細分化された各ジャンルで起きている事

 読者層が完全に隔絶されてきてるんだよねぇ。それぞれのジャンルで交流なんかなくなってってる。例えば、SFがかつてそうだったよね。これはまた、数ある小説ジャンルの中でSFだけに起きた現象だったと見做しているが、今はそれぞれのジャンルで起きてる。「物語」という表現そのものに起きた全体現象だと見てる。

 映画もドラマも漫画もすべからく小説と同じように、細分化された各ジャンルが島宇宙化で断絶して、一見さんお断り状態に近付いている。これは文化の爛熟期ってことで本来は喜ばしいことなんだろうが、ビジネスが深く絡んでいるから困ったことと受け止められてしまってるんだよねぇ。

 それぞれのジャンル自体は、今までで最高に高度に、深度も深く深く、極まったトコへと到達しようとしているのに、それは軒並み初心者お断りになってんだよね。


 ほら、専門書ってのは専門分野に特化しているからこそ、その分野に精通している人には重宝だけど、初心者が読んでもチンプンカンプンじゃん。それ。


 どっかのエッセイで書いたけど、内容が高度になっていくと、把握しておくべき事前知識ってのの量も膨大になってきて、専門書あたりだと基礎知識は解かってるものとして、知らない読者は置いていく書き方をするんだよね。○○参照、とか言って。

 専門書の○○参照なんかそれだけで何ページも羅列するくらいにあって、モノによっちゃ、参照すら書かないんだよね。知ってて当たり前って人向けに書かれてるから。これが、各ジャンルで起きてきてる。なのに、一部の読者はそれを認めないのが問題で、この一部ってのがまた、バカに出来ないほどの数居るのがね。


 推理小説で、社会派はもう社会問題の超高度な問題を扱ってて、そこの予備知識持ってる読者にしか訴えてないのよ。ゼネコンだの言ってたら古いとバカにされるなぁ、今だとたぶん、アレだ、名前がすぐ出てこんけど、タックスヘイブン、調べるのに骨が折れた。金融回避で出た。こういうのをネタに書いて、食いついてくる層ってのがあるんだよね。タックスヘイブン、知ってる? ニュースでやってたけど。

 それのものすごい詳しいトコが解かる人向けに書いたソレのネタの推理小説だよ。ふだん金融だの社会情勢だの興味もない志井の方々は端からターゲットじゃないの。おそらくごく一部の新橋あたりでクダ巻いてるお父さんがターゲット。けど、このごく一部ってのが何万人と居るのが現代で、それなり商売になるんだよね。


 オタクと呼ばれる層だって、日本全体とか世界全体とかから見たらごく少数なんだよね。何%だよ、一桁パーセントくらいか?(アニオタとか細分したそれぞれね)

 そこを自覚してる人なら、こういうニッチ狙いが現代ではそんなにニッチではないって解かると思う。なんせ人々は右向け右を止めたから、その分だけニッチ層は肥大したのだ。企業が楽して儲けられなくなっただけの事なんだよね。


 ほら、ビジネスだと少ない種類を多数に売ればコスト低下で儲かるのよ。これが正常になってるだけなのね、現代は。多量の種類で多数に対応、て。当たり前の状況なんだけど、ビジネスだとここを騙くらかそうとして言い方を変えるんだ。(笑


 だから文化としては非常に正常にまっとうに突き進んでるわけだけど、ビジネス観点からしたら困った状況だ、と。私はまぁ、資本主義の概念が根本的に間違ってるから行き詰ってるに一票、という考えだけど、それはまぁ置いておいて。

 私みたいな上っ面だけの知識しかないような者じゃ、この社会派を読む層とは話も出来やしないってことですよ。向こうは向こうで、オタ知識とか皆無だったりするだろうけどね。


 これもどっかのエッセイで書いたけど、ネット小説のテンプレっての、あれもひとつの専門分野の専門書なわけですよ。予備知識がないとチンプンカンプン。それと同じだ、と言えば解かりやすいだろうか。

 片方で、テンプレの何が面白いのか全然解からんって声があり、それに対する反論で解からんヤツには解からんだろうが、面白いんだよ、て声があるでしょ。そっくりそのまま、文学とか社会派とかの専門分野もそう思ってる。


 ここに交流はないよね。多くは。


 読み手はそれでいいんだが、書き手はそこを自覚して、自分がどこ狙いで行くかは早いうちに決めておいた方がいいのかも知れない、とか思っている。

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