1−4話
「じゃ、私はここで」
「お……うん」
東一の家に向かうため、途中の分かれ道で別れることになった。
これで彼女と帰るのは最後になる。僕はもう悔いはない、最後に挨拶もできてもう僕の心のつっかえも無くなった……。
数秒、僕と彼女はその場に立ち止まる。何か待っていたかのように。
思い残すことはないのに、僕は数秒その場に立ち止まった。薫も何か言いたげな顔で下を向いて立ち止まっている。
すると。
「……じゃ、じゃあ……わたし行くね」
彼女は最後に笑顔を見せた。今まで僕に見せてきた何百回何千回の笑顔、僕が見てきた彼女の笑顔。
この笑顔を見れるのもこれが最後、僕の心にこの最後の笑顔は一生残るだろう。
「うん……」
僕が返事すると彼女は僕の何かを確認した。
おそらく僕の表情を確認したのか、一つ、彼女は頷き僕に背を向けた。
一つ、一つ、僕から離れていく、僕はそれを見ているだけ、これが最後とわかっているのに何もできない自分、本当に……自分の中の未練は無くなったのか?
僕は遠くなる彼女の背中が見えなくなるまで、その場から動かなかった。
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