「セクハラ」という単語に対して、現代、「その程度のことをガタガタ言うなよ…」みたいに眉を潜める感覚があるって人はどのくらい居るだろうか？

　これ、ほんの10年20年前だと大半の人にとって聞き慣れない単語であり、過剰ではないかと非難された概念だったよね。今じゃ当たり前の価値観だけど。

　この延長が「萌え絵批判」だろう。

　今でこそ言われる側が違和感覚える段階に過ぎないが、いずれ当たり前の価値観として定着するかも知れない。何が問題であるのか、て部分。

　これ、たぶんだけど、オタク＝キモい、の方程式の「代数X」に入るヤツではないかという気付きもあった。何が問題なのかとちょいちょい聞かれるが、ようは「セクハラ表現」なのだろう……

　これを描くヤツも、擁護するヤツも、その界隈も、ようするに「セクハラ界隈」と認定されているってことだわ。言語化が追いついてないだけで。痴漢界隈と同類。

　あれが何の記号なのかと言えば、「ええ乳してんな～」であるよね。うん。

「アイキャッチレベルが胸に来るような構図」という表現手法は、その意図に「ええ乳してんな～」があって、乳を主体に、乳を描きたいという作為の現れだということなんだろうね。何が悪いの？とか言うだろう。絵画の世界じゃ、裸とか性器とか平気で描くわけで、今さらだし。

　ミロのヴィーナスに代表されるあの辺の彫刻の、服地のドレープはリアルだとあんな風にはならんわけで、わざわざモデルが水被って肌にピタッてなるよーにして描いたとかいう逸話があるくらいだからして。ある種の強調手法ってだけのはずなんだよね、本来は。あるいは、描きたいテーマがソレってだけ。

　ところが、萌え絵のケースだけは批判され、「キモい」のレッテルを貼ってよいものと認知される。これこそ差別、とはわたしは言わない。（笑

　現代は割と「謂われのない差別」とかいうもんはほとんど駆逐されまくってて、残っているのは「謂われがある差別」で、何らか原因なり一見では当然と見える理由を持つ差別っていう、厄介なヤツしか残ってないと観てんのよ。

　こんだけ人間がいて、単純な差別だったら「誰かが気付く」わけでな。気付く人が居りゃ、単純な偏見とかだけならすぐ撤廃されとるわけだわ。

　だから、オタクと言って差別されている空気があるってのは、何らかそれを是認するような原因があるからで、その原因は差別を当然と位置付けるようなシロモノだってことだわ。

　それが、宇崎ちゃんの胸アイキャッチレベルに代表される「セクハラ」だろう、と。絵によって堂々と「セクハラの表明」をやっちゃってりゃ、そりゃ、キモいと嫌悪感を持たれもするし、レッテルを貼るのが相応と判断もされる、と。

「キモい」系のレッテルは、貼る側が違和感とか罪悪感をあんま感じてないよね？

　罪悪感を感じないってのは、貼られる側に嫌われるに充分な理由があって、むしろカウンターとしてレッテル貼りで対抗しているという構図だからだろう。セクハラ親爺に「キモい！」を連発する様そのものだ。当然と思えど、罪悪感など持つわけがない。

　さらにこのレッテル貼りが最近躊躇も無くなってきたのは、界隈の混沌さが薄れて、ジャンルやカテゴリが透明度を得てきたからだろう。「オタク」というカテゴリの中に、このセクハラ分子は不可分の状態で混ざっていたが、ジャンプなど漫画界隈でもカテゴリは鮮明になってきており、「幽奈さん」がセクハラというジャンルに属することが明白に解るようになったから、叩かれたということかと思う。だから、その批判に関しては躊躇も手心もない。

　そして、宇崎ちゃんのイラストだが、これは「指摘されればセクハラと気付く」レベルのセクハラ表現である。だから、鈍感な人だとただの可愛いアニメ絵としか第一印象では思わないだろうが、説明を受ければ納得する人も現れるという具合だ。だからこそ、雨後の筍状態で後から後からバッシングする者が増えていった。

　じゃあ、ミロのヴィーナスはセクハラじゃないのか、と言うかもだが、残念ながらあっちは「芸術品」なのだ……。名古屋の展示物が批判されたけど、あれだって簡単に言えば「あんなモノを芸術とか言うな！　プロパガンダではないか！」だし。正確なカテゴリ分けによって芸術品とカテゴライズされたシロモノに関しては、セクハラ表現であっても例外と見做されるってことだ。

　しかし、そもそも芸術品はハラスメント表現を現時点では含んでいないと思うが…あれはほら、「洗練された表現物」に冠されるモノだから、ハラスメントという不純物を含む時点で省かれるだろ？

　正確性において、現代の人間の大半は見る目というか判断力を持っており、知識に裏打ちされている分、中世だの近世だのの無知だった時代の人々よりカテゴライズの分類枠は細かくなっている、てなトコロではないかと思いますわ。

　チコちゃん風に言うなら、

「宇崎ちゃんが批判されるのは～、表現技法がセクハラだから～。」

　てな感じかな？

（オタクの擁護はするが宇崎ちゃんや幽奈さんの擁護をするとは言ってない）

　しかし、根源にはまだ「でもセクハラとかいう概念自体は正当性あるのか？」って問題が控えておったりして、このハラスメントという新規の発明品がどう評価されるかってのは後の時代で今とは真逆になる可能性もあって……てなトコだね。

　赤十字が取り上げたことで大炎上に繋がったわけだが、そもそもでな、赤十字は何巻かある表紙絵の中で、なんでアレを選んだと思う？

　そこに、根底に「オタクへの偏見」があるのだが、気付かない人多過ぎと思う。「こういうの好きなんだろ？」という無意識のレッテル貼りがあるから、わざわざセクハラ表現として一番問題視されそうなあの巻の表紙が選ばれていると思うよ？

　オタク側はほら、宇崎ちゃんを評価するでも「トータルで観て」決めるけど、フェミ側はトータルの宇崎ちゃんなんざ知らないし、問題にもしてないんだよ。あの一枚における「表現手法」だけが問題なので、宇崎ちゃんというキャラは無関係。（どころか、フェミ的には立派に「被害者」で実は積極的に宇崎ちゃんを認めている）

　あれよ、女性モデルにやらせるポーズで「M字開脚」はすぐ問題なの解るけど、「胸に視線を集めるポーズ」が同類だから問題だって言っても、「？」てなる人が居るわけで、だけどそのヒトたちも丁寧に解説されたら同類だって言ってる意味を理解するでしょ、てトコがすれ違いの始まり。（フェミ自体も理解度バラバラだしな…）

　ところで、オタク側が宇崎ちゃんを評価する基準の「トータルで」ての、これが、「胸だけ強調で切り取るかのような表現手法」を批判する理由だ、てのをね。

　次は分解してみたいと思います～。（あーラジオ分解たのしっｗｗｗ）