1−5話
〜3月1日「自宅・自分の部屋」〜
「はぁ〜」
部屋の隅に置かれた折りたたみ式の簡易ベットに転がった。今日の疲れが一気に漏れる。
身体中に感じていた重り、これが一気に抜けた感覚。
高校生活が終わって今度は新たな大学生活、高校生活と違う環境、将来がここで左右される。
今までは机に突っ伏していても月日が流れれば終わることができた。しかし、大学生活はそうはいかないと思う。気を引き締めないと。
もう僕には将来を考えるしかない、もう終わったことだ。今まで心の隅に思い続けていたものが今日で消えた。
そう……消えた。僕はそう頭に念じた。
仰向けに転がっている僕、天井の電気の紐を見つめていた。それが、まるでテレビ番組で催眠術士が紐の先に五円玉を垂らした紐をゆらりゆらりと揺らして催眠相手を眠らせるみたいに自分もうすらうすらと瞼が重くなってきた。
まだ昼の1時頃だけど、少しの仮眠をとることにした。
別にこれからやることもないし、午前の疲れを取る意味も含めて僕は重くなった瞼に入っていた力をゆっくりとぬいた。
〜午後4時頃〜
瞼に光が入り込んだ。
徐々に瞼に力を入れていく、何時間くらい寝ていたのだろうか?
なぜか右腕が痺れていた。きっと右腕を体の下に入れていたことが原因だろう。少し気分が悪い。
体を起こし時計を見た。もう午後4時だ。
3時間の睡眠をした僕だが、それによって得たのはすっきりとした気分ではなくて、ボーとした頭と痺れた右腕というなんとも言えないものだった。
この悪い気持ちを晴らそうと外に出ることにした。
家を出て数分、3時間前に薫と別れた分かれ道に着いた。
もう心残りがないはず……だけど、そこで僕は自然と数秒立ち止まっていた。
薫がいった方向の道路に目を向ける。そこに彼女はいないのに、なぜか何かを見ているかのような感情を抱く。
僕にも何が見えているかわからない、見えないものがそこにあって、それを自分の何かが感じ取っているのだろうか?
ストーカーみたいに思った。自分自身のこの感情に。
そして、僕の足はまるで何かに取り憑かれたかのように、薫の背中を追うかのように別れた道を進んでいた。僕の感情を乗り越えて。
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