第3話魔法少女

 中学を卒業した春休み。

 ある朝、目が覚めると、身体に妙な違和感があった。病気とかじゃなく、なんかこう、身体が自分のものじゃないような、変な感覚。

 制服に着替えて階段を降りる。

 パパはテーブルで新聞を読んでいる。ママは対面キッチンで朝ごはんの用意。

 いつもの朝の風景。

 テレビをつけるのはいつもわたしの役目。

 え~っと、リモコン、リモコン・・・・

 目でリモコンを探していると、目の前にリモコンが浮いていた。

 あったあった。

 私はリモコンを手にとってボタンを押す。ニュースが流れる。チャンネルを変えて占いのコーナーを見る。今日のラッキーカラーは・・・

 「はぁ?!」

 突然大声を出したので、二人が驚いた。

 「どうしたの、急に大きな声出して」

 「な、なんでもない」

 笑ってごまかした。

 

 あまりに突然だったのでびっくりしたけど、どうやら私には不思議な力が備わったらしい。思い描いた事が現実に起こった。

 部屋に忘れた携帯電話が、ドアを開けると浮いていた。

 部活の練習中に、転びそうになったら、身体が勝手に動いて倒れなかった。

 魔法なのか、超能力なのか。

 呪文とか言わなくて出来るから超能力っぽいけど、言葉の響きとしては、魔法のほうがいいかな。うん、魔法にしよう。


 私は突然、魔法少女になった。

 誰が、何のために、とか何の説明もなく、不思議な力が使えるようになった。しばらく様子を見たけど、誰も来ないし何も無い。

 私は自分でこの力の使い方を調べるしかなかった。


 ① 魔法は一日五回まで。それ以上は使えなかった。

 ② 呪文も杖もいらない。思い描くだけで実行できる。

 ③ 思い描いた事が出来るが、自分が持てる範囲の物しか動かせないし、人や動物を 殺すことは出来ない。

 ④ 空は飛べない。


 この四つを踏まえて日々を送った。

 学校の成績は上がった。魔法でテストの答えは全て分かった。

 好きになった彼とは、彼女がいようといまいと付き合うことができた。これも魔法。相手の気持ちを自分に向けさせたから。

 結婚相手は資産家の息子。

 全て上手くいった。


 最後の日。

 病院のベッドの上で、ある看護師に言われた。

 「いい人生でしたね。だけど、あなたはあの世のぶんまで運を使い果たしてしまいました。だから地獄で永遠に苦しみなさい」

 もう動くこことも、声を出すこともできない。


 ああ、そうなのか。

 一生分の運って、決まっているのか。

 私は運を使い過ぎたのか。


 どこかでだれかに笑われている気がした。 

 

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