ラノベはラノベの書き方、文芸は文芸の書き方。

 ま、当たり前の話をしているわけですけどもん。(笑


 特に基本的な人称だの、ねじれ文だのうなぎ文だのの悪文系統なんかは、両者で共通してるでしょうが、他の細かな技的なものは多くが独自の作用ですんで共通じゃありません。これも当たり前ですよね。


 私はある日を境に文芸に舵きりをしました、てのも書きましたが。


 つまり、私の書き方ノウハウはある時点からはラノベには通用しなくなってくる、という事なんですよ、ターゲットが違うんで。


 これも、書き方ノウハウでは必ず解説する事柄なんですが、読者層とかターゲットがそれぞれで違いますよね? 万人にウケる作品を書くという姿勢はいただけません。


 単語のカバー範囲という問題がありまして、コンテクストにも関係してきますが、周知ってのはそれぞれの単語で違っています。「林檎」なんてのは漢字が読める人なら、何のことかが即理解できます。ラクダでも織田信長でも何でもいいんですけどね、それを対象何人が知っているか、というのが周知の問題として常にあります。


 二次創作なんか最たるものですね、その原作を知らない読者が読んだらワケが解からない二次小説なんての、見たことないですか?


 これは「相手も知っているだろうという思い込みで綴られた文章」が原因なんですが、実は、ほとんどの小説でこれのない事なんてのは「ない」んです。

 これが、文学なんかでも言われる「時代性」の問題にも関わります。よく題材に出されるのは森鴎外の舞姫ですけどね。舞台となった時代がどういう時代か知らなかったら、ぜんぜん別の解釈が生まれてしまう小説というのでも有名です。


 さて、共通の土台があるという問題、その他にも、文法まで違ってきちゃったりってのがあります。ギャル語とかそうですよね、時代が違えばもう他言語ですよ。独自の進化を果たしたものなので、共有文化圏ってのが形成されてそこで使用される。


 なぜ文化圏とか言って排外的になるのかと言えば、その独自性ってのはそれを知らない者には説明必須だからです。しかし、知ってる人にしたら、その説明は蛇足以外の何者でもありません。

 二次創作で、原作をいちいち事細かに解説されたら、知ってる人にとってはウザいでしょ? だから村社会になるのは避けられないわけです。それが端的に「読者層」の正体ですので。


 ラノベとの比較で真っ先に出てくるのは描写の少なさですけど、まぁ、独自に進化した形態なので、他のジャンル小説と違うのはまぁ構わないはずなんです。文法が違うんで、例えば文学のノウハウは通じませんね。当たり前。


 問題は、その文化圏が継続可能であるかどうか、です。


 例えば、歴史。


 時代小説とか歴史モノなんかは、やっぱ常に新しい読者が加入してるんですよ、なんだかんだのキッカケで若い人の中からこれに触れる人が常時居るわけです。だからずーっと継続しています。文学文芸も、ミステリもしかり。


 ラノベはここ10年か? とにかく新しい分野ですけども、この先の継続がどうなるかを考えてみる必要はあるでしょう。年々、読者層の中心がスライドして高年化しているというのは、そういう意味ではあんまり良い傾向じゃないって事です。


 で、進化してすでに独自の文化圏というほどまでかけ離れてしまったのだから、文学文芸のセオリーだの、参考文献だのが通用するかどうか、も怪しいわけです。


 そろそろ、ラノベ書きによるラノベ独自の書き方ノウハウを研究した方がいいんじゃないの? という老婆心。(笑




 本屋では、リミックスというか、ラノベのコーナーが消えるか縮小して、著名なラノベ作品を普通の文芸棚へ混ぜ混ぜで置いてるトコが増えてきてる気がします。レーベルで決まるだけ、という実情がこれを可能にしたのかも。

 手に取る読者は作品単体しか観ておらず、それがラノベという意識はなさそうです。これ、さらに10年とか経過したらせっかく独自進化したラノベラノベな形態は消えてしまい、残ってるのは結局文芸の文体で書かれたラノベ設定を持つ作品のみ、なんて事にもなっていそうで興味深いですね。

 ラノベは描写が少なく、とかいうのが今後も継続するだろうか?と。


 同じ意味で、今後も、テンプレ形態の作品は生き残るのかどうかも興味深いです。

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