【ネタバレ?】ミステリーアリーナ余韻orメタ読みの地平線【これは孔明の罠…!】

 ひとつ気になる点があって、どうしても解らない。教えて作者先生!ってカンジだ。あれだけの凄まじいミステリロジックを組み立てておきながら、ただ一点、あのちゃんちゃらおかしい「幸福法案」である。


 ……いや、一周回って、どこかでどうにか転んでいけばアレが実現されないとも限らないという皮肉を込めたメッセージであると共に、あくまでミステリを主体に据えておくためにあえて邪魔となる可能性のあるSF的要素は潰しておこう、という配慮の可能性もある。


 読者がSFに目が向かないように、あえて、あえての、あのバカミス設定か?


 そういう点がもう、気になって気になって、夜はよく眠れているがとにかく気になる――


 はっ。


 もしや、これこそが読者への挑戦…!!


 解ったぞ、この作品の真のトリックはあの一見バカ設定としか見えない法案の、実に巧みなロジカルさを見抜けるかどうかにあるのだ!


 番組内で流された出題文章、そこをメタと見せるための額縁と思わせたあの番組パート自体も、実は双方がメタ! 真の額縁=命題・主体・本体、は、さらに外側にある、読者がこれを読んでいるという、その行程そのものなのだ!


 アカデミックへの挑戦ともとれる作中幾つかの言動は、それを裏付けるため!


 作品構造の中に一つだけ完全に浮き上がってしまったあのバカ法案……リアルを取るなら、あそこは贖罪法案とでも付けて、犯罪者の臓器提供とでもしておけばもっと容易に説得力を持つ設定として読者にも受け入れられたはずだ。これほどの作者がまさかそこを思いつかなかったとは考えられない……!


 なまじSF的に成立させてしまっては、読者はミステリとSFのどちらに比重を掛けるべきかで割れてしまう、ミステリとSFでは実は読み方に微妙な差違が生じていることをさえ、作者はこのバカ設定によって仄めかしたのだ!


 そう、真の科学はあくまでも「可能性の学問」であり、正誤という二元論などでは済まされないモノだからだ!!


 つまり、あらゆる事象に「正解」などない!


 つまり、真を取った時、絶対的に不利なのはミステリの方であることをこそ、作品は糊塗している、そこがこの作品の真なる謎、隠された最終トリックなのだ!


 隠された真実……すべてがブーメランとして返ってくる……なんたる自虐、なんたる皮肉……! その上で問うているのだ、


「娯楽とは何だ?」と。




 深い……!

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