1−2話
〜1〜
「あっ、薫〜、何してたの?」
「ごめんごめん」
「えっどうしたのその花束!」
「あ〜、いろんな人が祝ってくれて、こんなに持って帰れないよ〜」
クラスの輪の端まで来て彼女に気づいたクラスの女子が話しかける。
薫とは彼女の名前、「尾野薫」(おのかおる)、僕との関係は昔から家が近所で遊んでいた幼馴染、小学校から今高校まで一緒の学校に通ってきた。そして、僕にとってはいつも隣にいた存在、近くにいた存在。
クラスの女子と話している時も彼女は僕の手を離さないままでいた。
僕はなんとも言えない気持ちが心の奥か込み上げてくる。
「薫……どうしてそいつと手繋いでるの?」
「えっ? あぁ、クラスで写真とるみたいだから連れてきた」
「その……あまりそんなことしないほうがいいよ。『一(はじめ)』君が怒るよ」
「怒らないよ〜、一君はどんな人じゃないから」
僕はこの会話を手をつながれながら聞いている。
今まで隣にいた人が、好きな人ができて、その人の子供を授かった。
互いに愛し合い、共にこれから歩んでいく、薫の隣はもう……薫の愛した人がいる。僕はもう……彼女の隣にはいられない。
「はぁ〜い、みんな写るよ〜、並んで〜」
「ほらほら、薫一緒に写ろ!」
クラスの輪が整列し始める。薫も友達に手を引かれ友達の隣に並んでいった。僕の手を握っていた冬の季節で冷たくなった手、きめ細やかな白い手がするりと離れ遠のく。
僕は今までつながれた手を見つめる。そして、未だに未練が残った心がドクッと鼓動を鳴らした。
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