第1話-2 それは当然フラグである(優羽編)
彼女の名前は桝谷優羽(ますたにつばさ)。若干ドジっ子属性を持っている。
入学式(物語の冒頭)でいきなり腐の代表格であるトキあるGのゲームに付属された特典のレアカードを落としてしまう。
そりゃあ、こんなことになってしまえばこのカードがフラグになってひとりの男の子との出会いをさせてしまうのは至極当然である。そしてこの後フラグはしっかりと回収されてしまうのであった。
私の名前は桝谷優羽。この春、無事に高校に進学して入学式に出席。
そして、とても仲の良い綾瀬夕子(あやせゆうこ)という友達とも同じ高校に行けるようになれた。なぜか、敵ばかり作ってしまう系の私だけれど出会ってからずっと友達でいてくれる貴重な存在。一緒の高校になれてほんと良かったと思っているわ。しかもクラスまで一緒!
が、しかし、いきなり、
やってしまったあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
高校の教科書やら学校指定のカバンやらを取りに行く日とトキあるGの新作ゲームの発売日が被ってしまって、それで取りに行った学校指定のカバンにみんな一緒に入れておいた。
そして、今日、入学式で教科書とトキあるGのゲームは取り出して家に置いてきたのだが特典のカードがついていることをすっかり忘れていた。
教室に来てカバンを開けた時にカードが入っていることにちょービックリした。
ホントに私バカだわ……。
これじゃあ絶対に落としてしまうフラグじゃない……。
でもまあ落とさないようにしないとね。細心の注意で今日を乗り切らなきゃ!
これ落としちゃったらいろんな意味で私が終わってしまうわ。
で、案の定、結局この様……。
それでも家に帰る前に自転車置き場で再度確認したのが良かった。無いことに気が付けたからだ。そう、
ヤバい! カードが……、ないわ……。
とりあえず、通った道を注意深く戻ってみよう。
そして、教室に戻るところまで来たところで見てしまう。
カードを男の子が拾っているところを。
ええ――――――!
す、すでに拾われているわよ!
これってどうするのよ?
うわ――――――。
今声かける?
いや、まだちらほら人がいるからちょっと恥ずかしい。
さすがにトキあるGだからね……。
それに、拾われているのが男の子なのでどんな顔されちゃうかもわからないわ。
って、あああ、そうこう思っていたら持って行っちゃった!
もしかしたら、入学式にしてすでに私、詰んじゃったかしら?
あれの持ち主が私だとばれたら……。
まあ黙っていれば高校生活は保障される。でもカードは……。
いやダメだわ。あのカードは半年前から予約した初回特典のカード。諦めるわけにはいかない。多少のリスクがあっても取り戻さなければならないわ。
まあカードは持っていてくれるみたいなのでそのうち返してもらえる可能性もあるわね。
それよりもあの人は誰だっけ?
えっと真ん中らへんの席に座っていたかしらね?
ちょっと座席表を確認しましょう。確か……、この席ね。
『高橋翔吾君。』
それと夕子にもどうしたらいいか相談してみよう。
えっとそういや私の自己紹介がまだだったわね。名前しか言っていなかったかしら。もうカードのことで頭がいっぱいですっかり忘れていたわ。
そそっかしくてちょっとドジっ子属性があることは認めている……。
さてちょっとだけしておきましょうか。自己紹介。
名前は出てきているけれど、桝谷優羽(ますたにつばさ)と読むわ。若干キラキラネーム入っているけれど私としては気に入っているわ。両親の名前を付けるエピソードを聞いたらね。
なにやらまだ名前も決まっていない状態で、ほんと生まれたばかりの私をお母さんが抱いていて優しい羽のようだわって言っていて、そしてお父さんがその『つばさ』で羽ばたいていって欲しいものだな。
といったエピソードがあってね。それがそのまま私の名前になったということなの。
なんか親になって初めての共同作業感があって私としてはほんとにうれしいからこの名前はとても気に入っているし、というか大好きである。
身長は153cm、体重は53kg。スリーサイズは……、ってなんでこんなことまで書かないといけないのよ!
って、体重まで言ったんだからこれくらいで許してよね!
まあ、体重が若干重めなのでそれなりにムチッとしてるわよ。ほんと失礼ね!
あと、とても腐でオタクである。可愛い女の子が出ているアニメ、イケメン男子が出ているアニメや漫画、もちろん薄い本含むあっち(腐)も大好きなのである。
あと、母親は大手化粧品会社に勤務していて父親も大手の紳士・淑女服のメーカーに勤務している。
それもあって小さいころから身だしなみにはとてもうるさく躾されたわ。あと、言葉使いも。
冒頭はちょっと取り乱しが激しかったわね。反省が必要だわ。
親としても身だしなみさえちゃんとしていれば、まあ中身がどんどんと酷くなって(腐って)いるのは気付いているはずだけれど、なんというか趣味ということであんまり強くは言ってこなかったわ。
その甲斐あって中身は自分でもかなり酷いと思うけれど、でも清涼・清潔に育つことが出来て良かったわ。オタは外見からして気持ち悪いというイメージが付いてるけれどその点は安心ね。なんだかんだでやっぱり見た目は重要というエピソードもいくつかあったしね。
まあ、とりあえず今はこれくらいで良いかしら?
おいおいわかっていくと思うわ。
そして翌日。
前日に話し合った夕子と決めた作戦はこうだ!
一つ。
朝一番に学校に行く
二つ。
放課後にプールの更衣室裏に来て貰うように書いたメモ用紙を高橋君の机に入れる。
三つ。
そこでカード返却の交渉をする。この際に口止めの交渉もする。
口止め料は何かしら必要だろうけど多少の無理難題は呑むつもり。
よし、段取り自体は完璧ね!
ひとつ課題があるとすれば、いきなりメモ用紙を受け取って怪しいと思われて更衣室裏に来てもらえないこと。
そうね、もし来て貰えないようであれば今回は諦めて別の手を考えましょう。
前日はあんまり寝れなかったけれど起きるのはぜんぜん苦にならなかった。それくらい自分でも興奮しているのだろうと思った。
7時には学校に来ていた。そして学校そのものは開いていたのだが、なんと校舎が開いていない!
しっかり鍵まで締っている。ちょうど通りかかった用務員の方に校舎はいつになったら開くのか聞くと、8時かららしい。
用務員さんによると最近はセキュリティが厳しくてその時間まで校舎は開けないことになっているということだ。
途方に暮れながら部活の朝練をしているのを眺めていた。四月でホントであればまだまだ肌寒いところがあるはずだが優羽としてはそこまで気にしている余裕はなかった。
でもまあ、この程度の問題は取るに足らないわ!
気を取り直して8時になって校舎の入り口に来た。
うわっ!
すでに何人か人がいるわね
みんなまだ8時よ?
こんな時間に何の用事があって学校に来るのよ!
もう!
と思いながら周りを見渡すが、昨日の今日でまだクラスメイトの顔は覚えてないけど、たぶんだがクラスメイトはいなさそうだった。
とりあえず安心して校舎の鍵が開くのと同時に教室に向かった。
そして、細心の注意を払って高橋君の机の中にメモ用紙を入れた。第一ミッションのクリアである。
その後すぐに人が来たのでかなり焦ってしまった。危なかった。
そんな感じで朝から焦燥しっぱなしでぐったりしていたところに夕子が登校してきた。
「どう?
だった?」
夕子の独特のちょっとゆっくりめにしゃべる。加えてとても可愛らしい声で質問してきた。
もうこれだけで疲れがふっとんだ。
「ばっちりよ!
まあ、問題はあったけれどね。でもまあ、とりあえずミッション1はクリアだわ!」
そう言って夕子に微笑んだ。
そして、続々とクラスメイトが登校してくる。高橋君も登校してきた。意識はしないでおきたいと心では思っているのだがどうしてもチラ見をしてしまう。
ううう。
こんなんじゃダメね。でも気になってしょうがないわ。
で、ここでさらに大問題が発生!
なんと高橋君だが、
机の中のメモ用紙に気が付かない!
考えたら当然な問題なのだが筆記用具を机の中にしまったまま、そのまま放置。そして、始業のベルがなりホームルームが始まる。
『うわあああぁ!
なんていうことなの!
これじゃ、放課後に来てもらう以前の問題だわ!
どうしましょう?』
動揺していてレクリエーションの内容はほとんど覚えていないのだが、なんとここで天の助けが降りてくる。
あああ、神様は本当にいたのですね。などと勝手に思っていた。
そう、高橋君が筆記用具を取り出すときに私が朝入れておいたメモ用紙がいっしょに落ちてきたのである。
そして、それに高橋君が気付いて内容も読んでくれている。よし、これでなんとかミッション2もクリアね。
しかし、こんな問題続きなんて如何に計画がいい加減かということがわかるわね。今度こういうのがあったらもっとちゃんとしなくちゃね。
さて、いっぱい問題があってほんとここまで大変だったけど、実は本番はこれからという……。
うん。気を取り直して頑張ってくるわ!
そして、夕子と軽く会話を交わし励ましの言葉を頂き、そして、戦地へ赴くのであった。
って、こんな書き方するとシボウフラグね。
確かに来てくれるかはわからないけどね。
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