第七話 ベイビーベイビーエンドこれからもよろしく。
「それで?二人はどういう関係かな?」
オレたちが抱き合っていたら、いつの間にか、すぐそこにシルバーグレーの紳士が煙草を片手に立っていた。笑顔が恐い。
「お父さん……!」
お父さん!
琉依ちゃんの可愛い口から飛び出した単語にオレのハートも口から飛び出しそうだよ。お父さんの隣には戸惑い顔の女の人が立っている、二人ともいつから――否、どのあたりから視ていたの。
真っ赤になってる琉依ちゃんがオレの視界の端にしっかり映ってる。いつまでも抱き締めてるわけにいかないからそっと離したけど、密かに手は繋いだ。
「はじめまして、泉谷恭平といいます。琉依さんと、結婚したいです!」
言えば言うほど困惑顔の女の人が、琉依ちゃんに向かって言う。
「琉依……あなた、お付き合いしてるひとはいないって」
「それは、その。さっきまでの話で」
オロオロしている琉依ちゃんが可愛くて困る。
こんなときオレは何て言えばいいんだろう。必死に考えるオレに琉依ちゃんのお父さんは声をたてて笑った。
……笑われた?
「ああ、知ってるよ泉谷君。本当に君は愉快だな」
「知ってるって……どうして???」
琉依ちゃんが瞬きを繰り返す。琉依ちゃん以外に一体誰がお父さんにオレの話をするんだ?
「君なら多分。家の頭の固い母親も許すんじゃないかな。昔のことだけど身辺調査は済んでるはずだ」
「身辺調査?」
「お祖母様が!?」
きょとんと首を傾げるオレと、愕然と叫ぶ琉依ちゃんの温度差ったら。細かいことはよくわからないけれど、お父さんは反対ではない?
「君の人柄については米田から聞いているしね」
「……米田」
「あ……」
頭の中にドヤ顔を浮かべる米田が見えた。そんな顔してるとこは実際には見たことがないけど。
もしかしたら米田が言ってた個人的な情報って、琉依ちゃんじゃなくてお父さんからの情報だったってこと?
「さて。せっかくだから一緒に食事会の続きでもどうだい?」
「え、でも……はい。ありがとうございます」
オレが突然お邪魔をしちゃっていいんだろうかとか、乱入しといて今さら思った。琉依ちゃんがオレの袖を引いた。
「泉谷。私のお母さんなの」
遠慮がちに会釈をする女の人に、オレは一瞬言葉をなくした。
「え?お母さん?琉依ちゃんの?」
「うん……二十年ぶりの再会」
オレがぱぁっと笑顔になって心から祝福を贈ると二人とも嬉しそうに笑ってくれた。そんな素敵な日に立ち合うなんて光栄だよ。
今日は人生最良の日。ううん、これからも、たくさん作っていこう。ふたりで!
ベイビーベイビーエンド fin.
ベイビートーク 叶 遥斗 @kanaeharuto
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