レトリックは諸刃の剣

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886974853

「電気豚の餌」


 この短編は、なろうに放置してあった6年ほど前の作品です。当時は、なろうスレに【企画競作スレ】ってのあって、そこでテキトーに遊んでて、その時の一作です。


 まぁヘタクソな修辞をこれでもかと使ってますけども、これ、私としては「ギャグ」のつもりで最初から書いてたんですよね。ラストで笑ってもらおうと、狙ってこういう文体にしました。


 ところが、えらく不評で。(笑


「せっかくここまで雰囲気盛り上げといて、このラストは台無しだ、」とか。

「ラストで興醒め。蛇足。」とか。


 もうケチョンケチョン。


 当時の私としては、このスカした文体でカッコつけて、ラストに落とせばそうとう笑えるはず、と思っていたんですけどもね。この文体を「笑える」と思っていたのは私だけだった、というオチ。


 今じゃ、この文体を「笑えるモノ」とバカにする感受性は持ち合わせていませんけども、当時は「こんなスカして書くほどの内容か、」くらいには思ってました。この文体を使う内容ってのは、もっとブンガクブンガクしてるべきだろ、と。(笑


 だから、ラストのオチで笑いが生まれる、と確信していたんですけど生まれませんでした。この設定と物語内容だったら、文体自体がギャグの装置になるだろうと思ってたんだけど、認識がズレてたんですよね。私が読まないラノベ界隈だとこの文体は普通に受け入れられてましたんで、「何が笑えるんだ?」という反応だったんです。


 修辞法って、読者によって受け取り方が違う可能性が高いんです。さりげなくワンポイントで使うに留めておけ、とよく言われるのはそのせいです。しかも文章センスに左右される危険物です。この作品みたいに、ヘタクソが大量に使うと痛々しいくらいになるんで、完全に上級者向けですわ。


 それともう一つ、キングやヘミングウェイはこういうの嫌ったし、文豪の中でも嫌う人は多いわけですけども、それにはちゃんとしたリクツがあります。


 この文体は、結局のとこ、遠まわしになるために言いたい事柄がボヤけてしまう書き方なんですよね。そこを見抜いて、使わないほうがよい、と言ったんでしょう。

 正確に伝えるというのみだったら、ご存知、ストレートに箇条書きすんのが最強です。それが一番です。簡潔明瞭とか言いますし。それの逆ですし。


 ただし、簡潔明瞭ってのはご大層な文章ではないがゆえに、内容を粉飾することは出来ませんわな。その上、人ってのは「解かり易い=簡単=下位」となる方程式を誰もが持っていますんで、見下されるわけです。


 つまり、この文体の持つ効果として、すごく高尚なモノを扱っているように見せかけることが可能なんです。見抜く人は見抜くけどね。


 だから、書き方教本なんかだとこう書いてあるわけです。

「多用したらボロが出るから、ここぞというトコに限定して、箔を付けよう。」


 自身の過去作ながら、文章にセンスがねぇなぁ、てのモロ解かりですわ。この修辞法って、書き手の文章センスがモロに出てくるし、割とひと目で判定できちゃうんで、ほんとに要注意の技法なんすよ。使おうという時は注意してね。




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