第28話9か月(蒼ざめてマタニティブルー)-1

 近頃、何だかおかしな気分になる事が多くなってきていた。物凄くハイな気分になったかと思うと、家から一歩も出たくなくなったりと、自分でも非常に情緒不安定だと思う。

原因の一つは、俺が担任している相川かも知れない。以前あれだけ俺に干渉していた相川が、今度は完全に無視しだしたからだ。授業中も一切目を合わせない。それどころか俺の授業に参加していない。

正確には教室には居るのだが、話は聞いていないし、他の教科の問題集をしたりしている。

しかも他の授業中にはそんな事はしていないという。

当然この調子では内申書にも影響してくるので、担任としては心配になってくるというものだ。

「相川!ちょっと進路指導室に……」

やっとの思いで捕まえたが、手を振り払われた。

「離してよ!」

「相川!このままじゃ大学に行けないんだぞ!受験すら出来なくなっちゃうんだぞ?」

「ほっといてよ!もう!」

「ほっとける訳ないだろ!」

「もうどうなってもイイの!行きたい大学なんてないんだから!」

「どういう事だ?」

 完全に自暴自棄になっているようだった。

「別に……。将来何になりたいとか何にもないの!だからどの大学に行っても一緒なの!っていうか、大学なんて行っても行かなくても一緒なの!!」

「相川……」

「だからもうこの話はおしまい!ついて来ないで!」

「相川!」

相川は俺から逃げるように走り去って行った。万事この調子だから堪ったものじゃない。

おまけに相川の母親からも頻繁に苦情の電話が掛かっていて、この後も学校にやって来るのだ。

「あぁ、気が重いなぁ……」

この件だけでも鬱々としてしまうのだが、近頃何事に対してもネガティブになっているのだ。

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