八犬伝は玉梓の成仏物語だ!?

 前回の公募作で、うちの探偵のモチーフがかの茨木童子だったということが発覚したわけですが、いやー、相変わらず神仏のお導き的なアレコレが絶えません。(どーりで妖怪染みてるというかヒロインが恐がるはずだわというか)獲って喰いはしないと思うから安心していいのよヒロインちゃん。(たぶん)


 で、次回の公募作も、構想中にすごい偶然が重なっていたことが確認されました。


 まず、八犬伝の「は」の字もない中核のトリックのみが出来ていた時期でしたかね、設定としては真の探偵である恭介とは別に、仮託の探偵コンビというのを考えてまして。女性二人で、ワトソン役で語り部を兼ねてもらう少女の名を、なんと、「玉子」にしていたんです!


 やはり神仏のお導きか!と、言わざるをえません!!(あばれる君風)


「たま子」ちゃんと呼ばれてて、彼女がが、真打ち登場まで仮の探偵役をする大女優で、たま子に命じているっていう。後で八犬伝を読んでびっくりしましたよ、もう。


 これ、玉梓じゃん、て。後に伏姫を連れてっちゃう八房っていうワンコロは、実はこの玉梓の生まれ変わりっていう設定があるのです。復讐の為に姫を嫁にして里見一族を犬にしてやる、て言い放って処刑された怨霊ですわ。


 なんという神仏のお導きでしょうか…! これはもう、舞台は千葉県で決まりだろ、行ったことないけど。それで、人形劇は観たけどぜんぜん覚えてないぜ!てことで八犬伝を今ごろ必死こいて仕入れてるトコですけどね。

 八割がた、ストーリーの骨子は出来てたんだけど、これたぶん八犬伝をリスペクトしなさいっていう啓示だから、なんとか落とし込んでみようと頭ひねってるわけです。八犬伝は、「表」と「裏」があるストーリーで、一見では勧善懲悪単純ストーリーに見えて、実は批判精神に満ちた複雑なテーマが隠された物語ですよ!


 これが、戦国里見氏と北条氏に見立てた江戸幕府批判ってのは有名ですが、それだけだったら幕府が咎めてとっくに消えてたと思うのね。これはすごく深いんです、だから教養として、幕府側が武士も読むに値するとして、残ってきたと思うの。表立って推奨はしないけどクチコミはされたんだと思う。


 というのも、この八犬伝ってのは全編でもって思い切り「世間の上っ面な道徳観を罵倒する」というか「批判している」んだよね。それも、武士の教養として認められるに足るレベルの高度さで。


 仁・義・知・信・…てのは、あの有名な八つの「徳」のことですが、物語では、こんなチートな神仏のエコヒイキパワーをもってしても、それをかなぐり捨てた悪の連中とは互角だよ、ていう皮肉。

 ものすごいチート揃いが八人もいるのに、延々遠回りして、なかなか目的を達成できないんだもん。むしろ、徳であるはずの、八つの良心は、力の源でもあるけど、大きな足枷でもあるってのを、これでもかと書くわけですわ。


 でも、恐らく裏の主役は「玉梓の怨霊」自身ですよ。彼女はまず、畜生道に落ちたということで犬コロに産まれて、だけど伏姫さまに救われて、そこからの転生はちゃんと人間に戻ってるわけです。もう、ひたすら八犬士たちのために命を棄てて助けるっていう、滅私奉公な人生。物語中、何度でも八房にちなんだ人物たちが現われて、八犬士を助けるんですよ、時に犬士自身が「すごい執念だ…」と畏怖するほどで。


 そう考えると、昔に何かで見たんだけど姫と八房が本当に肉体関係を…てのはあれは絶対的にタブーなんですな、肝心なポイントを読めていないことになります。


 伏姫は、真の仏性で、畜生道に堕ちた玉梓の魂を救おうとし、玉梓もそれで人に戻ってからは何度も何度も姫の血である八犬士を助けるっていう、真の成仏を求める玉梓の、魂の戦いっていう一面も物語には隠されているわけで、これが本当の「徳」ってもんだ!という作者の意気ってのを感じますね。

 表面だけの道徳観を批判しつつ、男ではなく女を、それも悪役だった女を影の主役に立て、本当の徳とはどういうもんかを記そうとしている…みたいなことを思って、すごい感動してますわ。


 散々に乱れた玉梓という女の魂の、悪に生まれたり、善に生まれたり、てのが物語の豊富な登場人物の中に紛れて登場して、成仏を願いつつ、また悪さもしてしまう、みたいな…深い。(勝手にそう読んでるだけかもですが)


 八犬士たちが表面的な徳に縛られて苦しんでいる様は、読んでる文体がコミカルなだけに余計極まってコメディに見えますし。あらすじだから文字通り、骨子がはっきり解かるってことで、見えてきたものかもですなぁ。


「あらすじ読んだくらいで語るな、」みたいになってますが。ちゃんちゃん。(笑



『kirinwiki』http://giraffe.topaz.ne.jp/ 内『里見八犬伝とかのあらすじを書いた記録』の「里見八犬伝のあらすじをまとめてみる」を参考文献にさせていただきました。


 おーい、カクヨムさんよ、これかつてカクヨムで発表されてたんだってよ。

 絶対売れる文章なのに、惜しいことしたね。(横浜駅に張れたかもと予想)




追記:


 公募作、もう一人、揚羽蝶の家紋をイメージして「蝶野」と付けた登場人物も、やはり睨んだ通りで八犬伝の中に登場しました。揚羽蝶の家紋そのものが出てきたよ…で、氷垣夏行にあやかって、めでたく蝶野夏行にしとくことに決定。

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