人の思考ってクラウド状態じゃんねぇ?

 ふとね。公募原稿を改稿しまくってた時に感じてからこっち、ずーっと引っ掛かっているのですよね。なーんか不自然というか、作りモノっぽいというか。


 人間、一つの物事だけを何時間も何日も延々と考えてなんかいねぇ。


 これに至ってしまったら、世の名作もへったくれもぜんぶ吹き飛んでしまってねぇ。ぜんぜん自然でもリアルでもないじゃん、て思ってしまって。ご都合じゃん。


 人間、恋の悩みでめそめそしてても、片隅で明日の天気を気にしてるし、晩飯の手順だってよぎってくるし、電車の遅滞の放送に耳を傾けてんじゃん。リアルの人間ってものすごくマルチタスクじゃん、それがホンモノじゃん。


 私なんかさ、お肉のこと考えるじゃん、そしたらゴールデンカムイの1シーン出てきてサルの脳みそが思い浮かんで、サルの群れとか親子ザルとか浮かんで、狩猟されてるサルと悲鳴上げてる仲間の群れが浮かんで、西部劇のカウボーイに先導されて移動してくバッファローの大群が浮かんで、のんびり草を食む羊の住む牧場が浮かんで、ホルスタイン種のブチ牛が遠くにのそっと転んでんのが浮かんで、……そんで市場のパックお肉の松阪ブランドが浮かぶよ。一瞬で。


 ホンモノの人間の暮らし、ホンモノの思考、ホンモノの世界の関連ってこんなにも濃密に密接にぜんぶががっちり絡まりあってんのに、物語というやつは、たったの一本でしか表現しないんだ。


 死体から切り取った心臓一個の方がまだ、沢山の関連を如実に表している、そう思ったらなんかすごくモニョ~ッとしてしまって、ここんとこ油断するとオツムから黒い煙がぶすぶす吹き上がってきます。む~~~~~~~ん。


 小説の手順で、理路整然と文章の隅々までが解析可能に繋がり合っていて、一つの主題に関連してって、いかにもしかめっ面で書いてあるけどさ。それを忠実にすればするほど、現実とはかけ離れていくじゃん。

 小説らしい小説とは現実と乖離していくことなのか、そういう疑いを誰も持たないのか、それとも誰もが持っているのか。こうして考えていても片隅で、うーわ、めんどくさ…とも考えてる、そろそろ買い物行かなきゃ、とかも。これが人間じゃないのかなぁ。リアルって雑然としてて一つテーマで纏まってなどないよね。

 一つテーマに統合された物語の中で統率されたキャラクターたちと、よく言われる出来損ない素人作品のお人形みたいな記号化されたキャラクターの違いはどこよ?

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