ある少年と不可思議現象

アリス

第1話



「くそっ、どうしてこうなったんだよっ!」

他人から見たらキチガイじみた叫びだと思いつつも少年は走ることを止めない。

昼間っから全力疾走で少年ーーー

神田和馬は路地裏を走っていた。

事は数分前に遡る…

ーーーーーーー

「もうすぐ夏休みか、にしても

暑っついしアイス食いたい気分だな…」

学校の帰り途中、ぼやきながら歩いていた和馬の前に空き缶が転がっていた。

「っと、危ないな踏むところだったぞ

誰だよこんな所に捨てた奴」

といいながら空き缶を蹴っ飛ばす。

まぁ当たったとしても野良猫くらいだろうと思っていた

しかし空き缶が飛んでいった方向が悪かったようで見るからに不良に当たってしまったようだった。

不良に当たってしまったが運のツキ。

もう謝って逃げるしかないのである。

「あ、えーっと……すみませんでしたッ!」

と謝った次の瞬間に和馬は逃げ出していた。

しかしヤンキーはその態度が気に食わなかった

ようで切れ気味に

「ちょっと待ちやがれボケ!」

叫びながら和馬を追いかけた。

待てと言われて待つ馬鹿はいるわけないだろう。

和馬は全力で逃げた。

不良もどき一人くらいなら相手にできるが

本物のゴリゴリな不良になんて勝ち目がない以前に話にならないのだ。


そして冒頭に戻るのである。



しばらく走り路地裏を抜けた辺りでヤンキーが追いかけて来なくなったことに和馬は気づいた。

なんだろう、と不思議に思ったがヤンキーに追いかけられないに越したことはない、と無理矢理納得した。

「はぁ、やっと諦めてくれやがったんですか…」

と一息ついたのもつかの間、

1人の少女の声が聞こえてきたのである。

和馬の真後ろに少女がいた。

肩に掛かるくらいいの黒髪で

半袖のブラウスに白のサマーセーター、緑色のチェックのプリーツスカートを着ているどこにでもいるような女子高生…

というかそれは和馬の通っている学校の制服だった

「そんな訳ないでしょ、あの手のバカはこれくらいで諦めたりしないっつーの」

そう言う少女の体の周りにはビリビリと電気が走っている

普通ならその状況はおかしいと思うだろうがこの街では普通なのである。

なぜならここは超能力者を集めた街なのだから

「なんかおかしいと思ったらやっぱりお前がやったのか!」

「そうよ、で和馬は何してたの?」

「見ての通り不良に追いかけられてたって訳」

「能力者の街って言われても原始的なバカはやっぱりいなくならないのね」

「そりゃあそうだろ全員が全員能力を使いこなせるって訳じゃないんだから

俺だって使えない奴の一人だし」

そう、

能力者が集められた街といっても

能力の強度は様々で、

能力を自由自在につかいこなせる者から

使えている感覚はないが微妙に能力があるらしいというレベルの者までいるのだ。

能力を使える者は「超能力者」

能力をほぼ使えない者は「無能力者」

と呼ばれている。

そして、

不良に追いかけられて逃げていた少年は

「無能力者」で

それを追い払った少女は

「超能力者」なのである。

まぁ少年の方は少し特殊だったりするのだが…

「んー、まぁたしかにそうだけど、

和馬はイレギュラーでしょ!」

そう言いながら「超能力者」の少女は和馬に向かって電撃を放った。

が、和馬が手で電撃を払った瞬間にそれは消えてしまったように見えた。

が、しかし実際は手で触れたために消えたわけではないのだが…


「うわっ、やめろよ結衣!俺だって「無能力者」なんだから」

「ほんっとに珍しいわよソレ、私の能力も消しちゃうなんて」

ため息を付きつつ少女ーー

電気系統能力者エレクトロマスター上坂結衣はそう言った。

「能力と言っていいのか微妙な所なんだけどな、一応「無能力者」って扱いだし。

ま、助けてくれてさんきゅーな!」

「そんなのいいわよ、それより帰ろ?暗くなり始めたし」

「ん、そうだな」

そして2人は寮へと歩きだした。

全国各地から能力者が集められているため

この街に住んでいる人の一部は寮やマンション暮らしなのである。結衣と和馬もその内の1人なのだ。

ちなみに結衣と和馬はこの街に来る前からの親友でかれこれ10年前くらいからの付き合いである。

「そういえば結衣って夏休みに予定とかもうあんの?」

「いや、まだないよー」

「んじゃさどっか遊びに行かないか?」

「いいよ!

けどもう公園だしまた今度に決めない?」

そんなこんなで2人がいつも別れる公園まで来ていたのだ。

「まぁそうだな、そんじゃな!」

「うん、じゃあね!」


次の日の放課後である

「だぁー、つっかれたー」

結衣は机に突っ伏していた。

「おい、なにやってんだよ…」

「だってさー!机冷たくて気持ちいいんだもん」

結衣は机の冷たさが気に入ったらしく

しばらく突っ伏していたが、何を思ったのか急に立ち上がった。

「よし!ゲーセンいくわよ!」

「おいおい、急だなぁ…」

和馬は少し呆れ気味な声を出す

「なぁ、俺も一緒に行っていいか?」

「あ!じゃあ私も!」

と言った2人はクラスメイトの小鳥遊優哉と

柊香織である。

優哉はノリの良い性格でいつも場を盛り上げてくれる。

そして香織は少し天然でふわふわした感じの女子である。

この2人を含めた4人で良く遊びに行ったりしていたりするのだ。

「いいんじゃないか?みんなで行ったほうが楽しいし」

「そうね!それじゃ行きましょ?」

4人は学校を出て近所のゲームセンターへと向かった

「さて、何からやるか?」

「じゃあ格ゲーで勝負よん♪」

「まじかよ…」

「私はあんまりやったことないから見てるね!」

と各々感想を述べたところで対戦が始まる。

一回戦は和馬対結衣だ。

「ふっふっふ…ゲーセンに通いつめた成果を見るがいい…」

と和馬がふざけて言った。

「望むところよ!」

こうして対戦が始まったが結果は予想外だった。

あんなに余裕ぶっていた和馬が負けたのだ

というか結衣の手さばきがチートじみていたのである。

アレでは負けても仕方がない。と優哉は思っていた。

「は…?負けた…」

「大したことなかったわねー」

和馬はゲーセンに通いつめて格ゲーの練習をしていたのに勝てなかったので落ち込んでいる。

対して結衣は余裕の表情である。

「アイツどんだけやり込んでんだよ

スゲェ上手かったぞ…」

優哉はとても驚いているようだった

「よっし!次は優哉よ!」

そして2回戦、優哉対結衣の対戦が始まった。そして横ではまだ和馬が落ち込んでいた。

「そんなゲームで落ち込まなくても…」

という香織の呟きで追い討ちをかけられた和馬だった…

そしてやはり2回戦も結衣の圧勝だった。

さすがに優哉でも勝てなかったらしい

和馬も流石に立ち直ったようだみたいだ。

「そろそろ次のゲームに行かない?」

「ん、そうだな」

「UFOキャッチャーは?」

「いいね!やろっ!」

次はUFOキャッチャーに決まったようだった

「じゃあこれやりたい!」

そこで香織が指したのは黒猫のぬいぐるみだった。たしかに女子ウケしそうなぬいぐるみだ。

「わぁー!かわいい!」

結衣もコレが気に入ったようで二人とも見入っていた。

「それじゃあやるか!」

「そうだな」

男2人は財布の金が尽きるのを覚悟していた。

「もうちょい右!そう!そのへん!」

結衣のテンションがすごい上がっているようだ。

「あー…ダメだったかぁ」

「もう能力使っていいかしら?」

2人ともなかなか取れないらしく

ここまでかなりの額を使っていた

そして危なげなことを結衣が言い始めた

が、ゲーセンなどの店では基本的に能力の使用は禁止なのだ。

「おいおい、それは止めとけよ?

店員にバレたら大変な事になるからな」

「むー、わかってるわよ…」

「それじゃあ次は俺がやってみよ」

優哉がチャレンジするようだ。

「まぁ取れないだろうからダメ元だな」

と言いつつアームを動かす。

すると…

「あ、取れた」

まさかの取れてしまったようだ。

本人含めた全員が取れると思っていなかったようで驚いた顔をしていた。

「「え!?それ頂戴!」」

取れた瞬間女子2人が優哉に詰め寄った

流石に優哉も焦っているようで驚いた顔で後ずさりしている。少し面白い光景だ。

「わ、わかったから!

けどコレ一つしかないから!」

優哉の言葉で我に帰った二人は少し考えた結果じゃんけんで決めることにしたようだ。

「「最初はグー!ジャンケンポン!」」

「ま、負けた…」

「やったー!勝った!」

どうやら香織が勝ったようで、

かくしてぬいぐるみは香織の物となった

とても幸せそうな顔をしてぬいぐるみを抱き抱えている。

「まぁ、そう落ち込むなよ?」

和馬が結衣にフォローを入れる。

「そ、そうね…」

そこで優哉は時計を確認した

短針は7を指している。

ゲーセンに入ってからかなり時間が経っていたらしく外も日が沈み暗くなり始めていた。

「もうこんな時間か、そろそろ帰らないとな…」

「え、もうそんな時間なの?

じゃあ最後にあれやろうよ!」

そう言った香織が指さしたのはプリクラである

「ん、俺はいいけど…」

そう言った和馬の隣で優哉が逃げようとしていたが、結衣に捕まっていた。

立ち去ろうとしたところを結衣にみつかったらしい。

優哉の肩を掴んでる結衣は満面の笑みである。

「みんなで撮りましょうよ!」

「俺は嫌だ!あんなもん恥ずかしいだけじゃねーか!」

と駄々をこねていたが優哉は女子2人に囲まれていた。

2人は仁王立ちをし、優哉に詰寄る。

そこで俺は優哉の方にポン、と手を置いた

「もう諦めろ優哉…」

「まじかよ…」

かくしてプリクラを撮ることになった。

「ちょっと和馬!もう少しそっちよりなさいよ!」

「はいはい、

あとそんなに落ち込むなよ?優哉?」

「だってプリクラだぞ!恥ずかしいだけじゃねーか!」

「みんなもう撮るよー!

はいはい、優哉も笑って笑ってー!」

パシャッという音共に写真を撮られた。

デコレーションは女子に任せ和馬と優哉は

その後ろで待っていたが、優哉はかなり凹んでいた。時々「なんでこうなった…」、「マジで恥ずかしい…」とか聞こえてくる。、

しばらくするとデコレーションを終えたプリクラを持って女子2人が歩いてきた。

「終わったよー!」

そして香織はプリクラをハサミで切った。

最近のプリクラにはハサミもついているらしい

和馬は基本格ゲーかメダルゲームなどしかやらないのでそんな事は知らなかった。

「それじゃこれが和馬で、こっちが優哉の分、これが結衣の分ね!」

と言いながらみんなにプリクラを配っていった。

「ねぇねぇ、このプリクラ携帯に貼っておかない?この4人で撮ったの初めてだし!」

そう結衣が言った。

「別にいいぞ」

「俺も」

「私もいいよー!」

流石にもう優哉も諦めたらしくあっさりと承諾した。

そうして4人の携帯の裏には撮ったプリクラが貼られる。

なんだかんだ言ってプリクラのみんなは笑顔だった。

「それじゃそろそろ帰ろっか?」

「そうだな」

そして4人は他愛もない話をして帰っていた、夏祭りに行こうとか、海にいこうとか、そんなどこにでもありそうな話を…

「それじゃ俺らこっちだからじゃあな!」

「じゃあねー!」

と優哉と香織が帰っていき和馬と結衣の2人になった。

「夏休みも4人で色んなとこ行けるといいな」

「そうねー」

なんていう話をしていたら《ルビを入力…》2人が別れる公園まで来ていたらしい。

「それじゃあね!」

「ん、また明日な!」

2人が別れた時、月が上り始めていた…

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