現代劇かつ大人向けの条件③

 では、大人向けの作品でファンタジーや現実離れは扱えないのか、という話になってきますが、そうじゃないです。兼ね合いのバランスは考えた方がいいよ、という話をしています。


 これは作品ごとのケースバイケースなので、システマチックにこれをしたらここがダメなんてことは言えませんけども、ハーレムうはうはの話がご都合展開に沿って進められる話で、”愛し愛される関係は尊いものだろ?”なんてメッセージがあったら、それってギャグですか?と返したくなりませんか。そういうことですわ。そこで読者の神経を逆撫でる必要はないじゃないですか。納得する人より反発覚える人の方が多いと思いますわー。


 語るテーマに相応しくない舞台、設定、そういうものくらいには鼻が利くようにしておきたいものです。食い合わせみたいなものですね。


 大人向けというのは、内包されるメッセージやテーマという部分が大人向けであるという意味です。ひと口に恋と言っても、大人の恋も初心な少女の恋もあるわけで、例えば不倫の関係なんてのは子供にはちょっと早いでしょう? 憎しみ愛、という形式だってあるわけで、ストーカーなんかも一つの愛の形、執着からのもので、というそういう面倒なものは大人向けと呼ばれるわけです。これもカッチリ区切りがあるわけじゃないですけどね。


 ファンタジーと現代舞台との境界線もまた曖昧ではあるものの、その曖昧なラインをしっかり感覚的に把握できていないと困ります。読者はそのラインを意識しなくても問題ありませんが、書き手は意識出来なきゃカテエラ量産ですよー。


 世間の、ラノベと文芸の線引きだって同じく曖昧なラインで分けられていますし、人それぞれで微妙に規定が違うものでしょう。ファンタジーな要素がどれだけ入っているかも関係しますし、その要素がどう表現されるか、どこまで物語に影響するかも測って、ラノベか文芸かを個々が分類していることでしょう。普段はそんなことを考えて読むわけではないという人たちですら、世間にはそういう分類があることを知らないわけではないと思います。


 さて、HiGH&LOWという世界観は時代を言明してはいません。けれどスマフォがありパソコンがありなので平成の小道具がバンバン出てきますし、それでいて今ではほぼ見ないガチの暴走族も、レディースも出てきます。これは昭和です。混ざっている時点で、またSWORD地区という架空の地域が出てくる時点で、この話はリアルな現代ではないファンタジーな異世界です。


 しかし、ファンタジーとか異世界というと違和感ありますね、IFとか、架空の日本、という感じですね。これです、「ファンタジーと銘打つには違和感がある」これがファンタジー要素を持つ現代劇、というものです。ガッツリとリアル現代に爪を掛けたままで展開する物語なので、ファンタジーに括ろうとすると違和感があるのです。根底に流れる価値観は一貫してリアルな現代のものだから。そして、一貫して芯の部分はリアル基準であるから、そのメッセージやテーマをリアルと重ねてもおかしく感じないのですわ。小道具がちょっと時代考証的にちょっと、てだけなのです。


 この範囲に限定させておくことがなかなか大変なわけなのです、現代劇というのは。大人のファンタジーというかで、最近はTVドラマでもファンタジー要素の強い物語も多くなってきましたが、さじ加減が絶妙なモノはヒットしますがバランス崩したものはやはり、子供の夢物語と一蹴されてしまうのは変わりないように思いますね。視聴率は正直なのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る