、誰もお前を知らない世界で、今度こそは真面目に生きるよう努力しろよ?」


 でもこれ、被害者遺族には酷な言葉だから、犯人にしか聞かせられない。大事な人が死んだ事件なのに、人々はすぐ忘れてしまうだろうなんて、二度殺されるようなものだ。司法の理念とはやはり矛盾してしまう。


 ならばこうだ。


「お前の名は歴史に長く刻まれる。こんなカタチでしか存在を示せなかった、惨めで卑屈な人間として、人々に長く記憶される。お前は努力が嫌いな怠け者だ、お前の人生が上手く行かなかったのはお前のせいなのに、うぬぼれ屋で傲慢だから、自分の不幸は世界が悪いと嘯いて、世間になすりつけて逃げている情けない野郎だ。このことはニュースになったから、誰もがみんな知ってるぞ。」


 これも、人生が上手く行かないのはその人のせいと決めつけることは間違いだから、きっとその一点をもって犯人の心を切り裂くことは出来ない。完全な形で犯人の本心を暴き出し、その本音を真正面から正論で叩き潰してやることが、犯罪の成功を阻止することになるのだから、これもダメだね。


 犯罪者は嘘をつく。表面的に口にした動機などはタテマエだ。本当の動機はとても卑屈で情けなく、とうてい同情も共感もしてもらえない、失笑されるだけのようなものだから隠している。それを暴き出さねば、犯人の本当の目的が達成されてしまう。




 警察の皆さん…、


 こういうことをグダグダ考えていると、ネタをどうもありがとうございます、という不謹慎極まりない気持ちで頭が下がる…(台無し感




追記:


 ポリコレとかリベラルとかも、嘘つきだよね。キレイゴトで自分自身を着飾ったつもりになっている。誰かを見下したくて堪らないのは、よほど誇れるものが見つけられなかったからだろう。家族だとか平凡さだとか、宗教的なキレイゴトは些細な心の善を誇れなどと言うが、それが些細なことでしかないと思い上がっているから、もっと目に見えて派手で立派に見えるタテマエを求めていたんだろう。ささやかなもの以外は何も持っていないから。


 ポリコレとかリベラルだとかは、ただ叫んでいるだけで手に入る、とてもお手軽で簡単な「価値のあるモノ」だ。なんの努力も必要ない。解ったような顔をして、差別だ多様性だ叫んでクダ巻いていれば、すごく立派な人間になったような気持ちになれる。すごく手軽だ。


 誰かが叩き出したことの尻馬に乗って、一緒になってお題目代わりに差別だ多様性だ叫んで非難して、マニュアル通りの単語を適当に並べておけば、さも頭の良い人間であるような気持ちになれるんだ。


 誇れるものが何もないとか思っている自信喪失した人間は、自己防衛本能が過敏で被害者意識が強烈だ。自分を守りたいという想いを、時にヘンにこじらせる。


 ポリコレもリベラルもフェミも、みんな、自信喪失から自己防衛だけ妙に過敏に尖らせて、沢山の人がやっていて冒険しなくてもよさそうな、そんなちっぽけな「価値あるモノ」くらいしか手にする勇気が持てないんだろう。このくらいならバチは当たらない、おこがましくない、と自分をまだ縛っている。自信が無いから冒険も高望みも出来ないが、それでも自分に誇りを持ちたくて渇望した結果、というところか。



 少しばかり傲慢だが、「他に何か打ち込めることないの?」と言いたくなってしまうんだよな。普通は、個人的欲求の達成がまず先にあって、社会的欲求の達成はある程度自分の足元を固めてからだろう。自分のことが一段落して初めて周囲が見えるもんだ。だけど、自信喪失で初めから諦めの境地なら、一足飛びに周囲を見る。


 彼らが共通して他人の喜びを抑圧する方向に対して遠慮をしないのは、自分が抑圧されていて、それを誰も排除してくれない、当然と処されているという逆恨みのような背景があるからだろ?


 まるで復讐心みたいなものを感じるんだよな。


 彼らは、心持ちがファシストそのもので、弾圧主義者で、正義のために誰かの名誉をズタズタにして子孫を侮辱しても、まったく平気な、ひどく差別的な人間に見えるんだ。自分の陣営側は優遇されるのが当然で、敵対陣営はすべてを奪っても構わないと、そういう思想の消極的賛同者だよね。諦めの境地が消極的な賛同者にしたんだろう。仕方ない、と簡単に弾圧を許可したんだ。


 弾圧だと指摘されても引かないのは、心では「やむなし」として認めるからだし。


 弾圧肯定論者であり、ファシストであり、差別主義者であり…



 少しくらい優遇されてもいい、不公平なんだから、とかと決めつけた感情を持っているから、逆差別な不公平を指摘されても強引に押しつけようとするんだろ。自信喪失から被害妄想をこじらせて、ただのマイナス感情なんだから我慢したらどうだ?と言われると反発する。皆が融通しあって遠慮しあっているからお互い様なんだ、と言われても頑なに認めない。それ、被害妄想としか言いようがないと思うんだ。


「(私と同じように)傷付いている人がいるのよ!」と叫んで、反対側に居る人の心の傷は完全に無視する。たぶん、相手の顔をまともに見ることが出来ないからだ。本当は自信喪失で被害妄想で自分を弱いと暗示してるから。

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