「物語」は微かに鬱陶しいサービス
物語というものは、本質的に「サービス」なのだ。だから、サービスが内包している「微かな鬱陶しさ・仄かな押し付けがましさ」をも孕んでいる。
もうじき読み終える、高橋源一郎氏の『文学がこんなにわかっていいかしら』だが、ちょっと気になる事が書かれていた。
この本、古本屋で掘り起こしてきたもので、なんとドラクエⅢ発売当時の本なのだ。で、このドラクエの事も氏は話題にしていて、発売当初、このⅢは、それまでのⅠやⅡのファンから一部不評を買っていたというのだ。
「面白くなくなった、」と。
その原因は、それまでなかった「物語」がベースに敷きこまれてしまったせいだろうか、と氏は論じていた。
私はドラクエはⅤからなんでよく解からないのだが、それでも、その感覚はなんとなく解かる。多くのRPGもやりこなしてきたつもりだが、正直、もう飽き飽きして一部のゲームしかしなくなってしまった。
始めてみれば楽しいのだが、始める前の段階の、購買意欲というか、手に取った時のワクワクがなくなってしまったのだ。どころか、なんとなくウンザリする。
今ではモンハンとか牧場物語みたいな、ストーリーなどオマケ程度にしか付いてはいない「やりこみ型」のゲームしか手出ししていない。
なんだろうか、TVでもドラマはもうお腹一杯で、バラエティとか薀蓄系の番組ばかり観ている。だって、洋画にアニメにドラマにと、「物語」というものを私は現在までに何万作と観てきたか解からないのだ。
もう、うんざり、というほど観てきた。
私の趣味は幅広いが、後発である小説のハードルだけがいやに高いのは、こういった点にも原因がありそうだなぁと思ったりした。
モンハンに物語はない。伝統的にずーっと、あのシリーズは物語抜きなのだ。それだからやり込めてイイ。無意識のうちに、物語を押し付けられる事を嫌っているのかも知れない。モンハンには世界観だけがある。
そういえば、一時、ピクシブでも爆発的に流行った「刀剣乱舞」も、世界観だけがあってストーリーのないゲームだったな。
モンハンに刀剣乱舞が、「物語」に飽き飽きしていた人々に受け入れられたものだとすると、その売り上げ総数を考えるだに、ちょっとゾッとしないな。
物書きを目指す者としては、複雑な心境だった。
今、空前の「創作ブーム」が巻き起こっている。インスタグラムだとか、ツイッターだとか、コミケだとか、どこも盛況である。
だが、これは需要方向のブームではないと思うのだ。供給方向のブームで、皆、読み手ではなく書き手になりたがっている。
自分の書いた物語にだけは、自分への押し付けは存在しないからね。この世でもっともストレスなく楽しめるパーフェクトな「物語」だ。
ムスメに、今の流行りはなに? と聞いた。
「別に要素は関係ないと思うよ。面白いものが流行ってる。」
と返ってきた。
読者層は何種にも分かれている。Webラノベに乗っかっている人は、実は書き手志向の人々で、参考書需要ではないのか?
読書が趣味の層は、面白いと聞けば食いつくだろうが、何度も同じ手は食わない。彼らはいつまで参考書を面白いと思ってくれるだろう。
「物語」に飽き飽きしている私は、そういえば、どんなモノなら面白いと思えるんだろうか。
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